拝啓、元彼
外で飲もうぜと学友を誘い出し、私を連れて、大して飲めない酒を外で飲んでいた涼しさですね。あなたはそちらで今日も外で飲んでいますか、お元気ですか。
こちらは部屋がまあまあ荒れています。パソコンの画面が小さくて目が疲れそうだと心配した親が、Amazonでモニターとアームとフルセットで送ってくれました。ソファの横に、段ボールのまま積まれています。勉強しない時期だから勉強机はただの物置と化していて、リップやらバックやらハンドクリームやら、いつかのチケットにレシートが転がっています。全く自炊しなくなったキッチンには折り畳み収納できるはずのタバコ休憩用ハイチェアが置きっぱなしで、IHの上にお菓子の箱、まな板で作業するべきスペースには薬とタバコと灰皿(牛乳パックの底にアルミホイルを敷いた簡易のやつ)とライター、シンクの端にはペットボトルのゴミと水筒が。リビングの机には食べかけのクッキーの箱が落ちていて、メイクポーチが3つほど口を開けています。玄関ではしまいきれない靴たちが何足も転がっています。
あなたがこの部屋を見たら、さぞ驚くでしょうね。あの頃の私の几帳面さはどこへいったのでしょう、あなたに壊されたのでしょう。
クール・ブースト・フレッシュ・8・ボックス
私の嫌いな甘い匂いがするタバコを隣で吸ってた元彼のあなたに吸い方がおっさんくさいなって笑われたことは忘れられないし、このタバコを教えてくれたお兄さんとあるはずだった未来は考えずにいられません。〇〇はハマりそうだから煙草はやめなねなんて、お兄さんには言われたんだっけ。あれから数年経ちました、他の銘柄が吸えなくなるくらいハマって知ったけどkoolはkeep only one loveの頭文字らしいね。どのラブをキープしてるのかどれがオンリーのラブだったか、何も分からないまま同じのを吸い続けています。あなたの家ではテキトーに空いた缶を灰皿にしてベランダに隠してたの、怒られたっけ。あなたは、まだあそこで空き缶を灰皿にしてぬるいタバコ吸ってんのかな。
初めて知った煙草がメンソかそうじゃないかで、メンソの適性が変わる説を私は推しているんだけど。煙草の初めから好みから吸い方まで、そもそもあなたとは違ってたんだなと思い出します。かと言って、同じような境遇(前の彼女と四年付き合ってたらしい)で同じようにメンソ好んで吸ってる男には惹かれたけど、長年同じ女を抱いていた男は皆んな同じようになるのでしょうか、あなたと似たように抱かれた私は体の関係から何も始める気が起きませんでした。
あなたにされた嫌なこと、あなたといて辛かったこと、離れられてから数えてみて鬱になりました。そもそも、あなたといるうちからそうだったのだと思います。あの頃に比べたら、今の方がずっと安心して幸せに楽に生きています。もしかしたらあなたも同じように、私といることで苦しんでいたのかもしれないですね。その苦しみさえ懐かしいと思ってしまうのは、その苦しみこそが青春だっからでしょうか。鮮明に刻まれた恋という名の傷は、今も私を苦しめています。この傷ごと愛してくれるあの人を受け入れることも出来ず、突き放さずいるだけで精一杯です。あなたはもう他の女とうまくやっているのでしょう、〇〇〇ちゃん。元浮気相手も私もそうだったように、その女にも早く破滅してほしいです。きっとあなたの背後には、そんな屍の道が出来上がっていくのでしょう。私以上にあなたのサンドバッグとして保つタフな女はそうそういないだろうし、大変自分勝手なあなたをまるごと愛してくれる女は母とあの頃の盲目な私しかいないだろうに、あなたは私に愛されることを知らずに終わりましたね。これからも愛し愛されることも知らず、性欲と虚栄にしがみついて生きていくであろうあなたに少しだけ同情します。大して頭もよくない、顔がカッコよくもない、人格ができていない、マウントをコミュニケーションとして生きている、プライドの塊のようなあなた。私を傷つけ泣かせることだけは世界一でしたけど。
今となってはどこが好きだったのか全く思い出せません。きっとそれが恋だったのでしょう。
私はもう、きっと恋はできません。
あなた以上に好きな人はできないのでしょう。
強烈な青春をありがとうございました。
この傷を抱えて、愛に生きようと思います。
暑い日がまた続くようですがご自愛の上、愛に飢え苦しみながら長く生きてください。
敬具