エレベーターホテル⑥
チン、と鈴の音が遠くで聞こえた。濁った響きがその経年劣化を伝える。エレベーターが到着したのだろうか。
アレクサンドラは濡らしたタオルを僕の額に乗せて優しく微笑む。ホテルのどこかの部屋で僕はベッドに寝かされていた。淡い日差しがまだ昼間であることを告げる。鳥の声。時計の秒針。時計の方へ目をやると時刻は13時。地震の影響が全くないホテルにいるという事実が僕を混乱させた。混乱させたが、僕はそれを受け入れた。少なくともアレクサンドラがいることで安心できた。彼女はどうなったのだろう。ま