「ヒト」という1個体として動き回れる仕組み
いよいよ、ヒトの仕組みをざっくり理解するこのシリーズも終盤となってきました。
できるだけ、体内のミクロで見えにくい世界観について、わかりやすく説明してきたつもりですがいかがでしょうか?
今日は、ヒトの「動作」を支える筋・骨格系について説明します。とても「マクロ」な目でヒトの動きを見ていきましょう。
脳から伝わった指令に従い、身体が動く
筋・骨格系はイメージしやすいと思いますが、われわれが日常生活を送る上で行っている動作すべての土台になります。朝目覚めて、上半身を起こす。よっこらしょとベッドから足を下ろす。地面に足の裏をついて、立ち上がる。鏡の前まで歩いていって、蛇口をひねり、水を手にとって、両手で顔をゴシゴシ洗う。顔を洗うときには、ちょっと「かがみ」ますね。
固くて土台となる「骨」と、伸縮して動作のもととなる「筋肉」
この「日常動作」すべてに関係しているのが筋・骨格系です。しかし、骨と筋肉は役割が違います。まず理解すべきは、「骨」は形が変わらない「カタイ」ものだということ(ご遺体でも、骨は腐らず残っていますよね)。もちろん、「体内で常に新しく作り変えられ、丈夫に保たれる」という仕組みはありますが、基本的には骨はリアルタイムで形を変えません。もちろん、アメーバみたいに、硬い骨がなくても生きてはいけると思いますが、効率よく獲物を捕まえたり、すばやく天敵から逃げようと思うと、しっかりした骨を土台にしていたほうが良さそうですよね。
そして、アタリマエだろ!と怒られそうですが、実際にわたしたちの動作を実現しているのは「筋肉」の方です。そう、脳からの指令にしたがい、伸びたり縮んだりして、「骨と骨同士の位置関係を変える」のが筋肉の働きです。脳の病気でも、神経の病気でも、筋肉の病気でも、障害されたら動かなくなってしまいます(筋疾患を扱う診療科は、整形外科より神経内科の方が多いですね)。
このイメージを図示しました。この図を見て「骨は形を変えない」「筋肉だけが長さを変える」ということを理解していただければと思います。
骨と骨のつなぎ目「関節」
もちろん、わたしたちの身体の中に大黒柱となる骨が「ドーン」と一本あっても良いのですが、残念ながらそれでは「複雑な動き」ができません。しなやかな新体操の動きやフィギュアスケートのような動きとまではいかなくとも、わたしたちは日常的に複雑な動作を行うことができます。これは、「関節」のおかげです。
めちゃくちゃざっくりいえば「肘があるから、腕は肘のところで曲がる」というアタリマエのことをいっています。ですが大事なことですよ!上腕の骨と前腕の骨がつながってしまっていたら、腕は肘のところで曲がることができません。膝も同じです。そう、「関節」という「つなぎ目」で2つ(以上)の骨が分かれているからこそ、そこで「動き」が出せるのです。
関節にも、いろんな種類があって、「グルングルン」と好きな方向に回せる「球関節」(いわゆる「体幹」から生えてる「腕」と「脚」みたいに自由自在に動かせる関節)もあれば、「曲げ伸ばし」しかできない関節もあります。
解剖学の勉強でも大変なところ
わたしたち医療従事者がまず解剖学を学ぼうとすると、膨大な知識量に圧倒されますよね。そしてそのすべてを覚えきることは不可能です(あえて断言しますが、不可能ですし、その必要もありません)。
内臓の勉強は「見えない」こともあり、複雑で難しいです。一方、筋肉や骨の勉強は案外楽しいなと思えたりしますね。見たり、触ったり、動かしたりできます。もちろん、そうやって楽しんで勉強してくださいね!
でも、案外、勉強しだすと、筋肉や骨にも覚える知識が多すぎるという壁が立ちはだかります。「え、こんなところにこんなに筋肉っていっぱいあんの?」みたいな。
ですから、「なりふり構わず全部覚えよう」としないことが大事です。みなさんの勉強時間と集中力は限られています。みなさんが学ぼうとしているのは「役に立つ医学」ですよね?有用性が高いこと、大事なこと、そこから重点的に学びましょう!
わたしのこの記事はそのコンセプトで書いていますよ!ぜひ、これからもついてきてくださいね!