幽霊を見た夜に
10歳の頃、幽霊らしきものを見た。
晩御飯前に眠ってしまったらしい。
台所から母が洗い物をしている音がして、暗い部屋で目を覚ました。
今はあまり見かけないが、ベランダの窓の上部に換気用の小窓があった。
その小窓の辺りに緑色した若い男の顔がぼんやりと浮かび、無の表情で私を見下げいていた。
横になっている私と完全に目があった。
ギョッとして台所にいる母の元へ急いで駆け寄る。
一瞬父のイタズラかもと思ったが、父は隣の部屋でいつものように楽な体勢でスーパーファミコンを楽しんでいた。
その後どのように過ごしたかは曖昧だが、ゲームばかりして怠けグセがある父に対し、共働きの母も嫌気がさしていたのだろう。
日頃の鬱憤が爆発した。
言い合いの末、母はササッと荷物をまとめ、私を連れて外へ。
エントランスを出て車に乗りかけたところに父が追いつき、助手席にいた私を抱えて部屋へと連れ戻した。母も渋々上へ。
「○○(私)の靴かたっぽ脱げたやんけ、車に取りに行ってこいよ」
「出たら鍵閉めるつもりやろ!」
子供のような口喧嘩のあとしばらくして、結局母と私は部屋を出て近所の黒団(黒い団地)に住む父方の祖父母の家へ。
私が小さい時からしょっちゅう喧嘩していたが、「仲直りして」の一言も言えぬままほどなくして両親は別れてしまった。
母は数ヶ月後、私もよく知る職場の男性と再婚した。その人と一緒になりたいという気持ちもずっと抱えていたのだろう。
両親が喧嘩した夜に私を見下げていた緑色の顔の男はなんであの夜に現れたんやろ。
あとで大変な事が起こるで~と伝えに来てくれたのかもしれん…なんて自分勝手な解釈で、なんとかええ話にしようとしている駄目な自分がいる。