飴玉と死の予感
飴玉を、飲み込んだ。
飲み込んだというより、ホールインワンというほうが近い。
直径3センチほどはあるべっこう飴。半球体で、梅干しが入っている。まだなめはじめたばかり。ほとんど、袋から出した途端のサイズのままだった。
寝っ転がりながら、梅の部分をなめようと思って舌で転がそうとしたら、スポンと喉の奥まで抜けてしまったのだ。そのまま、どこにも当たることもつっかえることもなく、自分の意思ではコントロールできない喉の奥に吸い込まれていく。
はっ……やばい、しんだ……
瞬間的に、そう思った。頭の中にいろいろ思い浮かぶ。
死因 誤飲による窒息死
29歳女性 会社員
自宅で横になりなめていた飴を喉に詰まらせ……
え、やだ。正月に餅を喉に詰まらせてしまうお年寄りになるより、嫌だ。
あぁ、そしてもしそうなったら、いろいろ整理しにきた母が、溜まった洗濯物を見るのだ。
「まったくあの子は、こんなだらしなく育てた覚えはない!」
寝っ転がっての飴玉も、不十分な掃除も、積まれた本も、あ、台所も洗ってないじゃないか……!
……まだ、死ねない!!!
そう思ったとき、つるんと玉が胃にぶつかったのを感じた。息は……できている。生きてる!
不思議な感覚だ。スマートボールが、どのピンにも当たらずに、スポンと下までたどりついてしまったときみたいな、肩透かしを食らった感じ。違和感しかない。
でも、生きててよかった……。
改めて考えると「死ねない」と思った理由がしょうもなさすぎて、笑えてくる。まあ、そんなもんなんだろうな。