実録!価格別シャルドネ ブラインドテイスティング
こんばんは、じんわりです。
5月21日は International Chardonnay Day (*) でした。皆さんはシャルドネをお飲みになりましたか?どんなシャルドネでしたか?
(*) Rick Bakasという方が2010年に仕掛けた記念日。氏はNikeでブランディングに従事した後、ワイン業界のマーケティングにデジタル戦略を持ち込んだ方のようです。ソムリエでもあるようですね。
シャルドネというと他の品種に比べると選択肢がかなり多く、値段のバリエーションも¥1,000を切るものから一般の方が驚くような値段のものまで豊富ですね。
今夜はInternational Chardonnay Dayの後夜祭的な趣で「価格別シャルドネテイスティング」をお送りします。
異なる価格の2つのシャルドネをブラインドで利き分けられるか、どちらが高い値段かを言い当てられるか、を試してみるというガチなお遊びです。最後にワインの種類と値段を明かします。
ワイン常習者の方は高みの見物モードで、ワインビギナーの方はワインを購入される際の参考としてお楽しみ頂ければと思います。
ルール
・税別¥1,000未満と約¥3,000のシャルドネ単一ワインをブラインドで比較試飲
・品種と凡その価格帯以外はテイスター(私、じんわり)に知らされない
・3つのグラスに1つだけ異なるワインを注ぐ
・テイスターは1つだけ異なるグラスを判別する
(以下はテイスターがワインの違いを判別できた場合に実施)
・好みのワインが入ったグラスを申告する
・どちらのワインがより高価かを推測する
プロローグ
以前から自身の興味としてやってみたかったこの企画ですが、準備の面倒さや一般に酸化劣化が早い白ワインを二瓶同日に開封することに抵抗があり(コラヴァンを所有していませんので)、今まで手付かずのままでした。5月21日がInternational Chardonnay Dayだったことや、ブラインドテイスティングの介助を買って出てくれる人がいたためやってみることにしました。
この企画を実行する=盲検性を保つには介助者の協力が必要です。介助者に「ひとつは税別¥1,000未満、もうひとつは¥3,000前後のシャルドネ単一ワインを買ってきて。産地とか生産者とかはこだわらないので適当に。買ってきたワインは紙で包んで冷蔵庫の野菜室に隠しておいて。テイスティング直前に別室で待機するのでINAOグラス3つのうち1つだけに異なるワインを注いで。お金は少し多めに渡しておくのでおつりはお小遣いね♪」とお願いしました。
前回の甲州ブラインドと同様に、色の違いでワインを判別できてしまう恐れに備えて、100均購入のペンギンさんアイマスクでのブラインドテイスティングです。
2つの異なるワインに対してINAOグラスを3脚用意して2脚に一方を1脚にもう片方を同量注ぎ、それぞれに乱数表で提示された3桁の番号をラベリングします。乱数を自動生成してくれるwebサイトから814、263、783の3つをグラスにラベリングしました。乱数表を使うのは、グラスの識別番号に特段のバイアスを持たせないようにするためですね。
ラベリングしたグラス3つの画像、テイスティング完了後に撮影
比較試飲
3つのグラスワインの試飲時温度は15℃でした。冷蔵庫の野菜室に入れていたせいか、瓶内品温を測定した前回甲州のときと異なりグラス内品温を測定したせいなのか、甲州ブラインドのときより6℃高い温度でのテイスティングです。
3つのグラスいずれからも特段の不快臭味は感じられませんでした。
番号814、263、783のうち263が仲間外れであると感じました。つまり、814と783は同じワインと感じました。
テイスティング後速やかに記憶を辿りメモ書き
字が汚い&産地を激しくハズしています
今回は判断に悩みました。上立ちの香りでは814が仲間外れではないかと疑ったのですが(詳細後述)、口中の香味から263が異なると判断しました。
814、263、783はいずれも口中にパイナップルやトロピカルフルーツの強い香りを感じたので違いがわからず一時混乱しました。しかし、263はアタックにピリピリした感触を覚えたため亜硫酸添加量が多めでは?と疑います。また263の余韻は良くも悪くも長くなく、口中のボリューム感も814と783に比べ大人しい印象を持ちました。814、783は共通して263には感じられないやや強めの苦みと杉のような香りの余韻を覚えました。
上立ちの香りで814(ボトルからのひと注ぎ目)と783(ふた注ぎ目)が異なると感じたのはもしかすると大久保順明さんという方が記されている以下の経験則が関係しているかもしれません。私の味覚嗅覚がブレてないという前提ですが(笑)
・1杯目のグラスのワインは、苦味を強く伴い、香りの立ちが悪い。
・2杯目のグラスのワインは、苦味は多少感じられる程度に減少するが、香りの立ちはあまりよくない。
・3杯目のグラスのワインは、苦味はなく、心地よい甘味・酸味があり、さらに香りの立ちがよい。
・4杯目のグラスのワインは3杯目のグラスのワインと全く同様の香味。
答え合わせ
ワインを注いだ介助者に確認したところ、「グラス番号814、263、783のうち263が仲間外れである」は正解でした。今回は途中迷いがあったのでホッとしました。それでは次のステップに移りましょう。
(以下はテイスターがワインの違いを判別できた場合に実施)
・好みのワインが入ったグラスを申告する
・どちらのワインがより高価かを推測する
どちらが好みか?
正直、第一印象の好みは263のワインでした、第一印象では。上立ち香のわかりやすさと、口中での滑らかさ、全体的なバランス感が814、783より優れていると感じました。よくデザインされているなという印象を受けます。
ブラインドテイスティングでのコメントを終え執筆している現在、時間をかけてぬるくなった263を飲んでいますが、口中でテルペン類(花、柑橘など)の香りが良くも悪くも支配的になってきていて、不快ではないものの少しバランスを欠いてきたなという印象を持ち始めています。
どちらが高価だと推測するか?
ブラインドテイスティングを終えたところで、「814および783がより高価」だと介助者に伝えました。経験上そう感じたためです。主な理由は以下です。
・814の上立ちにほんの少し酸化臭を感じ(=樽熟成ゆえ?)、263に感じなかった
・263を口中に含んだ際にピリピリ感(多めのSO2?)を感じた
・許容範囲ではあるものの、814と783に数千円程度の樽熟ワインにありがちなインバランスを感じた(今回はそれを杉の香りと表現しています)
正解は以下。
814 → AOCブルゴーニュ 税抜き¥2,780
263 → チリ 税抜き¥925
783 → AOCブルゴーニュ 税抜き¥2,780
2つのワインに感じた特徴を一覧にしました。一部相対比較を含みます。
ブルゴーニュのシャルドネは翌日に飲む予定です。どちらを先に飲むか迷ったのですが、¥3,000円ワインが一日程度の酸化的保存に耐えうるかを体感してみようと思った次第です。90ml程度目減りしたボトルをAntiOxでキャップし、一晩冷蔵庫におきました。
(以下、翌日追記)
翌日テイスティングしたところ、香味の強さは良い部分も良くない部分もやや弱まっていたように感じます。アンカーとなる比較対象がないので弱く感じている可能性もありますし、酸化の影響を緩やかに受けた可能性もあるかもしれません。とはいえまだまだ十分に楽しめる品質でした。ところで、AntiOxは効いているのでしょうか(笑)
おわりに
今回ブラインドテイスティングした約¥1,000と約¥3,000のワインに違いは感じられました。しかし、一般消費者さん(特にワインビギナーさん)の目線で飲むと、両者に価格ほどの大きな差異はないと言えるかもしれません。2本とも十分に美味しいということですね。
とは言え、詳細な香りの種類や余韻、香味の時系列的変化といったワイン常習者さんが重視されるであろう点においては高価な方のワインに軍配があがるように感じられました。
幣ブログでよく引用するワインジャーナリストのJamie Goode氏のブログ投稿”Five things every wine consumer should know”(ワイン消費者さんが知っておきたい5つのこと)でも言及されていましたが、ワインの嗜好は経験を積むにつれて変わってくるというのが一般論でしょう。それゆえ、ワインビギナーさんとワイン常習者さんそれぞれがおいしい/価値があると感じるワインの酒質には微妙な、しかしある意味大きな違いがあるように思います。
結論
¥1,000のワインでもおいしいものを選べば¥3,000のワインに遜色ない満足が得られる。ワインの好みは経験の積み重ねによって変わってくる。
お酒はハタチになってから、さんて!
じんわり
引用:
https://www.bakasmedia.com/about
https://www.foodwatch.jp/secondary_inds/winedist/12248
https://wineanorak.com/2020/05/15/five-things-every-wine-consumer-should-know/