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線香花火をしたい夏だった。
できれば恋人と、線香花火をしたい夏だった。これまでの夏を振り返ってみても、そんな夏を過ごしたことはないんだけれど、過ごしたかったなあというnoteを書こうと思う。
すべての設定は、私の脳みその中で造られている。現実ではないのであしからず。
浴衣を着た私と、すぐ隣にはTシャツとハーフパンツの恋人。できればBIRKENSTOCKのサンダルを履いてるとより好きだ。
河原で二人っきり。目の前にはとろとろと流れる川。真っ暗な夏。湿った空気が心地いい。ぱちぱちと鳴る線香花火。恋人の線香花火のほうが先にしゅーっと光を散らす。「きれいだね」なんて囁き合う。隣で流れている川が天の川じゃなくてよかった。川で分断されてしまう私たちじゃなくてよかった。「あー! 落ちるー!」なんて笑いたい。
そして、線香花火が落ちる瞬間、森山直太朗の夏の終わりが流れ始める。
なあ~つのお~わ~りい~。
今の時期になんてぴったりなBGM……さすが、さくらを舞い上がらせる森山直太朗……。
ドラマの見過ぎだとか、夢見すぎだとか、森山直太朗はいったん近くに置いておいて(失礼)、そんな夏が過ごしたかったなあなんて思う。
これまでの夏を振り返ってみても、過ごしてみたかったなあ、なんて思う。
そんな夏が過ごせたかもしれない時代もあったはずだった。あったはずだったのに、私はいくつかのタイミングを見逃して、乗り過ごして、そして見て見ぬフリをしてしまった気がする。自分が臆病だったからだし、今みたい夢ばかり見すぎていたせいもある。
ただ、だからといって後悔しているわけではない。
結局過ごせなかったのだけれど、なんとなく名残惜しいことをしてしまったなあ、という気分に近い。ファミレスで頼んだメニューのほかに、なんだか頼まなかった料理もきっと美味しかっただろうなという感じ。
こんなふうに、ちょっぴり感傷的になってしまうのは今年ももうあと3ヶ月、9月になったせいなのかもしれない。もしくは、台風が近づいてきて、雨が降った憂鬱のせいなのかもしれない。
あ~夏が終わる。
6月ごろから早すぎる暑さがやってきて、「例年以上に速い梅雨明けです」なんてテレビでは言っていたのに。着るものが薄くなって、少なくなって、日焼け止めを慌てて買った。その日焼け止めも、もうなくなる。塗っているはずなのに、首の後ろだけ焼けてしまった。
秋に向けて髪を切って、髪色を落とした。真夏のピークが去って、秋の夜長がやってくる。
夏じゃなくて秋の夜長でもいいから、ベランダでもいいから、明日線香花火を買ってこようかな。
線香の花火。私の夏を、私が弔ってやろうかな。
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