ワインの香りは訓練すれば言葉にできる
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まとめ
ワインの香りを言葉で表現できるようになるには・・・
・ヒトはワインの味香りをどのように感じているのか知る
・ワインの香りの表現用語を知る
・ワインを飲んで香りを感じたときに頭の中で何の香りなのかを考える
・最初の1杯だけ本気で香りを取りに行く
・とにかくワインを飲んで訓練する
とはいえ
・香りの表現は自由、他人が決めたルールに縛られ過ぎる必要はない
・香りを表現することに囚われ過ぎず、香りを感じて楽しむことを大切に
こんばんは、じんわりです。
先日ワインビギナーの方から「ワインを嗅いでも何の香りかわからない・・・。ワインの香りを言葉で上手に表現したいけど、どうすれば良いかわからない。」というご相談を頂きました。なぜワインの香りを言葉にしたいのかと聞くと、「ワインの香りを上手に言葉にできればワインを飲むのがもっと楽しくなりそうだし、自分のワインの好みがわかるようになってワイン選びがもっと楽しくなるんじゃないかと思うから。」とのこと。
なるほど、確かに「ワインはおいしいから好きだ。」よりも「〇〇の香りが感じられておいしい。〇〇の香りが感じられるワインが好きだ。」の方がより具体的にワインを形容できているので、ワインの好みを明確にする=好みのワインを選ぶ際にはより具体的で役に立ちますね。
ワインの楽しみというものは飲んで味わう楽しみだけでなく、新しい「発見」をする楽しみも含まれ、しかもそれが大きなウエイトを占めるように思います。ご自身がお感じになったワインの香りを言葉にできるということは、新たな「発見」や価値観の「創造」という楽しみに繋がって行くでしょう。その意味ではワインの香りを言葉で表現することに大賛成です。
ではどうすればワインビギナーの方がゼロからワインの香りを言葉にできるようになるのか?ですよね。そこに至るまでのステップを仕組み化してお伝えしようと思います。あくまで方法論の一例ですがご参考になれば。
ヒトはワインの味香りをどのように感じているのか
回りくどい作業ですが、まず最初に「ヒトはどのようにワインの味香りを感じているのか?」について確認していきましょう。「香味検知器」としてのヒトの取扱説明書を読むイメージでしょうか。取扱説明書を読めば我々がもつ「香味検知機能」を上手く使いこなすことができるだろうという算段です。
味香りの感知認知に関しては未だ未解明の部分もあり諸説や議論も多々あるようですが、ワインの味覚認知に関するこれまでの重要な研究をとっつきやすい形で網羅的にまとてくれている「ワインの味の科学」(Jamie Goode著、伊藤伸子訳)という本を参考にしつつ、私見も交えてかなり簡略化して書いてみます。
香りを認識する流れ
鼻にある受容体に香りの成分が触れる
↓
脳に香り成分の信号が伝わる
↓
脳がヒトに「香り」を認識させる
我々が香りを感じる経路は2種類
1. グラスから立ちのぼる香り
2. ワインを含んだ後に口の奥から鼻に抜ける香り
1と2それぞれの経路で感じる香りは、ワインの色調=見た目の影響を受けている可能性がある
(例:黒い不透明のグラスで飲むと赤ワインか白ワインの香りか判断がつきにくい)
2の経路で感じる香りはワインを口に含んだときの感触、味などの要素とあわせて脳で一括処理され、(本来1つでない刺激情報が)ひとつの「香り」として感じられる可能性がある
2の経路で感じる香りは唾液や口腔内の温度などの影響も受けている可能性がある
これらから1,2それぞれの経路から感じる香りは同じワインに起因する香りではあるものの、異なる趣きの香りとして認知される可能性があるということですね。プロのテイスティングでも上立ちと口中の香りは分けて評価・コメントしていますね。
ワインの香りの表現用語
ワインの香りの表現用語はある程度標準化されているものがあります。その歴史的経緯については明るくありません。ワイン業界のベテランさんが本稿をお読みでしたら是非教えて下さい。
記事ボリュームの都合上、詳細な表現用語の分類については別の記事で赤ワイン編と白ワイン編に分けてご紹介しますね。先程引用した「ワインの味の科学」の中でも触れられていましたが、ワインから何らか嗅ぎ覚えのある香りを感じ取っても、その香りが何であるかをなかなか言葉にできない、思い出せないということはワインテイスティングにおける一種の”あるある”ではないでしょうか。例えば、全くワインの香りの表現用語をご存じない方の「脳」が白ワインの中に桃の香りの成分を感じ取りシグナルを送ったとしても、その方は「この香り、覚えはあるけどなんだっけ?もう少しで思い出せそうなんだけど・・・」という感覚に陥るいやつですね。親密ではない知人とばったりお会いした際に名前を思い出せないあの感覚にも似ていませんか。
ワインの香りの表現用語を事前に把握しておく、もしくは脳内にインストールしておくとそんなときに香りの記憶を呼び覚ましやすいものです。
ワインを飲んで香りを感じたときに頭の中で何の香りなのかを考えること
ワインの香りの表現用語を把握した次のステップとしては、実践あるのみですね。
さっそく今夜開けるワインで実験です。たとえの表現用語=カンペを事前に用意しておいたとしても、はじめのうちはなかなか感じた香りの種類を言葉に表せないことが多いと思います。まずはそこで諦めず思い出す試みをやってみましょう。「ん?嗅ぎ覚えのあるこの香り、表現用語の中のどれだろうか?」ピックアップした各用語(例:柑橘、桃など)の映像を頭の中に浮かべながら。
それを続けることでTip-of- the-nose現象(馴染みのある香りを言語化できない現象)から脱却して香りを認識することができるようになってきます。
最初の1杯だけ本気で香りを取りに行く
ただ楽しくワインを飲みたいだけの方にとって味覚・嗅覚・脳を最大限に働かせて香りを言語化する作業は非常に煩わしいことでしょう。楽しむためにお金を出してワインを買ったのに、楽しいひとときがいつの間にか面倒な作業の時間にすりかわっているのも本末転倒ですね。
それならば、ワインの香りを本気で感じて言語化する作業は最初の1杯に限定してみてはどうでしょうか。2杯目以降は何も考えずに気楽に楽しく、料理と会話とワインが織りなす時間を楽しむ。嗅覚は空腹時に研ぎ澄まされると言います。その意味でも1杯目限定というのは理にかなっていませんか。
とにかくワインを飲んで訓練する
ここまでのプロセスを経ればあとは、このサイクルを回して行くだけです。ひたすら反復していけば、ワインの香りを言葉にできるようになってくるものですね。ワインを飲む飲めば飲むほどワインのことを理解でき、ワインと仲良くなれると思います。目利きの力も養われるでしょう。そのプロセスこそ楽しんで頂きたいところです。
香りを言語化することは知識をひけらかす目的ではなく・・・
あれこれ書きましたが、特にワインビギナーの方にお伝えしたいのは、ワインを楽しむ際に決められたルールに従う必要はない、ということですね。他人様が決めたルールに縛られて汲々とするくらいなら、ご自身が感じるままに気軽に香りを言葉にする方が健全ですし、そのほうがよりワインを楽しめると思います。むしろ言葉にする必要もないでしょう。香りを言語化する目的は知識をひけらかすためではなく、ご自身のワインの好みを言語化できるようにすることで上手にワインが選べるようになるため、ワインを通して新しい発見を楽しめるようにするため、ということですね。
参考資料
Jamie Goode著、伊藤伸子訳「ワインの味の科学」
続いて、白ワインと赤ワインの代表的な香りについて綴っています。
さんて!
じんわり
以降に文章はありません。
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