パーカーポイントに飛びつく消費者はダサいのか?
本稿はワインビギナーの方向けに作成しました。
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まとめ
・パーカーポイントを上手に活用することは全然ダサくない!
・パーカーポイントと価格から選べばがっかりワインを掴みにくい
・パーカーポイントワインは¥2,000以下でも買えちゃう
・でも、パーカーポイントは絶対無二の基準ではない
こんばんは、じんわりです。
「ワインには詳しくないので、外見だけでおいしいコスパワインが見つけられる目印があるといいな~」と思っているワインビギナーの方、意外に多いんじゃないでしょうか。
そんなとき「パーカーポイント」がついたワインを選んでみることをお勧めします。
聞いたことありませんか?「パーカーポイント」。
パーカーポイントとは
パーカーポイントを初めて耳にした方のために簡単にご紹介しますね。
この採点法はロバート・パーカーという方が開発したワインのおいしさを見える化する「ものさし」です。
ワインは本来、オリンピックの100m走(を何秒で走れるか)のように客観的な「ものさし」で優劣をつけられないものです。「おいしいワインの基準」は人それぞれ千差万別な上に、同じ人が同じワインを別の日に飲んだとしても、1回目と2回目の飲み手の気分や外部環境次第で評価が簡単に変わりうる非常に曖昧ものでもあります。
その千差万別でふわふわしたワインの嗜好に対して「一定の基準=ものさし」を設けようという思い切った試みがパーカーポイントであると考えて頂いても良いと思います。
パーカー氏自身は映画「モンドヴィーノ」のインタビューの中で以下のように語っています。
「後世にロバート・パーカーの遺産が残るとしたら、ワインという分野でそれまでは階級に分かれていてカースト制や貴族制があった世界で米国的な民主主義でワインを評価した、革命を起こしたことだ。」
『「有名な産地だから」「歴史があるから」「値段が高いから」ということは評価基準にせず、飲んで純粋においしいと感じるワインに対して高いポイントをつけるシステムをつくった』と言い換えておきましょう。
その採点基準についてスーパーざっくりまとめると以下がポイントでしょうか。
・50-100点満点の評価
・90点以上が狙い目?
・色、香り、味わい・余韻、熟成への期待が採点対象
パーカーポイントとの上手な付き合い方
一見便利そうなパーカーポイントですが賛否両論があるのも事実です。
良い部分:
・ビギナーの方がワインを選びやすくなる
・ビギナーの方ががっかりワインを掴みにくくなる
批判されている部分:
・おいしいワインの基準が画一化される → 似たようなワインが増える → ワインの多様性が失われつまらなくなる
・パーカー一派の好みが反映された基準でしかなく、パーカーポイントワインの味わいを好まない人もいる
どうでしょうか?
まずはパーカーポイントの良い部分を見ていきましょう。
「おいしさの基準がわからない・・・」や「品種、産地、生産年を言われてもさっぱり・・・」といった不安やぼやきがワインビギナーの方から聞かれる中で、万人に馴染みのある100点満点採点法はとっつきやすい評価基準ではないでしょうか。しかもその採点基準が世界的に有名なワイン評論家によって編み出され長年世界中で活用されているとなると、消費者さんの安心に繋がるのではないでしょうか。
別稿:簡単!おいしいワインの「基準」と「値頃感」でも書きましたが「不快臭を伴うワイン=がっかりワインの遭遇率が6~7%」という報告もあり、ワインビギナーの方が不運にもがっかりワインを掴んでしまうことも充分あり得る話でしょう。人生で一番最初に出会ったワインが臭い欠陥ワインだったら、その消費者さんは二度とワインを買わないかもしれません。ワイン業界にとっても消費者さんにとっても不幸なことですね。パーカーポイントを上手に活用することでそんな不幸が避けられるのなら、売り手も買い手も満足ではないでしょうか。
次に批判されている部分です。
パーカーポイントがワインの均一化をもたらす恐れについてはワイン業界識者やワイン上級者から語られることが多いですね。具体的に均一化とは、パーカーポイントが消費者市場で力を持つと(実際ある程度の力を持っていると思われますが)、世界中のワイナリーがこぞってワインの造り方をパーカー好みに寄せて行き、似たようなワインが市場にあふれて飲み手にとって面白くなくなる、ワインそれぞれの原産地らしさや多様性が失われる、ということでしょう。
中でも有名な批判はソムリエ、映画監督、執筆家でもあるジョナサン・ノシター氏によるものではないでしょうか。実際彼らワイン識者・上級者は各国の歴史あるワインがそれぞれの「らしさ」を失い特定の画一的な味香りにシフトしてきていることを時系列的な縦のテイスティングを通して気付いており、文化的な意味合いも含めて不安・不満を表明しています。しかしそのような考え方は、世界各国のあらゆるおいしい(そしてべらぼうに高い)ワインをたくさん飲みこなしてきたプロ中のプロたち、パーカー氏の比喩を借りるなら最上位の「カースト」=特権階級に属する人々だけがたどり着ける至高のワインの嗜好とも言えるかもしれません。「超高級ワインにはある程度のおいしさだけでなく『らしさ』も必要」という価値観なのでしょう。
グダグダ書きましたが、まとめると「多くの消費者さんは超高級ワインの『らしさ』を未体験・未修得であるはずですので、一握りのワイン殿上人たちが主張する味香りの好み・評価はワインビギナーの方にとってあまり参考にならないかもしれない」というのが私の見立てです。
むしろワインビギナーの方には「パーカーポイントはパーカー一派の好みが反映された基準でしかない」という欠点にこそ注目して頂くべきなのではないかと思います。
簡単に言うと「おいしいワインの基準」はひとそれぞれ個性があるもの、パーカー一派と好みが異なる人々も相当数にいらっしゃるはずだ、ということですね。同じワインをめぐって正反対の評価を下したパーカーとジャンシス・ロビンソン(彼女もまたワイン界の権威のひとりです)の逸話が代表例でしょうか。「完成されている。イイ!」vs「無駄に濃すぎ。トゥーマッチ!」みたいな論争ですかね。
パーカーポイントもひとつの目安。最後においしいかどうかを決める権利=自由は皆さんが平等にお持ちです。飲み手さんが「主」でパーカーポイントや識者・上級者の主張は「従」であるということですね。
パーカーポイントの具体的な活用方法
では、具体的にワインビギナーの方がパーカーポイントをどのように活用できるか考えていきましょう。
ロバート・パーカーが刊行したワイン雑誌「Wine Advocate」の公式webサイトを見ると採点法の解釈が書いてあります。以下和訳要旨です。
96-100点:
品種特性がいかんなく表現され、奥深く多重奏の非凡なワイン。探してでも買い求めるべき品質を有するワイン。
90 – 95点:
優れた重奏感と特徴を感じさせる秀作ワイン。一言であらわすとすごいワイン。
80 – 89点:
平均よりやや上位から優良な範囲の品質に収まるワイン。フィネス(「飲み飽きない品の良さ」とでも訳しましょうか?)と好ましい香味が感じられ、欠陥は見当たらないワイン。
パーカーポイント70点台というワインはあまり目にしたことがないので、79点以下の概説は割愛しますね。
ロバート・パーカー(Wine Advocate)公式の採点解釈からすると80点以上のワインを飲んでみると良いように読み取れます。実際90点以上が付いたワインでも手ごろな価格のものは少なくないので、「90点以上、1本¥2,000」程度をひとつの目安に探してみては如何でしょうか。
某大型スーパーのワインECサイトは「パーカーポイント90点以上&¥2,000以下」のワイン一覧ページを設けているようです。某大手ワインEC店舗では「パーカーポイント90点以上セット」なるセット販売サービスもあります。流石です、いずれもワインビギナー思いの商売上手ですね。
酒販店やECサイトでは「PP90」「WA90」といった省略表記をする場合がありますが、ビギナーの方はいずれも「パーカーポイントが90点」と捉えて頂いていいかと思います。PP=パーカーポイント、WA=Wine Advocate誌ですね。厳密にはパーカーさんはWine Advocate誌を完全に手放し2019年春に引退しており、2019年秋頃からミシュラン(!)が100%経営権を握りましたね。後述するDecanter誌がwebで報じていました。現在も公式サイトにはRobert Parkerのお名前は残っています。
パーカーポイント以外にもDecanter誌、Wine Enthusiast誌、国内では国産ワインコンクールやサクラアワードなど、それぞれのやり方でワインを採点評価して消費者さんのワイン選びをサポートしてくれる指標がいくつかあるので上手に活用したいところですね。
これから先たくさんのワインをお飲みになりご自身の価値観が形成された暁にはパーカーポイントから卒業し、さらに自由なワイン選びが楽しめるようになりますね。
さんて!
じんわり
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