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ワインのおいしさ方程式


本稿はワインビギナーの方向けに作成しました。
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まとめ
(私の持論ですが)ワインのおいしさは以下の3つの要因の掛け算
で決まる

1. ワインの中身
2. 飲むときの環境
3. 飲む人のコンディション

ワインのおいしさ方程式:
ワインのおいしさ = ワインの中身 x 飲むときの環境 x 飲む人のコンディション


こんばんは、じんわりです。

 あなたにとっての「おいしいワイン」とはどんなワインでしょうか。良いとされるワイン≠おいしいワインではない場合が往々にしてあるのではないでしょうか。「おいしい」は人が感じる不確かなものなので、その時々で変化があるように感じます。
 そんな「おいしい」について少しだけ考えを巡らせてみて、よりおいしく楽しいワイン時間を過ごす参考にして頂ければ嬉しい限りです。


ワインの中身
 読んで字の如くです。ワインの味香りがどうか、「臭くない」、「苦くない」、場合によっては「酸っぱくない」か。不快な要素がなければ自然とワインの良さは飲み手に伝わるものです。


 また、ワインの外観=見た目の色も人間の味香りの認知に影響を及ぼすようです。そのことを証明する面白い研究が海外にありました。
 見た目は赤ワインそっくりの白ワインを、ワインの専門家にテイスティングさせて評価・コメントを求めます。そうすると専門家たちはその白ワインを赤ワインと誤認した=赤ワインに使用される用語でワインを表現したというのです。プロがワインを表現する場合、赤と白ではある程度表現用語が異なるのですね。このあたりは別稿で綴っています。

飲むときの環境
 ここでは飲み手の気持ちを良くも悪くも変えてしまう要因を書きます。たとえば、良いワインでもあまり好きでない人と飲んでもおいしく感じないことってありませんか。ポジティブな相手との席であっても、それがお接待であればワインよりも賓客が楽しんでくれているかどうかのほうが気になって仕方ないものでしょう。逆に彼氏彼女奥さん旦那さんと仲良く飲む時間は、たとえ1本¥1,000未満のワインでも幸せに感じるかもしれません。

 「飲む場所」も意外に大きな影響を及ぼすかもしれません。「家飲みが一番リラックスしていて好き」と思う人もいれば、「ちょっと良いレストランでお店の雰囲気も含めてワインを楽しみたい」という人もいらっしゃるでしょう。「ワインをメインに少しつまむ派」や「料理とのペアリングが大事!派」、「ワインバーで静かに飲みたい派」と「賑やかタパス派」など、ワインを飲む環境や付帯条件のお好みはひとそれぞれでしょう。外飲みの場合、お店の方の愛想の良し悪しや対応によってもおいしかったワインが急にマズくなることもあれば、平凡ワインがおいしく感じる時もあるのではないでしょうか。

 枝葉の部分ですが、ワインの瓶、エチケット、ワイングラス(=見た目の情報)、道具としてのワイングラスの素材や形(=味香りの変化)もそれなりに影響するはずです。ワイングラスの素材や形はなかなか侮れない外部要因だと感じています。(別稿:グラス選びでワインの感じ方が変わる件)

 ワインを飲む前に与えられる「情報」を広い意味で環境因子と捉えた場合、ワインの価格に関する事前情報もワインの美味しさに影響を与える可能性があるでしょう。これについても面白い実験があります。
 5ドルのワインを2つのグラスに注ぎ、被験者には片方のグラスのワイン価格を真実の5ドルと伝え、もう片方の同じ中身のワイン価格を45ドルと偽って伝えます。試飲前にそれら価格情報を刷り込まれた被験者たちは45ドルのワインの方により大きな喜びを感じるという試飲後評価を下すのです。
 この実験ではさらに、真実の価格が90ドルであるワインに対して偽りの10ドルと真実の90ドルという価格情報を事前に伝え、ワイン試飲後の選好度を被験者に問うています。中身は同じであるのに被験者たちは90ドルと告げられたワインにより大きな喜びを感じるという結果に終わりました。
つまり、ワインを飲む前に与えられる情報が飲み手のワインに対する印象を大きく左右するということですね。


飲む人のコンディション
 ワインのおいしさにはこれが最も影響するように思います。何故か?・・・おいしいかどうかを感じるのはワイン自身でも同席している人でもなく、飲み手ご自身だからです。

 例えば体調が悪い時、もっと詳しく例えば風邪で鼻が詰まっているとき、体がしんどい挙句にワインの香りが全く分からず楽しめる要素なしですね。ワインは嗜好品=生きるために必要とはされないものですので、風邪よりももっと深刻な健康状態だとワインを楽しむどころではないでしょう。重大な悩み事があるときも普段よりおいしく感じられないかもしれません。

 「酒がマズくなる」という表現がありますが、まさに機嫌が悪くなった時に出てくるセリフのひとつではないでしょうか。例えば飲食店で大切な人やお友達と気分良く飲んでいたのに、店員さんに塩対応を頂いてしまったときなど、今までおいしいと感じていたワインが急に味気ないものに感じられるでしょう。ワインに罪はないんですが・・・。機嫌が悪い時にワインを飲むと機嫌がよくなる人もいらっしゃるでしょうか。それはワインのチカラということで前向きに捉えておきましょう。

 体がワインの味香りを分別できなくなってくると、どんなに高いワインを飲んでももう感動はないかもしれません。3次会まで続くような深酒大会終盤で飲むワインや、いろんな種類のワインを短時間で本気で嗅ぐ・飲むときなどでしょうか。後者の荒行はワインビギナーの方にとってはまず無縁の所業とは思います。数十種類のワインを一気に利くとプロであっても鼻・舌・脳がだんだん働かなくなるものですね。

 ワインの味と香り、そこに流れる時間を最大限楽しむには、ご自身の心身のコンディションを整え、その夜運命を共にするボトルを大切な人とゆっくり楽しむ、2本目に行きたい気持ちはぐっとこらえてやわらぎ水を飲んで寝る、が賢い選択でしょうか。外飲みの場合ならボトルではなくバイザグラスでご自身のキャパに合わせていくつか試してシェアするのもいいですね。

結論:
「ワインは健康な心と体で、好きな人と一緒に飲むのが一番おいしい」


さんて!

じんわり

参考文献:
Morrot et.al., "Color of Odors", Brain and Language, 2001
Plassmann et. al., “Marketing actions can modulate neural representations of experienced pleasantness”, PNAS, 2008

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