
「夢中」な彼の姿に「夢中」になる
これまで私に「夢中だ」って思えた経験はあるだうか。
中高やることは変えたけど運動部にそれぞれ3年間所属していたし、大学受験もそれなりに必死だった。大学生のときは、所属していたサークルにかなりコミットしていたし、今もこうして毎日ひたすら文章を書いている。
見方によってはどれも「夢中だ」といえると思う。
でもそれは第三者から見た私のことであって、私自身に聞かれると自信をもって「夢中だ」と答えられない気がする。
だって、八虎を見ると「ああ、これが夢中か」って思わされるから。
昨日の宣言通り、今日はブルーピリオド展に行ってきた。
初めて降り立った天王洲アイルは、空を写すタイプのビルがたくさん建っていた。天王洲アイルには、四角い空がたくさんあった。今日も暑かった。
会場である寺田倉庫に行くまでに、ブルーピリオド展のポスターがどどーんと。

チケットをチェックインしてもらい、いざ会場へ。
ここで一旦ご紹介しておくと、「ブルーピリオド」とは山口つばささん原作の漫画だ。
ーあらすじー
成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。
その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。
美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポコン受験物語、八虎と仲間たちの戦いが始まる!
主人公の八虎は、"上手く"生きている高校生で、コミュニケーション能力も、面倒なことからするりと逃げるスキルも、それなりの成績を維持する要領の良さも持ち合わせている。スクールカースト上位、とあらすじに書いてあるとおり、のらりくらりと毎日を送っていた。
ところが、ある日。
美術の授業で出た課題をこなしていくうちに、だんだんと美術にのめり込むようになる。八虎はアートに出会ったことで初めて「生きている」と感じたのだ。「初めて人と会話できた気がする」と八虎は言う。
その興奮が忘れられなくて美大の最高峰、受験倍率8倍ともいわれる「東京藝術大学」への受験を決めるのだった。
漫画はすでに大学生活編に突入しているのだけれど、ブルーピリオド展は美術に出会ってから、受験に立ち向かうまでが描かれる。
美術漫画だから作中、たくさんの美術作品が出てくるし、八虎や仲間たちもたくさんの作品を描く。彼らが書いた作品は、現役の美大生が描いた作品だという。
ブルーピリオド展には作中に出てくる作品がリアルで展示されている。漫画で見ているだけだった作品が、カラーで、サイズそのままで、そこにある。
漫画のストーリーをたどりながら進み、八虎が美術に出会い、はまり、知り、打ちのめされ、そしてまたのめり込む様子を一緒に味わう。
その姿は、「夢中」そのもの。
これが八虎が見た景色か、これが八虎が影響を受けた作品か、と思いながら見ていると、八虎の「夢中」に私が「夢中」にさせられていることに気づく。
八虎は、「美術は描くことは好きだけど、見ることは苦手だ」と思う場面があって、それを友達の橋田に相談する(私は橋田推し)。すると橋田は、そんな八虎にこう答えるのだ。

アートは自分を浮き彫りにする。どうしてその作品をいいと思ったのか。どうしてその作品が苦手なのか。
そして行き着く先は、どうしてその作品を描いたのか、だ。
八虎は美術に「夢中」になればなるほど、自分の汚い部分やできない部分とも向き合わなければならない。逃げたい、見たくない、これまで"上手く”生きてきた自分だったら出会うことのなかった自分に出会う。
それが「夢中」になるということなのだ。好きだけど、好きだけじゃいられない。好きだからこそ、知らなければならないこともある。

これ以上は、誰かの"実際に行ってみた”の機会を奪ってしまいそうになるので自粛。
でも、行ってよかった~~~~~~!!!!! 最高だった!!!
帰り、ショップで推しの橋田とユカちゃんのポストカードも購入。そしてなんと、何が出るかわからないシークレットマグネットでも橋田とユカちゃんを引き当てたので大満足でした。

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