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ワインソムリエ講座68/ジュラ地方

1. ジュラ地方の概要

ジュラ地方はフランスの東部、スイスとの国境に位置し、フランシュ=コンテ地域圏に属する。ブルゴーニュ地方の東側にあり、アルプス山脈の麓に広がる。面積は小さいが、独自のワイン造りの伝統を持ち、ユニークなスタイルのワインを生産している。

この地域の気候は大陸性気候に分類され、寒暖差が大きい。冬は厳しく、夏は比較的温暖。年間降水量は1000mm前後で、湿度が高い。そのため、カビや病害のリスクが高く、有機栽培が難しい地域でもある。

土壌は主に石灰岩と泥灰岩で構成され、ワインにミネラル感を与える。特に、「ブルー・ド・ジュラ」と呼ばれる青みがかった泥灰岩が特徴的で、ワインに独特の風味をもたらす。

2. ジュラ地方のブドウ品種

ジュラ地方では、主に5つのブドウ品種が栽培されている。

2.1. 白ブドウ品種
• サヴァニャン(Savagnin)
ジュラ地方を代表する白ブドウ品種。フィノ・シェリーに似た「ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)」の原料となる。酸が高く、ナッツやスパイスの風味を持つ。
• シャルドネ(Chardonnay)
世界的に有名な品種。ジュラ地方では「メルキュリエ」とも呼ばれる。ブルゴーニュのものと比べて、よりミネラル感が強く、酸味がしっかりしている。

2.2. 赤ブドウ品種
• プルサール(Poulsard)
地元では「プルサール」、AOCによっては「プルーサール(Poulsard)」とも表記される。色素が薄く、明るいルビー色のワインを生む。香りはイチゴやバラのように華やか。
• トゥルソー(Trousseau)
より色が濃く、しっかりしたボディの赤ワインを生む品種。スパイスや黒系果実の風味が特徴的。
• ピノ・ノワール(Pinot Noir)
ブルゴーニュと同じ品種だが、ジュラではやや軽やかで酸が高い。単一品種で造られることもあるが、ブレンドに使われることが多い。

3. ジュラワインの種類

ジュラ地方では、ユニークなワインが多く造られている。その中でも特に有名なのが「ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)」と「ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)」である。

3.1. ヴァン・ジョーヌ(Vin Jaune)
• 「黄ワイン」とも呼ばれる、ジュラ地方を代表するワイン。
• サヴァニャン100%で造られ、6年以上樽熟成させる。
• 熟成中に表面に「ヴォワル(voile)」と呼ばれる産膜酵母の層が形成され、独特のナッツやカレーのスパイスのような香りを生む。
• シェリーと似た製法だが、酒精強化されない。
• 特別なボトル「クラヴラン(Clavelin)」に詰められ、容量は620ml(通常の750mlのボトルより少ない)。これは、熟成中に蒸発して減る分を考慮したサイズ。
• 代表的なAOC:「シャトー・シャロン(Château-Chalon)」

3.2. ヴァン・ド・パイユ(Vin de Paille)
• 「藁ワイン」とも呼ばれる甘口ワイン。
• 収穫したブドウを藁の上や風通しの良い場所で乾燥させ、水分を飛ばし、糖度を凝縮させる(約3ヶ月間)。
• その後、ゆっくり発酵させ、樽で熟成。
• 蜂蜜やドライフルーツの濃厚な甘みが特徴。
• 代表的なAOC:「コート・デュ・ジュラ(Côtes du Jura)」

3.3. クレマン・ド・ジュラ(Crémant du Jura)
• シャンパーニュ方式で造られるスパークリングワイン。
• 主にシャルドネが使われるが、ピノ・ノワールやプルサールもブレンドされることがある。
• すっきりした酸味とミネラル感が特徴。

3.4. マクヴァン・デュ・ジュラ(Macvin du Jura)
• ジュラ地方の酒精強化ワイン(ヴァン・ド・リキュール)。
• ワインにブドウの蒸留酒(マール)を加えてアルコール度数を高め、発酵を止める。
• 甘口で、食後酒として楽しまれる。

4. ジュラ地方の主なAOC

ジュラ地方には7つのAOCがある。
• シャトー・シャロン(Château-Chalon) … ヴァン・ジョーヌ専門
• アルボワ(Arbois) … ジュラ地方最大のAOCで、全種類のワインを生産
• レトワール(L’Étoile) … 白ワインが中心で、ヴァン・ジョーヌの名産地
• コート・デュ・ジュラ(Côtes du Jura) … 広域AOCで、様々なワインが造られる
• クレマン・ド・ジュラ(Crémant du Jura) … スパークリングワイン
• マクヴァン・デュ・ジュラ(Macvin du Jura) … 酒精強化ワイン
• マルヌ・ブルー(Marnes Bleues) … 比較的新しいAOC

5. 料理とのペアリング

ジュラワインは独特の風味があるため、ペアリングが重要。
• ヴァン・ジョーヌ × コンテチーズ(特に熟成タイプ)
• ヴァン・ド・パイユ × フォアグラ、ブルーチーズ
• クレマン・ド・ジュラ × オイスター、軽めの前菜
• プルサールの赤ワイン × ローストチキン、鴨肉

6. まとめ

ジュラワインは、フランスの中でも特にユニークなワインを生み出す地域である。特にヴァン・ジョーヌやヴァン・ド・パイユは世界的にも珍しいスタイルで、ワイン愛好家にとって興味深い存在だ。小規模な生産者が多く、ナチュラルワインの流れも強まっているため、これからさらに注目される可能性が高い。

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