愚かな人間と怪人
「人間とは愚かなものです……」
怪人はビルの屋上で人間達を見下ろしながらそう言った。
「自分たちの生きやすいように自然を改造し、自分たちが飢えないように動植物たちを管理し、はたまた個人が得をするために人間同士で争いあう……この地球で最も愚かで救いようのない生き物です。そうは思いませんか、そこでコソコソしているあなた」
怪人はそう言うとくるりと後ろを見る。
そこには、怪人に向けてリボルバーを構えている一人の人間がいた。
しかし、その人間は自分の存在が怪人にばれても顔色一つ変えずに怪人の問いに答える。
「そりゃ、他の生物から見たら人間が愚かなのは当たり前のことだろうよ」
人間はその言葉を卑下的に言うのではなく、むしろそれを誇りに思っているような言い方をしていた。
「ああそうさ、人間は何不自由なく生きられる環境がそろっていてもその先を目指そうとする。そこに行くためなら、自然も、他の動物も、同じ人間達さえも犠牲にするだろうよ。
でもなぁ、だからこの今の人間の技術がある!文化がある!!繁栄がある!!!こんなことはこの地球上に住んでいるどの生物にもなしえることは出来ない」
そうして人間は高らかに笑いながら怪人にこう言った。
「人間の愚かさはほかの生物にはない、強みなんだよ」
その姿は、人間という種に、人間だけが持つ愚かさに、陶酔するようの物だった。
そんな人間の姿を見て怪人は明らかに不機嫌な顔を見せる。
「あなたは特に愚かな人間ですね……貴方は私がこの手で処分してあげます」
「いいねぇ、一回こんなスリルのあることがしてみたかったんだ!」
そうして両者は激突するのであった。