「データ活用の最終的な目標は、データによる行動変革を実現すること」-社内利用で経験した”データドリブン”を顧客へ提案-三井E&Sシステム技研株式会社の挑戦
三井E&Sシステム技研株式会社は旧三井造船時代から培ってきたハードウェア設計・製造技術を基盤に、計測・制御・監視技術を活用したハードウェアとソフトウェアを融合させたデジタルサービスを得意としています。三井E&SグループのITシステムを担い、ユーザー系SIベンダーとして、多岐にわたる業界のお客様に最適なソリューションサービスを展開しています。
同社は2019年から既存の業務システムを止めずに各システム間のデータを繋ぐ統合データベースを構築し、データの重要性を社内に浸透させてきました。
2022年からは、データ活用を中心としたDXに本格的に取り組み、社内に「データ活用プラットフォーム」を構築しMotionBoardを使ったデータ活用を推進。その経験や知見を活用しながら、ウイングアーク1stのパートナー企業としてお客様に価値ある提案を行っています。
「テクノロジー×業務知識×データ活用」で、新しい発見、新しい価値を提供する
――データ活用についての森重社長の考えをお聞かせください
森重様 変化の激しい現代においては課題を正しく認識し、物事の本質を見極め、先見性をもって環境の変化や不測の事態に素早く対応する必要があります。現在、お客様のデジタル化はますます加速しています。デジタル化の根幹となるのがデータであり、意思決定を支えるべきものであると思っています。データ活用の最終的な目標は、データによる行動変革を実現することです。
――そのために具体的にどのような取り組みをなさいましたか?
森重様 弊社では既存資産のデータを簡単に素早くつなぎ、データを集める「データ活用プラットフォーム」を2022年に構築しました。「データ活用プラットフォーム」に集めたデータはMotionBoardで可視化し、利用者である全社員に気づきを与える仕組みづくりを進めています。
――そうしたデータ活用推進の狙いはどこにありますか?
森重様 一つは社内にデータドリブンな経営と文化を根付かせることです。勘や経験からだけではなく、データをもとに意思決定し、経営や業務を進めるスタイルを浸透させたい。私自身も意思決定や判断を裏付けるものとしてデータを積極的に活用してきました。
もう一つは実際の取り組みの中で得た知見やノウハウを元に、お客様にソリューションやサービスの提案を行うことです。成功事例だけでなく、失敗した部分、苦労した部分も含めて提案に盛り込む事で、より説得力が生れます。弊社はDXを「テクノロジー×業務知識×データ活用」と考え、自社の経験を活かすとともに、お客様の業務を理解して、DX推進を支援します。
――社内のデータ活用とそれに関わるビジネスを進める上で重視されていることを教えてください。
森重様 推進するメンバーが非常に重要です。2022年4月に、DX分野への取り組みを全社横断的に牽引する部門として、DX推進部を創設しました。
各部署から「頼りにしてもらえる人材」ということをポイントに事業部から優秀な人材を経営者の責任でメンバー選出しました。
またビジネスを強力に推進するためには、パートナー企業との協力関係も重要です。開発リードタイムを短縮することや変化に柔軟に対応することが求められるなか、従来型のすべて作り込むスクラッチ開発のスタイルから、他社のツールやソリューションを上手に活用し、ビジネスの本質を見極め、お客様に素早く価値を提供することが今後ますます重要になると考えています。
「データ活用プラットフォーム」構築、MotionBoard活用によって社内にデータドリブンが浸透
――実際にデータ活用を進められたDX推進部の頼成様と岩佐様にお聞きします。三井E&Sシステム技研のデータ活用の歩みを教えてください。
頼成様 2009年にスクラッチ開発したアプリケーションと基幹システムを連動させ、業績の可視化を実現しました。2019年には複数のデータソースを接続した「統合DB型」にシフトし、BIによる可視化に挑戦しました。
しかし出所のわからないデータが乱立したり、元システムに多大な負荷がかかったりなどの問題が生じていました。そこで2022年に、既存のシステムは“作り直す”のではなく、“つなげ直す”という発想のもと、Dr.Sumを使ってデータを統合DBに集約し、加工・成形までを実行する仕組みを構築しました。
このようにデータマートを用意し、効率的に利用できる「データ活用プラットフォーム」をリリースしました。またそのデータを可視化し、シミュレーションや集計・分析などの気づきを得るために、MotionBoardを活用しています。
――「データ活用プラットフォーム」の構築と利用促進にあたって、最も苦労された点、力を注いだ点は?
頼成様 一つは業務ロジックの理解です。接続元のシステムがどのように運用・管理されているかを理解していないと様々な問題が生じます。そこを十分に理解してデータの加工・成形を行い、データマートを作成しました。
もう一つはデータ活用のための社内教育です。2023年度より部署ごとにインストラクターを育成し配置しています。2024年度よりインストラクターをデベロッパーという考え方に発展させ、開発チームの中に一定期間入って本格的に学んでもらうようにしています。そうして学んだメンバーが各部署に戻って、活用を広げることを期待しています。こうしたデータマートの管理と教育体制の整備はDX推進部が一括で行っています。
――岩佐様は2017年にMotionBoardの社内導入を担当、その後2022年にスタートしたデータ活用プラットフォームの展開を牽引されたことでウイングアーク1stのパートナー様へ感謝の意を込め表彰させていただくアワードであるPERSON of the Year2024を受賞されています。MotionBoardにどのような感想をお持ちですか。
岩佐様 BIツールとしての機能はもちろんですが、問い合わせをした際のウイングアーク1stさんの迅速・的確なレスポンスや、保守の対応などが他社と比べると格段に優れていると感じています。また、製品に関する要望にパッケージソフトでありながら柔軟にご対応いただける点も大変助かっています。
――活用方法を、個人と組織で分けている事の意味を教えてくださぃ。
岩佐様 「個人向け」は自分の業務や担当顧客やプロジェクトにあわせて自由な視点でデータを活用させるために、また「組織向け」は同じレベル、同じ鮮度の情報をもって各組織が議論できるように、活用方法を変えています。
具体的には「個人向け」にはセルフBIとして、その人が必要なアイテムをコピー&ペーストするだけで好みのダッシュボードが作成できるようにしています。一方、「組織向け」には公開ボードとして、管理会計や技術、月別確度別受注高など特定の用途に特化して細部まで開発基準を作り込んでいます。具体的にはチームとして仕事が上手く進んでいるかがわかるよう、各部門の要求を反映し作り込んでいます。利用者の目的やレベルに合わせたダッシュボードを作成することで利用を促進し、より多くの気づきをもたらすことが狙いです。
――データ活用を推進することで、社内にどのような成果が生まれていますか?
頼成様 一部の営業会議で、紙の資料を配らず、MotionBoardの画面を見ながら話し合うようになりました。その場で、ボードを見て、提案や引合進捗の確認や指示をするため、営業担当が入力するデータの質も向上し、さらにレベルの高い議論ができるようになりました。
岩佐様 営業部門にいたとき、まさに私がExcelで紙の資料を作成していました。あらかじめ求められるだろうと想定した何種類もの資料を作っていました。今ではMotionBoardのドリルダウン機能などを活用し、その場で必要なデータを確認することができます。おかげでデータドリブンの文化が少しずつ社内に浸透し、社員の意識や業務のスタイルが変わりつつあります。
自分たちの取り組みを元に、ウイングアーク1stと緊密に協力してお客様に価値ある提案を行っていく
――お客様に対してどのような営業活動を行っておられますか?
岩佐様 私たちDX推進部が社内の各事業部と協力して提案を行っています。提案する内容は当社での経験に基づいて、最適なツールや注意すべき点、使いこなしの技などをお伝えするようにしています。
具体例としてお話しますと、既に何らかの形でデータを見える化されているお客様には、「実際にいまExcelで作っているレポートフォームを見せてください。MotionBoardで同じ画面を作成できます。その場で個別案件の明細情報まで追えます。営業会議における数値達成に向けての具体的な行動までディスカッションできます」という話をします。
次にRAWデータを提供してもらって、Dr.Sumを使う…というストーリーを展開していきます。
また上っ面ではなく実際に私たちが社内で苦労、経験してきたことを交えて
「社内で実際に取り組んでみたのですが、このような成果が上がっています」という提案を行うと、お客様からとても良い反応をいただいています。
頼成様 どのようにデータ活用を進めるのかという点も、私たちの経験を元にアドバイスしています。データの加工・成形、データマート作成の重要性に加え、どうすればMotionBoardなどのBIツール活用が進むかもお伝えしています。BIは見なくても現状の仕事は回るため、見に行く理由を作ることが大切です。最初は「数日前と数値が違う」などの「気づき系」ボードから始め、ドリルダウン機能などでデータの隅々まで見える「可視化系」ボードへ、さらに時系列を絡めた比較などの「分析系」ボードへと段階を踏んで見せることで、活用のメリットを実感してもらうことができます。特に、PJの最初に誰が何のために使うシステム・ボードか、それにどれだけの価値があるかなどユーザーペルソナを決めてから進めることをご提案しています。何れも自社活用で経験した失敗や手応えを反映したものです。
――ウイングアーク1stとの協力関係はいかがですか?
岩佐様 お客様に提案する際に内容面に関して営業担当の方を中心に様々な相談に乗っていただいております。サポート部門による技術面での支援も手厚く、大変ありがたいと感じています。また、提案のために製品のカスタマイズが必要な場合にも、迅速・柔軟に対応いただいています。現在ウイングアーク1stさんとの定例会を行っていますが、今後さらに協力関係を深め、お客様にとってより価値のある提案を行っていきたいと考えています。
頼成様 「WARPパートナーサイト」や「カスタマーサクセスサイト」の資料がとても役立っています。教育用のコンテンツが充実しており、開発標準を定めるためにも活用しています。お客様へ提案する際のパワーポイントのひな型や動画コンテンツなどもあるため、大変参考になります。また、ウイングアーク1st製品のユーザーとして質問を掲示板に打ち込むと、メンバーの方から回答やアドバイスがいただけるユーザーコミュニティサイト「nest Membership Portal」も役立っています。
ウイングアーク1stをはじめとするパートナーと力を合わせ、データドリブンによるDXを実現していく
――今後の展望と目標を教えてください。
頼成様 シミュレーションや高度な統計学を用いたデータ分析や従業員が自ら考えるセルフBIの強化を計画しています。AIでの予測や分析機能を最大限活用して、たとえば「入金が遅れているからアラートを出す」から「過去のパターンから考えると入金が遅れる可能性がある」など、より人間の判断に近いロジックを持たせるよう開発を進めています。また、大規模言語モデル(LLM)とデータ活用を絡め、実際の成果につなげることにも取り組んでいます。
岩佐様 弊社は出退勤管理システム「TIME-3X」やWeb上の問診に答えるだけで健康増進、病気予防が可能になる「Dr.セルフチェック」などHR領域のソリューションを提供しています。現在人事部とともに社内のHR系データ(勤怠、人事評価、賞罰、適性検査の結果、アンケートなど)を分析・シミュレーションする機能を開発しています。様々なデータを用いて従業員のメンタル不調防止や離職防止に役立つダッシュボードを作成し、お客様に対しても社内で経験したノウハウを元に、今後、提案していきたいと考えています。
弊社のノウハウとウイングアーク1stさんの製品を上手に組み合わせて、より価値の高いソリューションを提供していきたいですね。
森重様 目指すのはデータドリブンによるDXです。今は企業の系列やグループなどに関わりなく、企業同士が時には競合し、時には協業する時代です。枠や既成概念にとらわれず、本質は何かを見抜き、自分たちの経験を元に、お客様やパートナー企業と力を合わせてデータドリブンを実現していきます。特に製造業出身であることを活かして、現場で起きている様々な課題、例えば労働力不足、後継者不足を補うべく、現場データを活用し職場を豊かにするような、製造業におけるDXも今後進めて行きたいと考えています。
■三井E&Sシステム技研株式会社&ウイングアーク1st株式会社がタッグを組んでお客様へ価値ある提案を致します。
※Webメディア「データのじかん」にて森重社長が データードリブンな経営を推進する背景や想い。またウイングアーク1st製品のヘビーユーザーとして培った経験を基にした提案方法などについてご紹介しております。
~編集長のほっと一息~
自社でウイングアーク1st製品を活用することで製品理解が深まるだけではなく、業務や行動・思考がどう変わるかまでの体験を持って顧客提案しています、というお話はとても力強く感じました。
また、社内で活用するための開発基準を作成するためのセミナー、お客様へご提案するためのノウハウセミナー「WARPキャンプ(*WARPパートナー様限定セミナー)」のご活用。
さらに、どなたでもお使いただける、学びのプラットフォーム「Customer Success Academy」やユーザコミュニティ「nest」を情報収集の手段として効果的にご活用いただいているお話もお聞きました。
エンジニア様向けのセミナー動画もございますのでぜひご活用ください!
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いつもウイングアーク1st「WARPの歩き方」のnoteをご覧いただきありがとうございます。読者のみなさんからいただく記事のスキ「♡」も編集部の励みになります!
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