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インドの神々に関して相関図を作ってみました

日本には「やおよろずの神」がいるとよく言われます。「やおよろず」とは漢字で書くと「八百万」という数になります。実際に800万の神が確認されたということではなく、「極めて沢山の」という意味で使われてきたもののようです。

インドにもじつに沢山の神様がいます。インドのネットを検索すると33 Crore of Gods (3億3千万の神々)という記載も多くでてきますが、これは誤解で、本当は33種類の神様(33 Koti Gods)というのが古文書の記録らしいとの投稿も散見できます。しかし、1種類の神様が数多くの化身(アヴァター)を持っていたり、地域によって名前が異なったりするので、本当の数はすごい数なんでしょうね。神様の話なので、エビデンスを持って数を検証することはなかなか難しいことでしょう。

私はインドの神様の専門家ではないので、詳しいことはわからないのですが、インドでは沢山の神様がいるという理解だけでは、何かもやもやしてよくわからないので、どんな神様がいて、お互いにどういう関係があるのかを体系的に把握したいと思い、自分で相関図を作ってみました。

インドの神様の相関図

数年前、池袋の博物館でインドの神様の相関図が展示されているを見たことがありました。また、その展示で、ヴィシュヌの10の化身の絵が展示してあり、仏陀もその化身の一人にしかすぎないということがわかり、衝撃を受けたことがありました。

しかし、それらはインドの神々の一部を記載したもので、全体像をシステマチックに表現したものとはいえないと感じたのです。ネットでいろいろと探してみました。サンスクリット語やヒンディー語はわからないので、英語で検索してみました。インドの神様に関して、列挙して説明したものは多くありました。が、いろんな神様がいるということしかわからず、全体像を把握したいという自分の思いを満足させることはできませんでした。

こうなったら自分で相関図を作るしかないと思いました。しかし、最初の難関は神様のビジュアルでした。インドの神様は、絵画や彫像として数多くビジュアル化されているのですが、著作権の問題があります。著作権には比較的寛容なインドといえど、ネットから適当に拾ってきた絵を使うことはさすがに躊躇しました。

もう一つ、インドの神様の絵は、インド人には自然に受け入れられるのでしょうが、現代日本人からするとちょっとおどろおどろしいというか、すんなりと受け入れ難いものが多いのも問題でした。手足が沢山あったり、顔が象だったりという表現は、それ自体違和感があるのですが、表情などは好き勝手に表現させていただきました。

青い顔や肌の神様は、映画の『アバター』のおかげで、あまり違和感がありませんでした。アバターという考え方も、青い肌の表現も、じつにインド的だったんですね。

いろんな画像を見ながら、サインペンと色鉛筆で、神様一人一人の絵を描いて、写真を撮影し、その画像をパワーポイントに貼り付けて相関図を作ってみました。

名前の表記方法は、いろいろとあるのですが、自分の好みのパターンで記載させていただきました。出来上がったのがこちらです。

インドの神々の相関図

ここに入っているのはいわばオールスターで選抜された神様たちで、ここに記載できなかった神様は数多くいます。漏れてしまった神様たちには申し訳ないと思っていますが、悪しからず。一般的な有名どころはだいたい入っているのではと思います。全体のバランスを見て、作品として美しくなるように配列してみました。

神様の中心的存在の三大神

まずは、三大神です。Trimurti(トリムルティ)と言いますが、サンスクリット語で「3つの形」を意味しています。創造の神のブラフマー(4つの顔を持つ)、維持の神のヴィシュヌ、そして破壊の神のシヴァの3体の神様が三大神です。漢字では、ブラフマーは「梵天」(ぼんてん)、ヴィシュヌは「毘紐天」(びちゅうてん)、シヴァは「大黒天」(だいこくてん)と表記されています。3人の神様は、それぞれの役割を持って宇宙を運営しているわけです。

インドの神様—三大神Trimurti

宇宙を一つの会社に例えれば、CEO, CFO, COOあるいは、社長、専務、常務の3人が中心に経営を行なっている感じですね。3人の間に上下の序列はないとは思いますが、宇宙を作ったのはブラフマーなので、この人が創業者社長みたいな感じでしょうか。

10の化身(アヴァター)を持つヴィシュヌ

インドの神様はいくつもの化身(アヴァターあるいはアヴァターラ)を持っているケースが多いですが、ヴィシュヌの場合は10の化身を持っていると言われています(さらに多くの化身があるとも言われています)。

ヴィシュヌの10の化身

映画の「アバター」などで、アバターという概念は世界的に理解されるようになりましたが、これがさらに身近に感じられるようになったのは、SNSのアバターの登場からでしょう。自分の写真ではなく、イラストや別の物体で自分のアイコンを作る。そして、本来の自分とは一線を画して、匿名性も得ながら、好き勝手にSNS上で発言することが可能になりました。

ヴィシュヌの化身は、彼の「裏アカ」あるいは「別アカ」と言ってもいいのかもしれません。1番から6番までは、魚やら亀やらであまり神様としてはメジャーな感じではないのですが、7番のラーマ、8番のクリシュナあたりが人気が高いキャラクターになります。野球で言えば、3番、4番バッターの打順でしょう。

7番ラーマは『ラーマヤナ』に登場するヒーローです。映画『RRR』に登場する「ラーマ」はこの神様のイメージにもダブらせています。さらに恋人の名前が「シータ」というのもまさにラーマヤナです。

8番クリシュナも多芸多才の美男子で、マハーバーラタの中にも登場する人気キャラです。

9番目に登場するのがブッダです。仏教の始祖ですが、ヴィシュヌの化身でもあったのですね。ヒンドゥー教からみると、仏教はヒンドゥー教の一流派と見られているのかとも思えるのですが、結局、世界は一つなのかもしれませんね。

シヴァとその家族

こちらの図はシヴァ神とその家族を抜き出してみたものです。

シヴァ神とその家族

シヴァは三大神の一人ですが、貞淑な妻のパールヴァティーがいます。絶世の美女で、美と愛の神となっています。しかし、問題はその化身として、ドゥルガーやカーリーがいて、この二神はパールヴァティーの裏の顔と見てもよいかもしれません。ドゥルガーは戦と勝利の女神なので、かなり戦闘的です。殺戮、破壊の女神のカーリーはさらに過激になります。カーリーはどくろや生首をぶら下げたり、シヴァ神を足で痛めつけていたりするので、今でいえば病的なDV妻です。シヴァはDVホットラインに急いで電話する必要があります。上の図では3つの神様に分かれていますが、ドゥルガーやカーリーは、貞淑なパールヴァティーの裏アカで、過激発言ゆえにフォロワーを拡大しているインフルエンサーみたいですね(そして夫はそれを全く知らない)。

シヴァとパールヴァティーの間には子供がいます。兄は象の頭をしたガネーシャ。日本では歓喜天という名前で、豊穣、知識、商業の神様となっていてインドでは非常に人気の高い神様です。弟はスカンダ(またの名をムルガン、あるいはカルティケヤ)、軍神です。日本では「韋駄天」という名前で知られています。

この家庭のメンバーを見ていると、シヴァが「破壊」担当でもあるし、奥さんの裏の顔がかなり過激なので、どうみても平和な家庭のようには見えませんね。そんな中で、ガネーシャ君が愛すべきキャラとして人気を博している感じですね。

神々の奥様会

こちらの図は、神様の奥様たちだけを抜き出してまとめたものです。

神々の奥様会

ブラフマーの奥様のサラスヴァーティ様。この奥様は日本では弁財天として七福神に入っています。頭もよくて、教養があり、音楽の才能もあるという神様です。ヴィシュヌの奥様のラクシュミー様。この奥様は、日本では吉祥天として知られていて、美、富、豊穣、幸運の神様となっています。シヴァの奥様のパールヴァティ様。この奥様の裏キャラであるドゥルガーとカーリーの存在が奥様会の中で受け入れられるのか、あるいは面白キャラとして人気者になってしまうのか何ともいえませんね。

ラーマの奥様のシータですが、他の奥様たちが三大神という誰もが認める地位の神様の奥様であるのに対して、ヴィシュヌの化身の一人のラーマの奥さんなので、地位的には他のメンバーからは下に見られ、いびられたりするのかもしれません。とくにラクシュミーから見ると、自分の夫の化身の妻なので、ラクシュミーがどれだけの包容力を持っているかにかかっていますね。少し心配です。まあ、こんな奥様会は存在しないでしょうが。

以上、勝手な解釈で相関図を作ってみましたが、いろいろとご依存のある方もおられるかもしれませんが、なにか事実や解釈に過ちがあればどうぞご指摘ください。

この相関図を自分で作ってみて、インドの神々の世界が何となくわかった感じがします。みなさんにもご参考になれば幸いです。


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