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2024年クリスマス時期、印象に残った世界の広告

2024年も間もなく終わろうとしています。海外では11くらいからクリスマスをテーマにした(宗教的な配慮があるので、クリスマスと言わずにホリデー・シーズンと呼ばれますが)コマーシャル映像が作られ、クリスマスの雰囲気を盛り上げます。欧米をはじ目、世界各地で、心あたたまる作品がテレビや、ネットを賑わせます。一部しか見ていませんが、印象に残った作品をご紹介したいと思います。

繋がりをアピールしたドイツテレコムのコマーシャル

このコマーシャルは東欧地域中心に放映されているものですが、スロバキアの広告代理店MUW Saatchi & Saatchi が担当、制作は Armada Films、監督はドイツ人のAlex Feilです。

ガラスの壁で隔てられた向こうとこちらの二つの世界。二人の少女が友達になっていきます。最後に持ってきたプレゼントが、レンガと石。ガラスの壁が打ち壊され、世界が繋がるというストーリー。

かつて二つに分断されていた西と東のヨーロッパ。ベルリンの壁を思わせるようなガラスの障壁。実は、二つの世界は、別々のスノードームの世界だったというのが最後にわかります。テーマも、音楽も、実に印象的です。

ウクライナとロシア、イスラエルとガザ、アメリカとメキシコなど、今年は国境を隔てた分断が際立ちましたが、アメリカの大統領選でも、民主党と共和党の分断などもありましたね。そんな時代背景を感じさせる作品です。

掃除のおじさんによる深夜のリサイタル—アマゾンのCM

アマゾンは毎年、この時期に心温まるホリデーCMの名作を数多く作っています。今年は、とある劇場の掃除のおじさんが主人公です。歌が好きで、いつも鼻歌を歌いながら劇場の掃除をしています。ある日、劇場のスタッフは全員で、彼に深夜のリサイタルの機会をプレゼントします。アマゾンでジャケットを取り寄せ、おじさんはそれを着てステージに立ちます。そして歌う歌は、バート・バカラックの「What the World Needs Now Is Love」(世界が今必要としているのは愛)です。いいですね。制作会社は、昨年もアマゾンのCMや、アップルの「Fuzzy Feeling」などを作っているHungry Manです。

補聴器機能もあるアップルのエアポッズ

「ハートストリングス」(心の琴線)というタイトルのアップルのコマーシャルですが、これはもはやAirPods Pro 2の商品広告です。クリスマスの日に、ギターが娘にプレゼントされる。しかし、聴覚機能が衰えた父親は、ギターの音も、会話もきちんと聞き取れない。それどころか思い出さえも音が曖昧になっています。奥さんがアップルのAirPods Pro 2を渡します。すると、音が急に鮮明に聴こえるようになります。こんな機能があったことに私たちは驚くのですが、音と一緒に過去の思い出までもが、娘の成長の記憶までもが、鮮明に呼び覚まされることに感動してしまいます。ロサンゼルスのTBWAMedia Arts Labの作品で、監督はHenry-Alex Rubin、制作会社はSmugglerです。

「ウォーリーを探せ」の実写版EtsyのCM

ハンドメイドサイトのEtsy(エッツィー)のホリデーコマーシャルです。日本では「ウォーリーを探せ」という名前で有名なキャラクターのウォーリーですが、「ウォルドー」と言われている国も多くあります。このコマーシャルではウォルドー(ウォーリー)の実写版が登場します。人混みの中で、彼はすぐに見つかってしまうのですが、発見されたらそれで終わり。それ以上の発展はありません。でもそれ以上の関係のための特別なプレゼントは、Etsyで見つかるというコマーシャルです。ウォルドー(ウォーリー)を主人公にしてストーリーを展開したところが素晴らしいですよね?広告代理店は、 アメリカのOrchard Creative、制作会社は Smuggler(前述の作品と同じですね)、そして監督はTom Speersです。

歌うドンキー(オーストラリアの通信会社のテレストラのホリデーCM)

オーストラリアの通信会社テレストラ社(Telestra)のCMです。クリスマスは一緒にというタイトルです。クリスマスの飾り付けをする主人が、机の上に置いてあるスマートフォンに、クリスマスソングをエンドレスでリピートするよう指示をします。その直後に、飼っていたロバがそのスマートフォンを飲み込んでしまいます。すると「歌えるロバ」として、世界的なスーパースターになってしまいます。レコードまで出すという人気に… しかし、クリスマス前のある日、飾り付けをする人の姿を見て、主人を思い出して、家に帰ってくるというストーリー。なんとも奇想天外な展開ですが、今年のカンヌの重要なテーマだったのが「ユーモア」だったので、まさにその路線上の作品ですね。ちなみに、この作品の制作会社はオーストラリアのRevolver社なのですが、数ヶ月前にこのNOTEでもご紹介した「シドニーオペラハウス」のCM (カンヌのフィルム部門でグランプリ受賞)を制作した制作会社だったんですね。

他は全部待たせても構わない(ペプシのホリデーアド)

こちらはペプシのCMです。クリスマスの時期最優先事項は仕事や、フィットネスや勉強ではなく、みんなと楽しむことというシンプルなメッセージ。コロナの後のノーマルな時代の、当たり前のメッセージが何かとても清々しい気がします。これは自社で制作したものみたいですが、奇を衒わない感じがよいですね。

まだまだ素晴らしい作品はあると思いますが、また何か見つけたらお知らせします。では、皆様、メリー・クリスマス!





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