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結局、私は……

 私の家には体重計がありません。

 体重を測るのは、半年に一回程度の帰省時のみ。体脂肪率やら基礎代謝やら体内年齢やらまで出してくれる高性能体重計で測定します。

 それでも、これまではある程度の体型と体重をずっとキープしていました。半年前と変わらない結果に、ヨシヨシ、と。身体はわかっているしバランスを取るんだなと感じていました。

 そりゃ、高校時代に比べると緩やかに体重も体脂肪率も増えています。だって、当時は週3で体育の授業があったし、週1〜2でクラシックバレエのレッスンも受けていましたから。年齢も上がっているわけで、数キロの増加は仕方ないでしょう。でもそれは急激に増えたのではなく、緩やかに緩やかに数百グラムずつ増加していき、一定のラインでストップしたので、許容範囲だと受け止めていたのです。

 しかし母は、涼しい顔して食べたいものを食べたいだけ食べている私に、10年前からこう言い続けてきました。

「うちの家系は太るんだから! これまで食べても太らなかったのは、バレエをやってて筋力があったからだからね! 気をつけないと、太るからね!」

 数年前からは「30越えたら一気にくるんだから! 平気なのは20代のうちだけ!」というセリフがプラスされるように。けれど私は「まあ自分はまだ大丈夫」と思ってきたのです。


 それが、それが……! 先日の帰省でギョッとしました。

 3月末に仕事の都合で帰ったときの体重から、たった1カ月で1キロ強も増えている……!? しかも、体脂肪率が「肥満」ラインの一歩手前、体内年齢は「28歳」の表示。

 こんなことは、今までなかった。体脂肪率は「痩せ」寄りの「普通」だったし、体内年齢24歳、食べ過ぎた日でも26歳でした。

 なんてこったい、この1カ月で一体全体何があったんだい自分? ……いや、何もありませんでした。ちょっと外食や飲みの機会が冬に比べたら増えたくらいです。

 そういえば3月に実家に二泊したときも、年末帰省時に比べたら少しだけ増えてたな。その時は少しだったから気にしなかったけど、ということはなんだ、やっぱり年齢か。本当に筋力が減って、基礎代謝が落ちているのだろうか。

 しかし望みはまだあります。「内臓脂肪」は「少ない」の表示なのです。つまり、痩せるなら今だ。絞るなら今だ。今ならまだ間に合う。この脂肪たちが内臓脂肪になる前に、余分なエネルギーを摂りすぎず、眠っている筋を刺激するのだ……!


 友人の中には体型が昔から変わらなかったり綺麗に痩せたりしている人が何人かいます。特にこの帰省中に会った高校の友人は、昨年結婚式を挙げていて、その時のドレス姿が美しかった。背中が、綺麗な筋力をつけてしっかり絞ってきたことを物語っていました。聞くと、結婚式のドレスは一度決めたら変えられないから体型維持が大変なのだそうで、彼女も「普段はダイエットとか意識しないけど、あの時だけはちょっと意識してた」と言います。

 曰く「朝は食べる。昼は炭水化物少なめでタンパク質を意識。夜ご飯は食べるけれど、18時以降に炭水化物は摂らない」「少しスクワットをしたりした」だそう。

 少しのスクワットがどのくらいハードなのか分からないけれど、夜の炭水化物を減らすことはすぐにできそうです。「よし、東京戻ったら、食事のバランスを見直して夜は炭水化物を減らすぞ!」と心に決めました。


 そう決心して戻ってきてから、4日目の今日。仕事終わりの20時。ああ、おなかがすいた、おなかがすいた。少し遅いけれど、何も食べないのは胃が荒れそうだし、何かタンパク質を摂ろうと冷蔵庫を開けてみると……。

 何もない。

 連休前に食材を使い切り、帰ってきてからは人と会ったりで外に出ていたので、冷蔵庫が空っぽだったのです。あるのは、冷凍庫にミックスベジタブルと小口切りネギだけ。

 外は雨、今から買い物に行くのは億劫だ。何かないのか、何か食材はないのか、我が家には……!

 そうしてあちらこちらを開けていて出てきたのが、パスタでした。

 一瞬の逡巡。炭水化物、ダメ絶対。でもパスタは炭水化物。むしろ炭水化物の塊。どうする? どーすんの、オレ!?

 ……。
 ……。
 ……。

 ……負けました。開けました。パスタしっかり100グラム茹でました。

 いや、いいのだ。昔何かのテレビ番組で、叶姉妹だったかどなたか、とっても綺麗で長身でスタイルのいいお姉さんが、深夜2時でも食べたくなったらステーキ肉を焼くって話してたんだから。その時の話が、とっても説得力あったんだから。

「ダイエットを何のためにするかって、美しくなるためにするんでしょ? でも、そのために無理に食べたいものを我慢したら、ストレスになるじゃない。ストレスは、美貌の一番の敵。綺麗になるために我慢してストレスを溜めるなんて本末転倒なのだから、食べたくなったら食べていいのよ。ただし、本当に身体が求めているものを、適切な量だけ食べるの。食べ過ぎや、快楽のための飽食とは分けて考えましょう」

 今、私は食べたいのです。食べたいのです。今食べなきゃストレスなのです。本当に食べたいのがパスタなのかは分からないけれど、いいのです。我慢してストレスになるより、パスタを食べればいいじゃない。

 かくして、罪悪感もなくパスタをおいしくモリモリ食べましたとさ。

 さようなら、私のダイエット。

 結局、私はただの食いしん坊なのです。

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