RXを使ったノイズ処理
ノイズ処理をする際に使うソフトウェアとしては、
iZotopeのRXのユーザーさんは、とても多いと思いますが、
あまり使いこなせていない方も比較的多いように思います。
今回は、RX10を使った音楽制作でのノイズ処理の中でも特に多い
リップノイズや短いインパルス等、比較的ありがちなノイズ処理を中心とした
解説をしていきます。
記事記載現在で、RX11がリリースされていますが、当方所有しているのが、
RX10ですので、RX10を元に話をしていることをご了承ください。
音楽作品で、主にノイズ処理が1番多いのは、リップノイズ系かと思いますが、
他にも楽器ノイズなど、ライブ作品なら、いろんなノイズが入ってますよね。
その中でも、リップノイズやちょっとした雑音(パチッ!カチッ!プチッ!のような短いクリック音等)など、これらのノイズを皆さんはRXの何を使って除去していますでしょうか?
De-click、Mouth De-click、Spectral RepairのAttenuate 辺りでしょうかね。
私は、Spectral Repairの中の、PatternとReplaceの使用頻度が高いです。
先にお伝えしますが、ここまでで、「同じくPatternやReplaceを使ってます!」
という方は、この先を読まなくて大丈夫です。
実際のところ、これらのノイズはおおよそ、「De-click」「Spectral Repair:Attenuate」「Mouth De-click」で除去出来ますが、
実は、「Spectral Repair」の中でも、「Replace」「Pattern」は結構使い勝手が良く、結果も良いことが多いです。
では、まず「Spectral Repair」のそれぞれを簡単に解説します。
マニュアルを参照しつつ、必要な箇所には私からの若干の解説を入れました。
Spectral Repair
・Attenuate(減衰)
文字通り「減衰」します。減衰なので、バックグラウンドと間で隙間を生じさせ
ないように溶け込むように除去を行います。
・Replace(置換)
音の欠損など、音色の破損が大きい場合に有効です。
周囲にある音声成分の類似箇所を探し出し、それと完全に置き換えることで
補間します。
・Pattern(パターン)
周囲にある音声成分で最も類似している箇所を探し出し、音声の破損部分と
置き換えて補間します。
注:ReplaceもPatternもどちらも破損の大きなオーディオに有効ということに
なっていますが、周辺の分析能力が優れているので、リップノイズを周辺の
バックグラウンドからの分析により、置き換えて無かったことにするのが
得意です。
・Partial and Noise(パーシャル+ノイズ)
Replace よりも高度なバージョンです。
ハーモニクス感度パラメーターによってハーモニクスから解析、合成処理に
より、それらをリンクすることで高度な補間処理を行います。
ただし、高度だからといって、必ずしも良い結果にはならないです。
分析能力が高いので必要のない箇所も巻き込む傾向はあります。
また、分析に少し時間がかかるので、効率が悪いです。
ちょっと厳しいな、と思う場合に試してみると良いかな、といった感じですね。
Spectral Repair内の主なパラメーターについて、
Bands ・・・補間処理に使われる周波数バンドの数を選択します。
バンド数を多くすると、周波数解像度は良くなりますが、より広い
周辺エリアを分析して反映するので、広いエリアから分析した方が
良さそうな場合にはバンド数を上げた方が良いです。
反対にバンド数を少なくすると分析エリアも狭くなります。
瞬間的で前後にあまり分析して欲しくないような音がある場合には、
バンド数を小さくした方が良いです。
Strength・・・減衰処理の強さの設定です。
弱くするとバックグラウンドと馴染みやすい傾向に、
強くするとより綺麗に除去をしてくれる傾向になります。
慣れてきたら、なんとなく分かってきます。
たまにリップノイズを完全に除去するよりも少し残しておいた方が
自然に聞こえる場合もありますので、その時には弱めにして馴染ませる
方向で使います。
Surround Region Length・・・
補間処理に使われる周辺エリアの範囲を設定します。
前後に一緒に分析して欲しくないエリアがある場合は短めにします。
より広い範囲での分析が必要と思われる場合には広くします。
Before / After・・・周辺エリアを、主に前の方のエリアか後のエリアかに比重を
大きくします。
音を発する直前(又は直後)の微妙なタイミングのノイズの場合は
ノイズの前の方に比重を置くと良い結果になりやすいです。
Direction of interpolation(補間の方向)・・・
修復処理に使われる信号のエリアと選択範囲の位置関係を設定します。
• Horizontal(水平) 選択範囲の左右の信号が補間に使用されます。
• Vertical(垂直) 選択範囲の上下の信号が補間に使用されます。
• 2D(二次元方向) 選択範囲の上下左右の信号が補間に使用されます。
私は、2Dで使うことが多いです。
Pattern seatch range(パターン検出幅) ・・・
補間処理を行うのに検索される音声セグメントの長さを設定します。
例えば5秒に設定されている場合、指定範囲の+/-5秒間の範囲で検索が
行われます。
以上が「Spectral Repair」についての解説ですが、
それ以外のリップノイズ系の除去によく使われるものとして、
Mouth DeclickとDe-clickも簡単に説明します。
Mouth De-click
主にリップノイズを除去します。リップノイズ以外のクリック的な瞬間的な
ノイズにも対応しています、、、ということになっていますが、
私は、リップノイズの除去には、必ずしも有効とは言えないように思います。
ですので、あまり使いません。(RX10までの情報ですので、RX11からは
もしかしたら向上しているかもしれません。)
何が良くないかというと、リップノイズでもバックグラウンドとの関係で
少し複雑な場合には良い結果にならないことが、割と多いように思うのです
よね。
Mouth De-clickのパラメーター
Sensitivity(感度) ・・・信号内のリップノイズ、クリックノイズを検知する
感度を調整します。感度を高く設定すると破裂音に影響を与え、オリジナル
の信号が低減または品質を損なう可能性があります。
Frequency skew(周波数ずらし)・・・
除去の対象となる周波数の高低を補正します。
負の値は一般的なクリック・ノイズに最適、ゼロ以上に設定すれば中音域の
リップノイズに有効、、、、とのことですが、ゼロから試すのが良いです。
Click widening(クリック幅)・・・
検知されたクリック音の修正領域を広げて、ディケイの長いノイズを除去
します。
De-click
短いインパルスのノイズ除去が可能です。
Algorithmは、ノイズの種類に応じて、適正な処理時の補間品質、構成を調節します、、、とのことで、
・Single-band・・・ 処理速度が速いため非常に短いクリックノイズに最適です。
・Multi-band(Periodic clicks)(マルチバンド - 連続クリック) ・・・
より広い帯域で繰 り返し発生するクリックノイズや、 低域/高域がより
集まった一般的なクリック・ノイズを除去します。
・Multi-band(Random clicks)(マルチバンド - ランダムクリック)・・・
より幅広くアナログ・レコードのクリッ ク・ノイズやサンプ音に対し
マルチ・バンド処理を行います。また、金管楽器やボーカルのような
楽器で周期的なオー ディオ特性を保存する保護アルゴリズムを使用
します。
・Low latency(低レイテンシー)・・・
マウス・ノイズやその他のアルゴリズムでは除去できないノイズに有効
です。 このモードはレイテンシーが低いためRXのクリック除去をリアル
タイムで行うのに最適です。
上記のセッティングは、デフォルトではSingle-bandになっています。Single-bandでうまくいかない場合には、上記を参考に、ノイズの種類から推測して
設定を変えてみると良いですね。
以上が各モジュールとパラメータの説明です。
私は、クリック系のノイズに関わらず、ほとんどのノイズをSpectral RepairのPatternやReplaceをメインに使い、De-click、Attenuateなども併用して使い分けています。Mouth De-clickはあまり使わないですね。
ちなみに、これらのModuleを使うにあたって、結果をPreviewやCompareで
確認をするということが出来ますが、UndoやRX画面の右下にあるHistoryで戻ることが出来るので、時短のためにもRenderで結果を確認してダメならやり直す、というのが作業としては早いです。
それともう1つ、De-rustleというモジュールがあるのですが、これは、衣擦れの音を除去するためのものですが、楽器などにも使えることがありました。
さて、ここまできて、この先は有料記事となります。
権利関係もあり、音は出せないですが、実際に行った処理について、
ピクチャーを交えて具体的に解説していきます。
また、ノイズ除去のためにモジュール、パラメーターの設定のポイント、
コツなども解説していきます。
リップノイズだけでなく、生楽器系のノイズなども少し扱っています。
De-rustleについてもどういった場面で使ったのかを教えますね。
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