『浮世の画家』カズオ・イシグロ
『浮世の画家』は、イギリスの小説家カズオ・イシグロの2作目の長編作品です。
個人的にカズオ・イシグロの小説ですごいと思うのは、毎回新しいテーマや舞台を設定して執筆している点。同じ作家が書いたとは思えないくらい、毎回新しい試みにチャンレンジされているのを感じます。とはいえ、どの作品も心にぐっとくるものがあり、彼の小説はとても好きです。
本作を含めて、初期の2作の長編は戦後の日本を舞台にしています。カズオ・イシグロは幼少期までは日本(長崎)で生まれ育ち、その後父親の仕事でイギリスへ移住しました。日本で過ごした当時の記憶や体験なども総動員して、イギリスにいながらも、日本を舞台にした小説を描いたのかもしれません。『浮世の画家』は、過去に過ちを犯した人への優しいまなざしを感じる小説でした。