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思い出の1点を確かにぶっ刺してくるMy Hair is Bad
さっきまでMy Hair is Bad(通称マイヘア)のライブ動画を見ていた。
YouTubeで2018年3月31日に行われたギャラクシーホームランツアーのファイナルがプレミアム公開されている。ちなみに月曜日の23:59までの限定公開だ。気になる方お早めに!
中学生とか、高校生とか、大学生とか、いわゆる青春と呼ばれる時代に聞いていた音楽は、今聞くと、包帯か、思い出無差別殺人犯のどちらかに分類されると思っている。
私にとってマイヘアの音楽は、そりゃあもちろん思い出無差別殺人犯に分類される。
このプレミアム公開があることはボーカル椎木知仁(しいきともみ)さんのインスタのストーリーで知った。別に見るつもりなんて全然なかった。
高校生の頃にマイヘアの存在を知って、大学生のときには毎日のように聞いていた。なんなら大学1年生のとき、地元山梨県でライブがあると聞いてライブのためだけに実家にとんぼ帰りしたこともある。そのときのライブで椎木さんと2ショットを撮る、という快挙を成し遂げて、1年間ぐらい待ち受けにしていたこともある。
あー……あのときむちゃくちゃ聞いてたな。
それぐらいの気持ちでストーリーについていたリンクをぽちりと押した。
そして気づけば2時間以上が経過していた。頭がぼんやりとして、これが余韻か、と噛みしめて、心臓がぎゅうっと鳴った。横にした画面には「動画は終了しました」という文字が出ていた。
セトリの4曲目「ドラマみたいだ」。
何かに気づけなくて
何かを傷つけてる
それだけなんだ
大学3年生のときに2歳年下の男の子と付き合っていたことがある。彼はきっと、私にもっと甘えたくて、もっと構ってほしくて、そういう渇きをSOSにして出していた。でも、私はそれに気づけなくて、結局お別れしてしまったことを思い出す。あとになって友達に「もっと一緒にいたらわかることがあったかもね」と言われた。
君の不安も不満も
全部読んだフリする
既読スルー
この曲にぼっこぼこに殴られた記憶が蘇る。私はあのとき、彼じゃなくて一体何を見ていたんだろう。
マイヘアの代名詞といえば「真赤」だと思う。いきなりくる「ブラジャーのホック」という歌詞。実家、家族がいるリビングにあるパソコンでこの曲に出会った私は「ひい~!!」と右上の×印をすぐに押した。
でもその日の夜のうちに、もう一度「真赤」を聞いた。ぶわっと何かがあふれた。身体の血の巡りが全身でアクセルを踏むような、ぎゅううーんという火花に近いものが目の前を走った。歌詞には全然共感できないし、こんな状況になったこともない。ないんだけど、それでも、「わかる」「好きだ」と思った。
擦り切れるまで聞く、っていう体験をしたのは、この真赤が最初だったように思う。
Aメロから「あ~わかるな」を連発したのが、この「悪い癖」だ。
まず曲名がすごい。ラブソングで言われる”癖”ってだいたいポジティブなものが多いと思う。ミラーリングのように、相手の癖が自分にも移ってお互いが似てくる、うふふ、みたいなのが多いんじゃないだろうか(偏見)
でもマイヘアが歌う”癖”はほんとうに恋愛における”悪い癖”ばかりだ。
何万回使い古された「愛してる」より、君が欲しかったものって
ずっと、もっとそばにいる、ということ
きっと、もっと言葉にする、ということ
付き合いはじめのきゃっきゃうふふの次は、慣れと倦怠、惰性、が交互にやってくる。だんたんと「言わなくてもわかるでしょ」「察してよ」が2人の間にぽこんと生まれて、そいつは気づけばどんどん育っていく。生まれたばかりだと思ってのに、ふとみると自分の足で立っちゃったりしてる。
何万回君が目を瞑って僕に言わないでくれた言葉って
ずっと、そっとそばにいる、ということ
ずっとずっと「寂しかった」ということ
自分にもプライドが生まれて、重くなりたくない、相手が好きなままの自分でいたい、カッコ悪いところを見せたくない、なんて思いもふくふくと育つ。よく育つ。
「人は長所で好きになって、短所で愛される」と何かで読んだけど、短所はどこまでもいっても短所だ。自分の恥ずかしいところを見せる、言うには、いつだって自分の身長を超えるぐらいの勇気が必要なんだ。
マイヘアの音楽は思い出の痛いところをぐっさぐさと刺してくる。思い出したくなかったことも、青春時代にあったあれやこれやも、こどもがおもちゃ箱をひっくり返すようにばらばらと丸裸にしていく。
アップテンポとバラードといったビート、最短で30秒から5分を超える時間、恋愛から戦争と内容まで、すべての幅が広い。
たぶん、普遍的、ではないんだろう。
スピッツのロビンソンや、バンプオブチキンの天体観測のように誰もが聞ける、ずっと聞けるという曲はたぶん少ない。米津玄師のように思わず口ずさんじゃう曲も少ない。
でも、青春時代にはそういうある1点だけをぶっ刺す曲が必要なんだと思う。出来事が過ぎてしまえば、終わってしまえば、聞かなくなってしまうけど、それでもそのとき確実に脳天をつく曲が猛烈に欲しくなる。自分をびりびりに痺れさせてほしいときがある。
マイヘアはそういう曲だから、思い出無差別殺人犯なんだと思う。
ライブを見終わったあと、感じたことが1つあって。それを感じて「ああ、やっぱり私はそうなんだな」と思った。
それは、「書きたい」と思ったのだ。ライブを見終わって、ぐさぐさと思い出を刺されて、ちょっと涙したりして、あーもう! なんて思ったりしたことを「書きたい」と思ったのだ。
きっと、このライブを見て「話せるネタにしたい」と思う人もいるだろう。その人はお笑い芸人かもしれない。
「この景色を残しておきたい」と思う人もいるだろう。その人はカメラマンかもしれない。
「この歌を歌いたい」と思う人もいるだろう。その人はバンドマンかもしれない。
でも私はこれを見て「書きたい」と思った。その気持ちが最初に沸き起こった。いや、沸き起こった気持ちは他で別にあるから、一歩引いたところで「書きたい。書きたいな」と思っていたのだ。
それに気づいたから今、こうしてちょっと長々と言葉にしてみたのだった。
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