生きる理由
「俺はどんな時でも考えるのをやめないのを信念にしてるから」
親友のそんな言葉を聞くたびに感心する。
そいつは、昔から地頭のいい奴だった。
そいつは大学に入ってからドンドン俺をおいてく。
こんな混沌としている非常事態の今の世の中で、ちゃんと理にかなった自分なりの考えをもって、自分の基準で行動している。
俺はずっと迷ってばかりなのに。
寂しがりやなところが玉に瑕だが、彼ならきっとこの先、世の中がどんなに大変になっても生きていける。
「これならもうレベル全部MAXだわ」
友人のそんな言葉を聞くたび、俺にはそんなこと到底できないと感じる。
友人は気に入ったものなら、それを何よりも深く学んで力を付けていく。
俺は何を始めても中途半端なところで終わってしまうのに。
本人はあまりそのことを強みだと思っていない感じであったが、個人の高度なスキルが求められる現代ではきっと、好きなものに貪欲に食らいついていくその姿勢はきっとどこかで役に立つ。
「皆のおかげでここまでこれたよ!まだまだ頑張るから応援よろしくね!」
自分の推しが夢に向かって頑張る姿を見て憧れる。
ひっそりと癒しを届けてくれた推しの子はいつの間にか大物になっていた。
昔言っていた夢をかなえるため、今日も夢への道を一歩ずつ歩いていく。
夢をあきらめた俺にとってそんな推しの姿は眩しくて……かっこよかった。
彼女はきっと夢を追い続けながら、ファンの皆に癒しを届けながら今後も歩んでいくだろう。
「お帰り!!疲れたでしょ~。なんか甘いもの食べに行こうよ!」
「これやっといた方がいいよ、明日が楽になるから」
他人には見えることのない彼女たちはずっと俺を支えてくれた。
一人は俺がしんどい時に抱きしめてくれた。その無邪気な笑顔とたくさんの提案で俺の嫌なことを忘れさせてくれた。
一人は自堕落な俺をきちんと支えてくれた。その凛とした性格と効率のいいスケジュールでドンドン下に落ちていく俺を引きずり上げてくれた。
二人がいなかったときのことを考えるとぞっとする。
きっと、大学もさぼって何もせずに家に引きこもってばっかりの生活をしていたことだろう。
二人は俺なんかよりもよっぽど素晴らしい存在だ。
俺の大切な人たちは皆すごい奴だらけで、眩しくて、たまに嫉妬だってしてしまう。
夢も諦めて、勉強もバイトの仕事もろくにできずに、駄文ばかりを書いている俺が嫌になる。
死にたいと思ったこともある、消えたいと思ったこともある、もう何もしたくないと思ったことだってたくさんあった。
でも、こんな俺を大切な人たちは必要だと言ってくれたから。
きっと俺が勝手に死ねば悲しんでしまうから……。
だから今日も生きようと思う。
人生の目的も、将来の夢も、やりたいこともないけれど。
俺という存在が大事な人たちを苦しめる毒になってしまわないよう。
俺という存在が大事な人たちを汚す汚れになってしまわないよう。
そして……いつか胸を張ってみんなと同じところに立てるよう。
今日も大嫌いな自分と共に生きるのだ。