番記者たちの異常な愛情ーまたはわれわれは如何にして心配するのを止め…られない
大分トリニータを取材するようになってずいぶん長い時間が経ちました。
グラウンドは大抵寒いか暑いかのどちらかで、カンカン照りの日もあれば豪雨や吹雪の日もある。取材で得たネタを書くのか書かないのか、これを書けば読者は試合観戦の楽しみが増すけれどこれを書けば台無しになるとか、情報の出し方も考えて選んでいかなくては、ふとしたことから担当チームにとって不利なことが露わになったりもするし、活躍した選手を褒める一方で出場機会を失ってヘコんでいる選手にも配慮が必要など、気苦労は次から次へと絶えません。
アウェイゲームの取材は経費節約のためにチープでタイトな行程になり、せっかく全国の素敵な地に出向いても観光する余裕は皆無です。スタグルを楽しめたときはラッキーで、試合後はすぐにレポートを書かなくてはならないので食事もコンビニのおにぎりで済ませることのほうが多い。運悪く台風で足止めを食らい帰れなかったことも数度あります。
それでも地方紙記者さんと行動をともにするときはたまに一緒に飲むこともあって、チームがJ3で戦った2016年は、それまで行ったことのないアウェイ出張がほとんどになったので、新鮮ではありました。秋田では敢えてベタベタの観光客向けの居酒屋に食事に行き、ナマハゲに襲撃されてみたりもした。だけどそんなピッチ外ならぬ記者席外のことよりも、あのシーズンの記憶に強く刻まれているのは、J3というカテゴリーを取材する過酷さでした。
冷たい雨に降られてテントの下の記者席で背中がびしょ濡れになったスタジアムもあります。しかもそこはベンチ外の選手が目の前に座ると、彼らの頭でピッチが見えなくなる。記者席としてスタンドに置かれた会議机の脚がグラグラで、試合中ずっと膝で押さえていたために、帰りは筋肉痛でプルプルになったこともありました。当時はJ3の試合中継がなかったためテキスト速報をしなくてはならず、マッチレポ用のメモを取りつつほとんど間接視野でピッチを見ながらキーを打っていた。最もつらかったのは電源はおろか机さえない記者席で、コンクリートの階段に座ってスーツケースを膝に置き、その上でパソコンを開いて速報を入力し続けた試合です。Jリーグでこんな深刻な格差社会を体感するなんて。
それでも、対戦チーム担当の同業者やクラブの広報さんに会えたり、移籍していった選手と再会したりといった人とのつながりと、担当チームの変化を見守る楽しみ、サッカーそのものの面白さが、どのカテゴリーでも、ハードな仕事に耐える日々を支えてくれてきたのだと思います。
そんなふうに取材の現場で頑張っているサッカーライターの何人もが、「タグマ!」というWEBメディアでそれぞれの仕事を展開しているのを御存知でしょうか。さまざまなカテゴリー、さらには代表や海外までのサッカー情報を、各自のマガジンで発信しています。その「タグマ!」でサッカー関連のコンテンツを集めたのが「タグマ!サッカーパック」です。単体では各数百円、いくつか購読すれば高額になるところを、サッカーパックでは40媒体がまとめて月額1550円(税別)というお得なプラン。対戦相手の情報も読めるし、なんならまったく無関係な記事の中から面白いものを拾えたりもする。
このサッカーパックに含まれる「J論プレミアム」というマガジンには、毎週3本ずつ、オススメ記事をピックアップして紹介するコーナーがあります。筆者は月替わりです。
そのオススメコーナーを、7月はわたしが担当することになりました。第1週目がすでに掲載されています。
担当チームが勝てないときの取材の難しさや、試合の勝敗を分けた機微に迫るドキドキ感。自分自身がそれを体感としてわかるだけに、いずれも迫真の記事揃いでオススメを選ぶにも迷うのですが、とにかく7月、毎週火曜夜の更新になるのかなと思います。是非御覧くださいませ。