アメリカ大統領選挙の勝敗を決定づける要因について整理してみました
アメリカ大統領選挙が近づいてきました。早くしないと、せっかく作った図も価値が無くなってしまうので、急いで記事をアップしようと思います。
上の図はアメリカ大統領選の直近2、3ヶ月の主な出来事を整理しようとしたものです。大きな赤い矢印が共和党のドナルド・トランプのトレンド、そして青い矢印が民主党のカマラ・ハリスのトレンドです。下向きの小さな黄色の矢印は支持率を低下させるような出来事を示し、上向きの小さな緑色の矢印は逆に支持率を上昇させるような出来事です。この小さな矢印はかなり主観的なもので、見方によっては逆になることもありえますが、あくまでも私個人の主観によるものですので、ご了承ください。
共和党の赤の矢印が上昇していて、民主党の青の矢印は下降していますが、これは、支持率の変化を直感的に反映したものです。10月後半になり、それまで優勢とされていた民主党の支持率が共和党に逆転されました。まだ楽観はできませんが、もはや「互角」というレベルを超えて、共和党優勢と言ってもよいでしょう。
ここ数ヶ月アメリカ大統領選挙をウォッチしてきたのですが、分断のアメリカでは、政治的立場によって、トレンドの解釈が異なるので、カマラ・ハリスを応援している方からすると、受け入れ難い記述もあるかと思います。偏見にとらわれずなるべくニュートラルな視点で整理してきましたが、日本の偏向報道を盲信している皆様には、受け入れ難い内容が多々含まれているので、あらかじめご注意してお読みいただきたいと思います。
ジョー・バイデンが大統領選から降りて(降ろされて)、副大統領であったカマラ・ハリスが民主党の大統領候補となり、最初にメディアに登場したのは8月の終わりのことでした。それまで、ほとんどメディアに登場していなかったので、果たして彼女が、ちゃんと喋れるのか、討論ができるのかは未知数でした。最初に登場したのは8月29日のCNNのインタビューでした。一応無事にこなしたということになっているのですが、私から見ると正直、かなり下手な喋りでした。何度も原稿に目を落としていたし、折角のアピールチャンスも活かせませんでした。
その間に、トランプはアメリカ各地で地道にラリー(演説集会)を続けていました。8月23日に、ロバート・ケネディ・ジュニアが。そして8月26日に民主党から共和党に移ったトゥルシ・ギャバードがトランプ支援に回っていました。そして、トランプの選挙戦を盛り上げるのが、スターリンクや、Xや、テスラのイーロン・マスクです。金銭的にも、頭脳的にも、これは大きな力になりました。
カマラ・ハリスとドナルド・トランプの最初で最後のディベートが行われたのは9月10日のことでした。民主党寄りのABCで行われたディベートは、メディアによって、「ハリスの勝利」と報道されました。またその中で、トランプが「オハイオ州スプリングフィールドでは、移民たちが犬や猫を食べている」という失言(?)が面白おかしく取り上げられました。
この討論会のことは、私が以前、記事にしたのでそちらをご参照ください。
日本のマスコミ(アメリカのマスコミも)は、カマラ・ハリスの勝利を強調しましたが、私が着目していたのは、彼女のプレゼン能力の欠如、言語能力の欠如でした。こんな人がアメリカ大統領になってしまったら大変なことになると心配したのですが、その不安を徹底的に覆い隠し、カマラ・ハリス優勢というイリュージョンを作り上げたはメディアでした。
ディズニーランドのキャッチフレーズは「夢と魔法の王国」ですが、現実ではない夢の世界を、民主党はメディアと結託して作り上げたのでした。その裏には、トランプが大統領になるのを何としても阻止しなければならないという執念がありました。それを支持したのはネオコンや、ディープ・ステートと呼ばれる世界の人々や、エリート層、ハリウッド、メディアおよびそれに影響を受けるZ世代の若者や、意識高い系の一般大衆でした。
カマラ・ハリスはしばらくは共和党がやっているようなラリー(演説集会)はほとんど行わず、メディアへの露出も控えていました。おそらくは、突然、大統領候補になってしまったので、準備が十分できておらず、へたに喋ったらボロが出て、能力が無いことがバレてしまうのを恐れていたのでしょう。それは何としても避けなければなりませんでした。それは、天下の民主党としてのプライドが許しませんでした。
9月後半から、カマラ・ハリスのメディアへの登場が増え始めます。9月19日には、オプラ・ウィンフリーの番組に登場します。そしてその後は次々とメディア露出を行うようになります。これを「メディア・ブリッツ(Media Blitz)」(メディア電撃作戦)と呼びますが、これを通して問題化してきたのが、カマラ・ハリスの「ワード・サラダ」問題です。これに関してはこちらの記事をご参照ください。
メディアはドナルド・トランプの発言に対して、ファクト・チェックで攻撃をし、カマラ・ハリスに対しては、いい加減な発言に対してもほとんど話題にしません。そして、「トランプ=嘘つき」、「ハリス=正直」というイメージをマスコミ総動員で作っていきます。
日本のマスコミは、民主党系のメディアの発言のみを取り上げるので、しばらく「ハリス優勢」という情報が蔓延します。11月の投票が終わり、結果が出たあとで、その信じ難い結果を知り、狼狽える人が多いのではないかと思うので、その準備という意味で、状況を正確に把握しておいていただきたいと思います。
インタビューのたびに好感度を下げるカマラ・ハリス
この記事のトップの図を見ると、メディア露出を通して、カマラ・ハリスの能力欠如が徐々に露呈し、さすがのメディアも庇いきれなくなっているプロセスがわかるかと思います。とくに転換点となるのが、CBSの「60ミニッツ」のインタビューです。
移民問題や、経済問題に関して結構厳しい質問が浴びせられるのですが、カマラ・ハリスは、いわゆる「ワード・サラダ」で回答し、いくつかの質問に対しては直接の回答を回避します。CBSが最終的に公表した動画は、「ワード・サラダ」的な部分はできるだけ割愛し、編集し直して、短めの動画にして公表されました。
その後、10月17日に、FOXニュースのインタビューに挑戦し、そこでも酷いパフォーマンスをしてしまいます。他のメディアと違って、FOXニュースは元々共和党寄りなので、ある程度覚悟はしていましたが、正直言って失敗でした。民主党系のFOXニュースの中でも、インタビューを行ったブレット・ベイアー(日本のメディアではバイアーと表記されていますが、ベイアーの表記のほうが英語に近いと思います)は、アンチ・トランプらしいのですが、カマラ・ハリスには厳しく突っ込みました。
放送時間が決まっている番組に遅れて登場し、しかも、インタビューにうまく対応できなかったので、カマラ・ハリス側のスタッフが、途中で強引に打ち切ってしまうのです。結果的には20数分のインタビューとなりました。YouTubeで見てみても、「私が喋ってるのだから、最後まで言わせて」という喧嘩腰の態度で、しかも最後まで喋っても内容が希薄な回答だったのが極めて残念でした。
こういう感じで、ほとんどすべてのインタビューで評判を下げていきます。どのインタビューも同じようなワード・サラダだし、アドリブ力の無さが露呈していきます。10月23日にはCNNに出演し、CNNのキャスター、アンダーソン・クーパーの厳しい質問に答えるのですが、ここでも曖昧な回答に終始し、ついにトランプのことを「ファシスト」と罵るに至るのです。身内と言っていいCNNに対してうまく立ち回ることができず、感情的になってしまいます。残念ながら、大統領としての品位が感じられませんでした。
このやりとりを見ていると、ロシアや、イスラエル、中国や、北朝鮮、イランなどのタフ・ネゴシエーターを相手に論戦を張れる感じがしませんでした。もし彼女が大統領になった場合、彼らにまともに相手にされず、あるいは馬鹿にされ、おそらくは無視され、世界はそれこそ第三次世界大戦に向かっていってしまうしかないのかなという気さえしてしまいます。それは何としても防がなければなりません。
10月27日にミシガン州の民主党ラリーにミシェル・オバマが登場しました。カマラ・ハリスに比べれば、全然演説が上手い。内容は男性に対して上から目線の苦言が多かったのですが、言葉がわかりやすいし、会場も非常に盛り上がりました。この人が民主党の大統領候補だったら、共和党もやばかったかもしれないという気がします。しかし、ミシェル・オバマの後に登場したカマラ・ハリスの演説の説得力の無さが逆に際立ってしまったのはちょっと可哀想な気がしました。
表面を取り繕うためのカマラ・ハリスの演出
カマラ・ハリスには、現実を覆い隠すための作戦が必要でした。バイデン大統領の代になってから不法移民の数が増えてしまったという点は、民主党のアキレス腱でした。あまりつっこまれたくないので、ハリスは「ワード・サラダ」という武器を使って、インタビュアーを煙に巻いていました。しかし、国境にほとんど行ったことがない事実がバレると、トランプに突っ込まれるので、9月27日に国境を訪問し、国境問題を真剣に考えているというイメージを作ろうとします。でもこれはアリバイ作りという感じです。
また、9月後半から10月頭に、巨大なハリケーンがアメリカに上陸します。ほとんどが共和党地域の州なのですが、被災地の被害者に寄り添っているという姿勢を示すために、ボランティアが支援品を袋詰にするのを手伝っているという写真をネットにアップします。しかし、国のリーダーがすべきことは、このような末端のことではないはずなのですが、メディア映えを最優先しています。
また「民主党は、ウクライナ支援や、イスラエル支援を優先しているため、国内のハリケーン被害救済対策のための予算がない」という共和党の攻撃をかわすため、「トランプのデマが救済活動に混乱を与えている」という論理で、共和党に非難の矛先を向けます。
ハリウッドの俳優や、歌手を使ってキャンペーンを盛り上げようとする施策もカマラ・ハリスの表面美化作戦の一環とも言えるでしょう。トランプとの討論会が行われた直後の9月10日にハリス応援を公表したテイラー・スウィフトをはじめ、数多くのスターがハリス陣営に馳せ参じました。
テイラー・スウィフトの他、ビヨンセ、オプラ・ウィンフリー、アッシャー、ビリー・アイリッシュ、ブルース・スプリングスティーン、リゾ、エミネム、スティービー・ワンダーなど数多くの歌集、俳優がハリスを応援しています。金の力か、それとも何か裏の力が作用しているのか、なんかちょっと気持ち悪い感じですね。テキサスのラリーにビヨンセが登場したのですが、挨拶だけで歌を歌わなかったのはかなり顰蹙だったようです。
カマラ・ハリスの戦略の問題点
カマラ・ハリスの戦略の問題点を列挙したものが上の図です。民主党はマイノリティやダイバーシティー、インクルージョンを重視してきているので、LGBTQを大事にしています。誰一人取り残さないという考え方ですね。しかし、それをあまり強調しすぎると、保守派層の反発を招きます。
元々民主党は黒人の支持が多かったのですが、黒人男性がカマラ・ハリスをあまり支持していないという事実が浮上してきます。これに対して、カマラ・ハリスは黒人の起業家を対象に支援策を発表したり、オバマが「黒人だったら、黒人女性に投票しろ」という発言をしたりします。しかしこれがかえって黒人男性の反発に繋がってしまいます。
また白人男性に投票をよびかけるキャンペーンも行いました。"White Dudes for Harris" (白人の男はハリスを選ぶ)というアピールもしていました。
上の動画は白人男性(黒人も登場していますが)にカマラ・ハリスへの投票を呼びかけるCMです。登場人物の気持ち悪さと、台詞の内容が共感を呼びにくいのと、論理がどうもよく理解できないということで炎上した作品です。「俺は男だ。ステーキはレアで食べるし、重いバーベルも上げられる、キャブレター修理も朝飯前だし」と、男らしさをアピールする数人の男性。やがて、「俺は女を怖がらない。女が大統領になるのを怖がったりしない」という流れで、カマラ・ハリス投票を呼びかけています。男性としては、反感を感じてしまいますよね?民主党としてはあまり知られたくない作品かと思うので、遠からず削除されてしまうかもしれませんが悪しからず。
こういうCMを作るというセンスが理解し難いですね。黒人男性へのアピールも、白人男性へのアピールも、これって人種差別、性差別なんじゃないのかと思ってしまいます。ダイバーシティーやインクルージョンを大切にしている民主党が、結果的には人種差別をしているという偽善が許せない気がします。
また、10月17日に、マンハッタンでアル・スミス・ディナーという伝統的な晩餐会がありました。カトリック教会のチャリティーの晩餐会で、大統領選挙前に、大統領候補や政治家たちが、正装で一同に会して食事をするイベントなのですが、カマラ・ハリスはこれを欠席してしまいます。過去には、大統領に選ばれる候補者は必ず出席しているし、これに欠席するというのは当選を諦めるに等しい行為と言われても仕方がありません。またもっと致命的なのは、この欠席でカトリック教会の怒りを買ってしまうのです。
こちらの映像は、アル・スミス・ディナー欠席に際して、会場で流すためにカマラ・ハリスが送ってきたビデオ映像です。
おそらく、笑わせようとして作っている動画なのですが、全く笑えません。会場でも顰蹙を買ってしまいます。
その後、別のラリーで、「イエスは主です」と叫んだ聴衆に対して、「あなたは間違ったラリーに来ている。通りの向こうでやっている別の集会に行くべき」と発言したことが、さらに火に油を注いでしまいます。カトリックだけでなく、敬虔なキリスト教徒を敵に回してしまった発言となりました。
カマラ・ハリスは、後日、教会に謝罪に行くのですが、傷ついたキリスト教徒は許せなかったのではないかと思います。
こんな感じで、いろいろなグループを敵に回してしまいます。イスラエル支援は、イスラム教徒の離反をもたらしました。250万のムスリム票が民主党不支持に回る可能性があるという記事が、10月22日のニューズウィーク日本語版に出ていました。2020年の選挙で、とくに激戦州でバイデン当選を支えたムスリム票が無くなってしまうのは、カマラ・ハリスにとっては一大事です。この票は一部トランプに回りますが、大部分は緑の党という第三党に回ると言われています。
また、「私も銃を持っている」という発言(しかも笑いながら)をして、銃規制の強化には反対しないという立場を強調していますが、これも銃規制推進派の人たちからすると許せない発言です。
また、民主党の敗色が濃厚になるにつれ、カマラ・ハリスが「トランプはファシストで、ヒトラーだ」と悲痛な叫びを上げ、人々の恐怖を煽るようになりました。この非難はいくらなんでも、良識ある知識人が言ってはいけない言葉なのではないでしょうか?追い込まれた民主党が被害妄想のカルト集団のように見えてしまわないでしょうか?
このような戦略のために、様々なグループが民主党を離れていくので、支持率が下がっていくのは当然の結果と言えるでしょう。
ドナルド・トランプの戦略
一方、ドナルド・トランプの戦略はコンスタントに支持拡大をもたらしてきました。各地を巡ってのラリーを精力的にこなし、7月13日の銃撃事件を生き延びたことをじつにうまくキャンペーンに活用しています。10月16日に事件の地、ペンシルベニア州バトラーでラリーを行い、10月28日にも再びバトラーでラリーを行いました。バトラーでの集会では、流れ弾で亡くなった支持者を追悼し、黙祷を捧げました。こういう人情に訴える部分がトランプ人気の理由の一つかと思います。
ドナルド・トランプのキャンペーンで印象的だったのは、マクドナルドでのアルバイト体験ですね。これは、カマラ・ハリスが、中産階級出身(庶民の出)を強調するため、マクドナルドでアルバイトしていたと発言していたのですが、これが嘘だとトランプは言っていました。そんな経緯で、トランプがマクドナルドで、フレンチ・フライ(日本のマックフライ)を揚げ、ドライブスルーで商品を渡す短期アルバイトをします。やらせなのですが、この出来事がトランプの人気をさらに高めるものになりました。ちなみに、マクドナルドは「カマラハリスが過去にマクドナルドで働いていたという記録は見当たらなかった。でも、もし今からでも働きたいということであれば歓迎する」というコメントを出しています。
あと、10月26日に、ジョー・ローガンのポッドキャストに出演したというのは大きいですね。ジョー・ローガンはアメリカで絶大な人気を誇るポッドキャストを運営している人なのですが、ここで何と3時間も喋り続けてしまいます。最初に大統領になった時のことや、今回の大統領選に至るまで実に様々なことを語り続けます。これは他の人には絶対にできないことでしょう。若い人たちにもトランプが考えていることが伝わったのではないでしょうか?何人かのインフルエンサーもトランプを応援していますが、このような人を通して、トランプの人気は拡大しているのだと思います。
ドナルド・トランプの勝利をさらに押し上げたのは、10月27日にニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでのラリーです。ニューヨークは民主党のエリアですが、トランプにとっては地元です。キャンペーンの最終仕上げと言ってもいいイベントで、非常に盛り上がりました。
この盛り上がりを快く思わない民主党は、このラリーを「1939年のナチのラリーを再現している」とか「トランプはヒトラーだ!」とか攻撃していて、メディアも「人種差別主義者の集会」とか言って攻撃しています。この中で登場したコメディアンがプエルトリコを「海に浮かぶゴミ」と発言したことを過剰に問題視し、共和党を貶めようとしています。民主党はいわゆる「ポリティカリーコレクト」(政治的に正しい発言)を重視する政党なのですが、「レイジズム(人種差別主義)」、「ヒトラー」、「ファシズム」、「ナチ」等の発言こそ、ポリティカリーコレクトではないのではないのでしょうか?僻みに満ちたヘイトスピーチで、とても矛盾していると思うのは私だけでしょうか?
選挙の結果が出た後の準備をするメディア
先週、ワシントン・ポストとLAタイムズが、「どちらの候補者も応援しない」というメッセージを出しました。本来ならば、「カマラ・ハリス応援」を表明するメディアです。それが今回は応援しないとは?
ドナルド・トランプにとってはもともと応援される可能性はないので、どうでもいいのですが、カマラ・ハリスにとってはちょっとショックです。おそらく刻一刻とトランプ勝利に向かってメディアも動き出しているということなのでしょう。
もしこれでカマラ・ハリスが勝利したとしたら、大きな力が裏で動いていたということになるのでしょう。結果が出た後は、しばらく混乱が続く可能性がありますが、新たな時代への移行がスムーズに行われることを祈ります。