常識を叩いて砕く
「自分の世界観を小説にして表したい」
俺はポツンとそんな愚痴をこぼす。
「じゃあ、書けばいいじゃない」
同居人の彼女はそう言葉を返す。
「やってみたけど小説っていうには少なすぎる文字数しか書けなくてさぁ」
やっぱり自分に小説を作るのは無理だと考える。
「超短編小説ってことにすればいいじゃん。俳句に比べれば十分文字数は多いんだし」
彼女はポテチをつまみながらそんなことを言う。
随分めちゃくちゃなことを言われた気がするが、無理に文字数を増やして書くよりその方がよっぽど自分の創作活動がはかどりそうだ。
「あ、でもだめだわ。おれ語彙力皆無だわ」
語彙力ないのに文学作品作るなんて無茶苦茶だな、やっぱ俺には無理だわ。
「別にいいんじゃない?語彙力の乏しい人間が何かを伝えたくて必死に知恵を絞って書くわけでしょ。それはそれで味が出るでしょ。私はそんな作品見てみたい」
彼女はコーラを飲みながらそんなことをつぶやいた。
そう言われてしまうと、なんだか俺でも出来そうな気がする。
「あんたは、常識に囚われすぎだよ。自分の趣味なんだから自分のやりたいようにめちゃくちゃやればいいの。私だったら全部ギャル語で書いた川柳を20句投稿する」
「何それ、ちょっと見てみたい」
俺がそう言うと彼女はドヤ顔をしながらコーラを飲み干すのだった。