雑誌の表紙に踊る「日本ワイン」の文字のブランドパワーは如何ほどなのか?
画像の左側から、「メトロミニッツ」は2023年時点で創刊21年目を迎えた東京とローカルをつなぐフリーマガジンでテーマは「豊かな暮らしのヒントはローカルの中にある」との事で毎月東京メトロの各駅にて配布されています。
画像真ん中「ゲーテ」はメンズライフスタイルマガジンという事で「熱狂人生 仕事が楽しければ人生も愉しい」がテーマのようです。
そして「ワイン王国」はワイン業界雑誌としては著名なツールです。
「ワイン王国」の他の二誌は必ずしもワイン専門誌や酒類業界誌ではありませんけども現行品が日本ワイン特集でしたし、「ワイン王国」も毎号ごとに特集が異なるのですけども現行品は右に同じでした。ここ一ヶ月ほどでドドドッとローンチされた訳です。某永田町っぽい表現をすると「風が吹いてる」日本ワインなのかもしれません。。。
ただ三誌とも切り口が異なります。紹介順に表紙の「日本ワイン」の文字のパートナーは「現在地2023」、「今のうちに手に入れろ!」「上昇中」、「魅力」「風土を映す造り手たち」です。
これらの文字のインパクトだけでいうと雑誌というトレンドをフォローする性格としてそれが強い特集は「メトロミニッツ」「ゲーテ」「ワイン王国」の順になるかと。業界誌である「ワイン王国」よりも、「メトロミニッツ」「ゲーテ」の方が字面的にトレンド感ある特集を組んでいそうです(実際そうなんですけども)。
ざっくりと個別に御紹介して参ります。
先ず「メトロミニッツ」の日本ワイン特集は素晴らしいです。今までも「メトロミニッツ」は度々日本ワインを取り上げていましたけども今回は集大成とも言える出来かと十年以上日本ワインをサービスし続けているソムリエとして感じます。そしてその中でも北海道道南地域にてフランスの実力派ワイナリーである「エティエンヌ・ド・モンティーユ」が本格的に活動を開始した事に関する注力記事がありまして、2023年下半期のトピックとして掲げるのに相応しいものです。また日本各地のワイナリーさん達の紹介と共に、楽しめる飲食店さん達の紹介もセットになっていて、こちらの性格上のツーリズム的な要素も盛り込まれていて実にスムーズな誌面です。加えて、ローンチ後のネット上やSNSなどでの個別特集の紹介なども好感が持てます。このクオリティが業界誌ではないのにも関わらず内部リソースで仕上げているらしいので見事な取材力・執筆力・編集力を持った編集部さんだと改めて感動する次第です(過去にSAKE「DATE SEVEN」の件でも驚かされました)。
次に「ゲーテ」はこの雑誌ふくめ出版社さんの性格といいますか、やっぱりエロティックな感じがあります。局所的なホットトピックを取り上げたり、記事が前のめりだったり、日本ワイン全体を俯瞰するには欠けている印象が少しあります。ただ情報量自体は結構あるので決して読み応えがない訳ではなく、この煽っている感じから購買意欲が喚起させられる事もあるでしょう(それでも実際にフラっと購入できるものは少ない)。「ゲーテ」の場合は情報としてそのトレンドを一定ほど押さえておく、つまり実際の飲酒体験を必ずしも喚起しようとはしていない印象を受けます。現実、今回の号のメインは表紙の通り芸能人さん5名も起用したファッション特集でしたから。
最後に「ワイン王国」。個人的にはお見事な誌面構成だと感じます。先ず導入自体は、日本ワインにおいて最も歴史ある審査会でしょう日本ワインコンクールの2023金賞受賞ワインでして、これをキッカケに日本各地のワイナリーさん達も紹介されていて、そこには仲良く大手ワイナリーさん達がズラズラっと並ぶ訳です。こういうのは他の雑誌だとなかなか面倒なものです。記事と記事広告と広告が入り乱れるのですけども、大して日本ワイン業界サイドから広告もないのにも関わらず誌面を割いて日本ワインの特集が出来るというのは実はありがたい事ですので勝手ながら編集部さんの交渉力に敬意を評したいです。しかしながらその為にトレンドをフォローする事にさほど注力していない為に、雑誌としての情報の鮮度は良いとは言えず、各種ワインのテイスティングコメントもプロフェッショナルなソムリエさん達のものがありますけども、それらも現時点での刹那的なものですからストック情報として捉えるのも限りがありますので、どこまで有用的であるかは個々人様で異なってくるだろうと察します。
上述していますけども、日本ワイン業界サイドからは比較すると大きいとは言えない広告誌面ヴォリュームの中で、偶然にも同時多発で日本ワインの特集が組まれるという事は、外圧ではなくて各編集部からの情熱の賜物だと自分は感じ取っています。
そういう点で、日本ワインはまだまだ確立したブランドがあるとは言えず好循環のサイクルに入るには時間が掛かりそうですけども、それでも間もなく次のステージに移行しそうな「風」もありますので皆々様におかれましては今後とも宜しくフォローと御愛飲のほど宜しくお願いしたいところであります。
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