ネコのタマゴfield blend A2020/ねこみみワイン「猫のような奔放さ」
どの醸造酒、ビールもSAKEも、そしてもちろんワインもボトル差があったりヴィンテージで違ったりでいわゆる一期一会であります。そういうのは当然なんですけども、その中でも一期一会of一期一会な存在だと思い立ちましたので微力ながら記録に残したいと思いまして書き綴ります。
この時間が流れるスピード感が益々上がっているような社会において、農作物全般は太古よりさほど変わらぬ時間が流れていて、その為ワインの原料となるブドウ栽培が収穫できるようになるのは、苗を畑に植えてから概ね三年ほど掛かるとされています。そしてその原料を収穫して醸造して整えてワインとしてリリースするとなると更に一年ほど掛かったりします。もはやオリンピックの開催間隔の時間を有する訳です。御自身達で選ばれた道とはいえ、外側にいる人間としましてはただただ本当に御苦労様です、と。
そして出逢ってしまいました、この赤ワイン。処女作のリリースという事で、私的興味と御祝儀のような気持ちで発注しました。そもそも、ワインの処女作というのは生産数が少ないものでして、それはまだブドウの収穫量(目指す品質を確保した収穫量)が少ないからであって、少ないだろうとは思っていたのですけども後々生産者さんにお聞きしたところ80本ほどという事でビックリしました。80本って、、、もはや外販しないレベルの生産数です。この販売するしないの判断に関しては生産者さんのお考えによりますのでこういう事もあるかと思いますけども、プロセスエコノミーと言いますかなんだか運命的に出逢ってしまったと感じる要因の一つとなりました。しかも、試験栽培ブドウ品種12種を全てブレンドしたという事で今後はもう在り得ないワインになるとか。何故なら不適格だと認識した品種は畑から抜いてしまうだろうからです。普段のソムリエとしての自分だったら、そのような刹那的過ぎる存在は繋ぎ切れないと思ってあまり発信しようとはしないのですけども、出逢ってしまったソムリエの役目をふと感じた次第でした。因みにその12品種というのは
だそうです。
テイストは、若いワインであり、上記のようにコンコードが一応に多めであるので、アロマの立ち昇りは赤いジャムが感じられます、けれどもそれほど強過ぎず、多品種が原料に使用されているからか複合的なアロマです。また、原料収穫日は全品種2020年9月22日という事で、長野県茅野市という冷涼さもあるテロワールにおいて過熟させず適熟を図ってブドウ収穫したのでピーマンを思わせるような青っぽさも目立ちます。ただこの点、と或る北海道の大人気のワイナリー醸造家さんが仰っていた事で「少し未熟なブドウが原料に加わっているのが良い」という考えもあって、そういう点でもワインという醸造酒は自己表現としても魅力的な存在であると言えるかと思います。このワインにおいてもネガティブというよりも一つの構成要素としてただただ在るという印象。あとアロマに関して一つだけ。生産数が極少だとどうしても酸化したニュアンスをどうしても帯びてしまいますね。若干魅力が削がれてしまったイメージです。味わいはほぼアロマと連動していて、余韻は赤ワインの見た目ながら使用ブドウ品種からも考えられるよう渋味が強くなる要因があまりないのでサラサラとしています。わずかにタニック。
よって、複合的、という事で肉ジャガなど煮込み。特に醤油や味噌を使った料理。マリアージュとかではなくてグーパンチで好相性。長野県なので野沢菜のおやきなども。ただし本当に生産数が少ないので刹那的なマッチングかと。因みにまだストックは複数本あるので御興味が湧く御仁は今現在なら事前オーダーにていつでもボトルでサーヴ承ります。
6~7/10p
《ネコのタマゴfield blend A2020》
ねこみみワイン(オレイユ・ド・シャ) 長野県茅野市