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《ルポ》千葉っ子から見た 台風15号が残した課題


台風15号が過ぎ去り早2週間。停電も5千戸を切ったものの、依然不自由な生活を強いられている方は多い。台風15号が残した爪痕は、あまりにも残酷だと感じる。

私はいま広島に住んでいるが、もともと千葉・船橋市生まれ育ちの生粋の千葉っ子。母は銚子市出身、父はいすみ市大原(出生地は神奈川・川崎)出身と、身内・親戚も千葉出身とまさに、オール千葉と言ってもいいくらい、千葉とは縁がすごく深い。

だからこそ、今回の台風の被害は、後ろ頭をおもいっきり叩かれるくらいの衝撃を受けた。同時に20数年間、千葉で育った人間だからこそ、感じたこと・言いたいことも多々ある。ようやく心の整理ができたので、ここに思いいのまま綴っていきたい。

●現場に行くと目を疑う光景が

現地の様子が気になったのと、物資を届けて被災された方の生活支援の一助をしたいことで、三連休の中日の15日(日)に、南房総市白浜地区と館山市布良(めら)地区を取材。

南房総と館山に共通して言えることは、屋根がごっそり無くなっている家が非常に多いこと。辺りを見渡しても、まったく損傷の受けていない家を探すのが難しいくらい、家屋に何かしらの被害を受けていたのだ。

屋根だけではない。「本当に暴風で壊れたのか?」と思うほど、外壁がぽっかり穴が開いている家や倉庫も多かった。

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この被害の様子をあえて例えるなら、東日本大震災での津波に襲われた現場に匹敵するぐらいの惨状と言える。それくらい、テレビ・新聞で見る被災現場よりもひどかった。

●共助の限界

今回取材した南房総白浜・館山布良地区は、高齢化率が4割前後と、千葉県内でも特に過疎高齢化が著しく進んでいる地区。つまり、お年寄りがお年寄りを助け支えなくてはならない現状なのだ。

防災減災の3助に「自助」(自ら助ける・守る)「共助」(ともに助け合う)「公助」(行政が助ける)がある。この3つすべてが成り立つことで災害発生時に、被害を最小限に抑えることができる。

ところが、今回の台風の千葉県・各市町村の対応を見ても、動くのが遅すぎる点があるのは否めない。21日(土)には、こんな記事が出た。

緊急時のために備蓄されていた発電機が半数以上、活用されていませんでした。千葉県は災害に備えて、市原市など県内10カ所の防災倉庫に非常用の発電機468台を備蓄しています。そのうち約200台は停電した信号機を動かすため、警察に貸し出されましたが、残りの約260台は使われていないということです。県の災害対策本部は市町村から要請があれば貸し出すことにしていますが、要請は千葉県鋸南町など2つにとどまっています。県は「市町村が用意している発電機で足りていた可能性もある」「各自治体にはこの発電機を必要に応じて活用してもらいたい」とコメントしています。

最大で64万戸停電したにも関わらず、発電機が防災倉庫に眠っているのは、異常事態とも言ってもいいのではないか。

確かに千葉県は、各市町村から貸し出しの要請がないと、各市町村に貸し出せないのは当然のことだし、その点に関しては異論はない。

ただ、県が発電機を備蓄していれば、貸し出し方法や申請先を各市町村に伝達しているはず。おそらく、そういった手続きの仕方が、各市町村にきちんと伝わっていなかった可能性が高い。もしそうであれば、明らかな連携不足と言われても反論できないだろう。

防災士の資格を持っている私から、あえてきつい言い方をすると、どんなに有能な防災器具を備蓄しても、その使い方・伝達方法を知らなければ、備えていないと同じだ。

そういった公助の面での連携不足もあり、地元住民らでこの難局を乗り切るしかなかった。この現状は、お年寄りの方々にとっては、あまりにもつらすぎる。共助だけで乗り切るには、完全に限界だったのだ。それを今回の取材や地元の方々からの話を聞いて、真っ先に感じたことである。

●東京電力パワーグリッドの対応の問題点

東京電力パワーグリッド(以下、東電)の停電の復旧情報についても、疑問を多く感じた。

君津市で、鉄塔が2本倒壊したのは、ニュースでご存知の方も多いはず。そんな過酷な状況にも関わらず、東電は当初、11日中の全面復旧を目指していた。さすがに鉄塔が根元から倒壊したら、復旧や電気の供給には数週間~数か月かかるのは、素人でも想像つくはず。

住民の方も、その情報を信じて、11日ごろまで停電には耐えようと思って生活していたのではと感じる。しかし現実は、どんどんと復旧目安が後ろにずれ込み、最終的は27日ごろになる結果となり、あまりにもお粗末すぎる。

最初から全面復旧までに数週間かかると言っていれば、住民の対応は変わっていたかもしれない。今回被害の大きい内房地区は、東京湾アクアラインを使えば、東京都心まで1時間半ほどで着ける距離だ。つまり、隣県に住んでいる親戚や友人の家に泊まってやり過ごしていたかもしれない。

そうした東電の甘すぎる判断が、住民をより不安のどん底に突き落としたと言っていいかもしれない。いまは東電も不眠不休に近い状態で復旧作業にあたっているため、これ以上は批判もしたくないしので、ぜひ体調に気を付けながら頑張っていただきたい。

●台風15号を受けて感じたこと

今回の台風15号は、千葉だけではなく、日本全体にとっても大きな課題を残した。いかに日本人が、電気に依存している生活をしていることを突き付けられた。

裏を返せば、電気を使わない生活の術を忘れかけているということかもしれない。いまはオール電化の住宅も増えているが、今一度立ち止まって、停電したときのことを考える必要があるかもしれない。

地震や津波とは違い、大雨や台風は毎年日本に襲来し、何かしらの被害を受けている。今回のような台風が、数年後にまた来るかもしれない。二の舞にならないためにも、各家庭で非常用バッテリーやカセットコンロ、首からぶら下げる扇風機など、停電になっても乗り切るアイテムを備える必要があるかと。

とはいえ、被害を受けた地域は、もとの生活に戻れるように願うばかりだし、私も千葉の人間である以上、現地に訪れて支援活動して復興に携わっていきたい次第。被災された地域にたくさんの花が咲くように、これからも思いを寄せます。


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