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ワイナリー訪問記〜佐藤果樹園〜

信州たかやまワイナリーの見学、朝日屋亭でのランチを終えて次に向かったのは、高山村役場の近くにある佐藤果樹園さんの畑へ。
アポイントのメッセージのやり取りをしているだけでも人柄が滲み出てくる、佐藤和弘さんが代表を務める葡萄園。

自分の身の回りではこれまで「ワイナリー」の名前ばかりが広まっているような印象(もちろん自分もその一人)があったけど、”ワイン”ができる前には当然”ブドウ”があって、その”ワイン用ブドウ”を栽培してワイナリーに届けている農家さんの存在を恥ずかしながらこれまではあまり気にかけたことがなかった。
そんな”ワイン用ブドウ”の土台を作っている方のお話はすごく楽しみだった。

とはいえ、佐藤果樹園さんで育てているのはワイン用のブドウだけではなく、生食用ブドウやリンゴの栽培に、ワイン、シードルの醸造もされている。

色づいてきたアリアニコ


佐藤果樹園 代表・佐藤和之さん

佐藤果樹園さんは、須坂市と高山村に畑を持つ、家族経営の葡萄園。
代表の佐藤和之さんは2006年に「高山村ワインぶどう研究会」を立ち上げ、ワイン用ブドウの栽培に取り組んでブドウの品質の向上を担った第一人者。ブドウ園は、農薬をできるだけ使わず、有機肥料のみで栽培をされているとの事。

①佐藤果樹園さんの畑


2箇所にある畑は、高山村には540m、須坂市で350m程の高地で栽培を行なっている。
長野の気候は、比較的湿度が低いとはいえ、時期によっては夜に霜害の影響なども出るそうで、畑を2箇所の区画で育てることでリスク分散になっているとの事。

畑で聞いたお話で印象的だったのは、今時期のような雨が多くなってくるとやはりベト病の影響を受けやすいとの事。
しかし、”ボルドー液”と言われる硫化銅と消石灰を合わせた液体を撒いて対策するのがソムリエの知識として一般的だけど、佐藤さんはボルドー液を使わずに栽培をされていた。
ボルドー液は病害は防げるものの、散布されたブドウは本来の香りを阻害してしまうこともある為、ブドウの良さを生かす為にも散布するものも選んでいるとの事だった。
とはいえ、やはり畑をやっていると病害にかかってしまうものもあり、教本でしか見たことのないベト病を実際に見せていただくというのはとても貴重な経験だった。
(ちなみに、ボルドー液自体は有機JAS規格にも使用が認められている薬剤の一つ)

佐藤果樹園さんの畑のブドウ
とあるワイナリーさんのブドウ。
ボルドー液の散布された白い斑点があるのがわかる。

②佐藤さんのブドウ造り

特に多い品種はシャルドネ。それ以外にもピノグリやメルロー、リースリングなども。
特徴は佐藤さんご自身が好きなイタリア系の品種も多く、アリアニコ、サンジョヴェーゼやネッビオーロも。
ただ、”好きだから”というわけではなく、今は各地にワイナリーがどんどん増えていて、同じ品種だけを育てているとどうしても差別化が難しくなることから栽培を始めたとの事。

家族を支えながらワイン造りをしている以上、趣味の延長だけでブドウ造りをするわけにもいかず、工夫をすごくされていた。
傘掛け作業には、一緒に栽培をしている家族の負担を軽減するためのに垣根にはビニールシートを被せる事で作業効率をあげていたり、単価の高いシャインマスカットなど生食用のブドウも育てている。

醸造に関しては、(この後にも伺った)ブドウを卸している”カンティーナ・リエゾー”さん、日本ワインのコンサルティングを行う”マザーバインズ”さんの長野醸造所でワイン造りも行っている。
この日の時点ではまだ佐藤さんのワインを飲めていないが、スパークリングを購入させてもらったので、早く抜栓したい所、、、(飲みたい…)

まとめ

ストイックに、無農薬で造っているワインが信仰されやすいワイン業界だと思うが、丁寧に安定供給できるブドウを作る為に、というのもそうだし、そもそもブドウ造りをするのも”生活”があってのこと。
生食用のシャインマスカットは「畑に1000円札がぶら下がっているようなもの」というほどに、生食用のブドウは高値で買い取ってもらえるし、逆にワイン用ブドウはコストがかかる。
生活のために生食用ブドウを育てる方が経営的にも楽になるであろうに、それでもワイン用ブドウを作り続ける佐藤さんはとても格好良かった。

何よりも佐藤さんとお話をしていると、人柄の柔らかさが非常に印象的でした。思いやりにあふれている方で、見学に伺った私たちにもとても気遣ってくださいました。
ただ柔らかい人柄というだけではなく、地域のワイン用ブドウの推進を担った方でもあるし、これからのために品種の植樹にも手がけていたり、強い情熱を感じさせられました。

ちょうどもうすぐブドウ収穫が始まる時期ということもあって「ブドウを食べに来て」と収穫のお手伝いにも声をかけてくださいました。
せっかくなのでこのシーズン中にはもう一度お邪魔ができたらなと思う。

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