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亜硫酸はワインにとって必要か?
本稿は全てのワイン消費者さんにお届けしたい内容です。
全文無料公開ですが「投げ銭」制も採用しています。
まとめ
・ワインは劣化しやすい飲み物
・亜硫酸は優秀、雑菌が増えるのを防いでくれるし酸化も防いでくれる
・「亜硫酸で頭が痛くなる」は都市伝説、アレルギーは?
・適量の亜硫酸がワインをおいしく保つ!
こんばんは、じんわりです。
何故こんなに悪者扱いされるんでしょうか・・・
未だ誤解を受けているように感じます。
亜硫酸のことですね。
本稿では亜硫酸がおいしいワインにとってどれだけ不可欠なものか、是非消費者さんにお伝えしたくて大真面目に綴りました。亜硫酸にかけられた冤罪を晴らしたい。亜硫酸弁護団からのメッセージです。
本稿にご共感頂けるようであれば、twitterなどのSNSで亜硫酸の必要性について呟いて頂ければ嬉しい限りです。亜硫酸に対する誤解から、キワどいワインに手を出してがっかりしてしまう消費者さんが減ることを願っています。
ワインは劣化しやすい飲み物
ワインを造る工程はぶどうを収穫して瓶に詰めるまでですが、この間(厳密には瓶詰後から消費者さんが抜栓するまでの間も)ワインは主に以下2つの危険に晒されます。
・雑菌汚染
ぶどうの房やワインの中で好ましくない雑菌が増えてワインの品質が落ちること
・酸化
収穫から瓶に詰めるまでに必要量以上の酸素に触れてワインの品質が落ちること
これら2つの危険に対してワインは悲しいくらい無力です。いずれもワインのおいしさに対して壊滅的な悪影響を及ぼします。
亜硫酸は優秀、雑菌が増えるのを防いでくれるし酸化も防いでくれる
亜硫酸はその2つの危険からワインを守ってくれます。ひとつだけでなくふたつも重要な役割をこなす、優秀ですね。
亜硫酸は望ましくない雑菌が増えるのを防ぐ
亜硫酸は雑菌の内側に入り込んで雑菌の栄養成分とくっついたり代謝を阻害することで雑菌を苦しめご臨終へと導いてくれます。主に以下のタイミングで亜硫酸が活躍します。
・ぶどうを収穫して望ましい酵母による発酵が始まるまでの間:
悪い条件が整ってしまうと雑菌の温床となるキケンな時間帯ですね。
・発酵を終えてから瓶詰を行うまでの保存期間=いわゆる熟成期間:
その頃にはアルコール度数が高くなっていてワイン造りの初期段階より雑菌は活動しにくいのですが、高アルコールでもしぶとく生き残る雑菌が醸造所内にはいるのですね。理屈上はろ過工程で取り除けるはずなんですが、どういうわけかほんの少し瓶内に忍び込んでいることもあるのですね。彼らはワイン中の僅かな栄養で増殖できますので、悪い条件が整うと勢いづいてワインを臭く不味くしてしまいます。
亜硫酸は酸化を防ぐ
ワインの香りの成分は化学的には非常に脆く儚いため守ってあげなければいけません。
何からか?というと、特に酸素からですね。伝わり易さを重視してメカニズムを極端に端折りますが、過剰な酸素は間接的に香りの成分をやっつけてしまうためワインからおいしい香りが感じられなくなります。それだけでなく過剰な酸素はシェリー酒っぽい歪な味香りの発生原因となりえます(シェリーがダメだという意味ではないのでご容赦くださいませ、一般的なスティルワインのお話ですね)。白ワインの場合、酸化すると色が茶色っぽく変化して見た目の美しさを損ないます。
亜硫酸は強力な抗酸化物質であるため味香りや色の劣化からワインを守ってくれます。ワインボトルの裏ラベルには「酸化防止剤」と書いていることがありますね。まさしくそれが亜硫酸です。
「亜硫酸で頭が痛くなる」は都市伝説?アレルギーは?
亜硫酸の安全性、結論から先に書くと:
1. アレルギー反応のひとつとして頭痛が起こる可能性は考えられなくはないが、軽度のアレルギー反応では頭痛は出ないかもしれない。
喘息の既往が有る人は念のためワインとの上手な付き合い方を考えましょう。
2. 「亜硫酸で頭痛」は都市伝説。
亜硫酸の健康への影響という意味では主に次の2点が議論されるでしょうか。
アレルギー
日本では亜硫酸は「特定原材料」に指定されていない=法律で定められたアレルギー物質ではないですが、ヨーロッパの法律ではアレルギー物質として指定されていますので、少数ながら亜硫酸にアレルギー反応を示す方がいらっしゃるようです。
大昔に国内の医師グループがワインではなく亜硫酸そのものを口にするとどうなるかを報告しています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/47/11/47_KJ00001611312/_article/-char/ja/
亜硫酸にアレルゲンとしての素質はありそうですが、頭痛の報告はないようです。
内閣府食品安全委員会の調査報告の中に、以下の海外調査結果の引用があります。
http://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20170030001
「喘息患者では 10 ppm という少量の亜硫酸塩により症状が惹起されることがあるが、アレルギーに罹患していない人において症状が見られることはまれである。反応を引き起こす量については明らかとなっていない。」
10ppmという数字は一般的にワイン含まれ得る量です。亜硫酸塩として10ppmを基準にするなら喘息をお持ちの方は念のためワインとの上手な付き合い方を考えて頂いた方がいいかもしれません。全く飲まないという判断は最も安全ですし、ひとすすりしてしばらく経ったら体に反応が出ていないか確認する、というやり方もあるでしょうか。
頭痛
「亜硫酸の入ったワインを飲むと二日酔いになる/頭が痛くなる」
いつ・どこからこのストーリーは生まれてきたのでしょうか。
一般の方ならまだしもワインのプロでいらっしゃるのにこの謎理論を信奉する方に出会ったこともありました。「私、亜硫酸の入っているワインを飲むとどうも頭が痛くなるんですが、亜硫酸無添加のこのワインなら二日酔いにならないんですよ!」と薦められてしまい、成り行き上断れなかった私は腹を括って飲みました。お味はもちろん雑菌と酸素が大暴れ、馬小屋臭、酸化臭、硫黄系臭の揃い踏みでした。亜硫酸不在によってワインが臭く不味くなったということですね。
私が知る限りでは亜硫酸と頭痛の直接的な因果関係を強く証明するエビデンスを見たことがないのですね。そのような知見をご存知の方がいらっしゃれば、教えて頂きたいところです。
亜硫酸が原因ではなくアルコール飲料だからアセトアルデヒドが原因で頭痛が起こっているということはないのでしょうか・・・。
アセトアルデヒド以外に頭痛の容疑者がいるとすれば生体アミンでしょうか。生体アミンと呼ばれるグループの中で有名な物質はヒスタミンですね。熟成中の管理が良くないワインや温暖な土地の(pHが高い)ワインには生体アミンのリスクが付き纏うものです。生体アミンは雑菌が生み出す頭痛成分ですから、ワイン中で亜硫酸が効いていれば増えようがないのですね。つまり、亜硫酸が入っているから頭痛がするのではなく、亜硫酸が入っていないから雑菌が蔓延り生体アミンが産生され、頭痛の原因になり得るという理屈ですね。
適量の亜硫酸がワインをおいしく保つ!
極甘口以外のワイン中の亜硫酸含有量は日本の規制上限値350ppmよりもひとケタ少ない数十ppmが一般的でしょう。それでもなお国内外の醸造家さん達は亜硫酸の添加量を減らすべく日々工夫努力をされているように感じます。
ビオディナミと呼ばれる自然農法・思想における旗手のひとり、アントワーヌ・ルプティ・ド・ラ・ビーニュ氏はその著書「ビオディナミ・ワイン 35のQ&A」の中で以下のように述べています。
「とりわけ白の偉大な造り手と呼ばれる人たちは、亜硫酸なしで、テロワールに忠実でミネラル感にあふれ、同時に繊細なワインを継続的に生産することはできないだろうと現段階では判断しています。」
これは白ワインを造る場合、先に述べた雑菌を制圧する機能ももちろんですが、ワインの味香りを守る亜硫酸の機能が不可欠だということを言っているのだと理解します。
ワインの原料にぶどう以外は何も使いたくない/使うべきではないというビオディナミ界隈の人々であっても亜硫酸には一目置いているのだ、ということを締め括りにお伝えしたくて引用しました。
さんて!
亜硫酸弁護団長
じんわり
関連稿:
国内大手メーカーが濃縮果汁から造る亜硫酸無添加ワインは例外として、亜硫酸が使用されなかったワインは多くの場合、不快臭に勝り果実らしさがマスクされたものになってしまうでしょう。
いわゆる「自然派」と自他称される造り手の人々も、そのほとんどは亜硫酸の重要性を理解しているのではないでしょうか。
以降に文章はありません。
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