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ジョグについて(前編)
「普段のジョグ、遅いよね。なのになんでレースで速く走れるの?」
「その練習でなんでレースの時ハイペースで粘れるの?」
ということをたまに聞かれる。
本当に速く走れているのか、しっかり粘れているのかは私本人の主観も大いに入るので甚だ怪しい気もするが、少なくとも周囲から客観的に見てそう思われているのは大変ありがたい話だと感じている。
今まで冷静に考察したことも無かったので、自身の昨シーズンの取り組みも踏まえてジョグの重要性を2回に分けて振り返ってみる。
※当内容は運動生理学やスポーツ科学に基づいた見解ではなく個人の取り組みによる感想や感覚的な話を多く含むため、これを読まれた方においても自身の現状の走力や体質・得手不得手に応じて内容の取捨選択をして頂ければと思います。
①なぜ普段ジョグばかりなのか
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私は普段のスロージョグの積み重ねを最重要視しており、逆に週末のポイント練習は言ってしまえばオマケ、気分転換的な気持ちで取り組んでいる。正直なところ、これがほぼ全てと言っても良いくらいの感覚だ。「ジョグで走行量と走回数をどれだけ増やせるか」と「月間走行距離の中でジョグが占める割合をどれだけ増やせるか」が、走力を飛躍的に向上させるための鍵だと考えている。
スロージョグを最重要視する理由は以下の通り。
■真面目な理由
・そもそも自分の走りの土台が弱い
(表面的にも内面的にも)
・ポイント練習偏重による失敗経験
・徹底的な脚作り
・身体の内面機能改善
(疲労回復力強化、エネルギー代謝効率改善)
・ランニング動作改善
(リラックス動作修得)
■不真面目な理由
・疲れるから速く走りたくない
・トラックに行くのが正直めんどくさい
・ボーっとしながらのんびり走りたい
②ペースが遅い
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多分、私のジョグのペースは遅い。具体的に言うと大体5'30"前後~6'00"/km程度だ。このペースが速いと感じるか遅いと感じるかは人それぞれだが、少なくとも自身の走力換算で考えると数値上かなり遅い部類だとは思う。
というより、そもそもジョグのペース自体を全く決めていない。GPS時計のオートラップを切り、時計は一切見ず、身体が自然とリラックスできる感覚で走り、結果として大体それくらいの速度域に落ち着いている・・という流れだ。
毎回一定に保っているのはペースではなく「努力感」。それを固定軸にするため、身体が疲れている時は自然とペースが相当遅くなる。逆に疲れが取れていてフレッシュな状態なら少しだけ速くなる。(但しそれでもキロ5分より速くなることは滅多に無い。)
「明日もまた走りたい」
自然とこのように思えるくらいのリラックスしたペースのジョグを徹底的に積み重ねることが大切だと考えている。
③速く走らないと走力が上がらない?
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結論から言うと、決してそのようなことは無いと思う。(人それぞれなので速く走ることそのものを否定する訳ではない。)
昨今、時短や効率化といった概念がランニング界隈でも広がっており、確かに短時間で最大限の練習効果が得られるのであればそれに越したことはない。但し、日々のスロージョグの積み上げが少ない状態(身体の土台が弱く高強度の練習に耐えられない状態)で高強度練習による時短・効率化を図っても正直言って得られるリターンは極めて少なく、むしろそれどころか故障のリスクばかり高まると感じる。これは何もポイント練習に限った話ではなく、日々のジョグの強度においても同じことが言える。
また、速いジョグしか出来ない(ゆっくり走れない)という声もたまに聞く。あくまでも推察だが、ゆっくり走れない人というのはリラックス(脱力)を上手く使えておらず、仮に頭では分かっていても走行中は無意識の内に何かしらの力みが生じているのではないかと考えている。結果、意図せずにペースが速くなってしまう。そのようなジョグを重ねていると、同じく得られるリターンが少なく故障にも繋がりやすい。
私においては、ジョグで最も大切なのはリラックス・脱力を維持しながら推進する感覚を身体に染み込ませること、そしてレースではその感覚を自然に維持してハイペースを保つこと、だという考えのもと、一年間スロージョグの積み重ねを徹底した。すると、身体の内部機能向上とレースペースへの対応力向上を明らかに実感することが出来た。考え方として以下が参考になると思う。
④前編まとめ
ここまではジョグの重要性を書いてきたが、ただ単にスロージョグを徹底的に繰り返せば良いかというと決してそうではなく、繰り返しになるが「無意識のうちに脱力・リラックスする感覚」を徹底的に磨き上げることが最も大事だと思う。逆に言うとその感覚を軽視したスロージョグはどれだけ積み重ねても大して意味が無く、走力向上にも繋がりにくい。労力対効果のコストパフォーマンス観点からも正直オススメできない。
スロージョグそのものは目的ではなく手段、ということを申し添えておく。
続き(実際に取り組んだ内容と具体的に感じた効果)は後編にて。