出場数と得点数のトータルを比較して選手のモチベーションを向上させた鳥取・高木監督の手法
Jリーグ公式サイトの試合情報ページには、それぞれ「見どころ」「試合情報」「戦評」というタブがあって、わたしたちエルゴラッソの番記者は、J1からJ3までの全クラブにわたり、担当クラブのホームゲームの「試合の見どころ」「レポート」「監督コメント」「選手コメント」の制作を請け負っています。見どころ以外は試合後すぐ作業しての速報になります。
7月3日の天皇杯2回戦、わたしの担当する大分トリニータは、ガイナーレ鳥取と対戦。結果は4-1で大分が勝利し、3回戦・鹿屋体育大戦へとコマを進めました。その試合情報ページがこちらです。
この「戦評」→「監督コメント」の、鳥取の高木理己監督のコメントにあるように、鳥取は2016年J3最終節に、とりぎんバードスタジアムで大分のJ2昇格を見届けています。高木監督はそのシーズンはまだ湘南ベルマーレのコーチだったはずなので、大分の優勝と昇格をその場で見ていたわけではないと思うのですが、翌年に鳥取U-18の監督に就任することは多分すでに決まっていて、鳥取の関係者としてそれを受け止め、そこからの、この一戦で貫いた方針ということなのでしょう。この一連を話してくださったことで、高木監督のコメントの読みごたえが一気に急上昇。
…いや、実は最初、質疑応答部分より前のものすごく短い総括のみで「以上です!」とすがすがしく締めくくられ、「短っ!」と焦ったことを、ここに告白します。というのもJリーグ公式サイトに掲載する試合後監督コメントは200〜500字と規定されているからです。冒頭部分を起こしてみると65文字。アカンやーん!
それで質問させていただいたのが「大分対策はしていたのか」。まあ口頭ではもう少し細かく質問したのですが、それに対して、監督の哲学を匂わせるボリューミーな回答をいただいたわけです。ありがたいことです。
そして、実はわたしはこのあと高木監督に、もうひとつ質問していたのでした。それは鳥取のサポーター向けに何か発信できないだろうかと考えて。しかしその質問に対する回答は期待以上にパンチの効いた、というか、それを聞きながら「うおおおおおおおこれぞ監督!」と打ち震えた。そういう答えをいただきました。
文字数の関係でそれはJリーグ公式サイトに掲載できなかったので、こちらに公式サイトの補足として載せておきたいと思います。以下です。
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——リーグ戦とメンバーを入れ替えてこの試合に臨まれましたが、収穫はありましたでしょうか。
とは言っても、ミーティングでも選手に言ったんですけども、先日のJ3リーグ・FC東京U-23戦に出場した選手の出場数が、のべ105試合なんですね。で、今日出場した選手の出場試合数が、のべ104試合。得点数も、先日のFC東京U-23戦スターティングメンバーのゴールは合計11点で、今日のメンバーは10点だったので、われわれとすると、直近から見れば大幅に変えているというところはあるんですけども、出場数から見ると、ほぼ差のないメンバーで戦っているので、メンバーを落としたからこういう結果になったとは考えてないです。もう本当に、チームとして、大分さんとの差がスコアになったというふうに考えています。
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ミーティングのために準備していたとはいえ、まず間髪入れずにこのデータを引っ張り出し、流暢に説明してくださるあたりに圧倒されます。
そしてリーグ戦とカップ戦でメンバーをターンオーバーするとき、選手たちはどうしても「リーグ戦>カップ戦」という意識を抱きがちです。そんなカップ戦メンバーを集めたミーティングで、出場数と得点数をカウントして説得するこのモチベーターぶりですよ! ちょっとトリッキーな気がしないでもないけど!
高木監督の会見を聞くのは初めてでしたが、これは掴まれる。ひとりひとりとお話しすれば、どの監督も独自の哲学と魅力を持っていて、やっぱり現場の最前線に立つ存在だけあって、人を惹きつける力はすごいんですけどね。
帝京大学卒業後すぐに指導者になった高木監督は、2011年から3年間、京都サンガのコーチを務めています。大分の三平和司選手とはそのときに一緒だったこともあり、試合後に三平選手はご主人さまを待つ愛犬のように、ミックスゾーンで高木監督を待っていました。選手から好かれるコーチだったのだなと思いつつ、あの大木武監督の下でコーチをやっていたわけだから、そりゃサッカーへのこだわりや志は高いよねと納得した次第です。
というわけで、高木監督の率いるガイナーレ鳥取の試合も、是非注目してみてください。いいサッカーを目指しているチームだと思います。
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