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今日、投票に行った。人生で2回目の選挙だった。
今日、投票に行った。
25歳、正直にいうと投票に行ったのはこれで2回目だ。
目が覚めたとき、遮光カーテンが重ならなかった隙間に光の棒ができていた。あまりに眩しくて、寝転がりながら今日の暑さを感じていた。
「10時か、11時だろうなあ」と思ってスマホをつけると、10時30分だった。なかなか正確な体内時計。
うーん、どうしよう。起きる? 二度寝する? 自分と相談して、もう一度目を閉じる。
二度寝した。
次に起きたときは、11時30分だった。入りタイマーをしていたエアコンがついていたのに、部屋は暑かった。
とりあえずベットから起きて、顔を洗う。そして歯磨き、ヘアセット。今日は週に1回のベッドシーツを洗う日。マットレスからシーツを剥がして洗濯機に放り込む。じゃばばばーと音がして洗濯機が動き出す。
その間に、着替えて、日焼け止めを塗る。掃除機もかける。こう書くとなかなか頑張った休日だったなと思う。
ぴぴーと音がして、洗濯が終わった。水を吸ったシーツは重い。それを太陽の下へ、こんにちはさせる。
ひゃー暑い。きっと一瞬で乾くんだろうな。よし、家の中でしたいことは終わった。次は選挙だ。
前の日、忘れないよう用意していた入場券(?)をカバンにいれる。ドアを開けると、ぶおっと熱気が顔にあたった。今日も清々しくあっつい。
私の投票場所は、近所の小学校だった。
この街に引っ越してきて、4か月。家と駅、スーパー、駅前のドン・キホーテを行き来するだけのこの街。小学校まで行く道のりは、全部が初めて通る道だった。
変なかたちの家。マンションが多い住宅街。木漏れ日がさす神社。塀にかかる日陰で休む猫。ふさふさのキャベツが生えた畑。真っ白な壁の家の駐車場には、補助輪がついた自転車と一輪車が置いてある。
私はこの街のことを何も知らなかったんだなあと思った。
こんなところに小学校が? と思ったところで、マップ通り小学校が登場した。
「投票所はこちら」と書かれた大きな看板が出ている。矢印に従って向かうと、土足で校内に入れるようにビニールシートがひかれていた。靴を脱ぎ着する手間を省く工夫が好きだ。
小学校に入ると、ひんやりとした。
ここには通ってないのに、なぜだか懐かしいと思った。場所もかたちも全然違う。けれど、投票所の教室に向かうまでの廊下に並ぶ、たくさんの掲示物で小学生の私を思い出す。
習字で書かれた「希望」。職員室。廊下の角に大きな水槽が置かれ、その上には「川魚の生態」と拙い字で書かれたポスターと、川魚の生態が細かく書かれた模造紙が貼られていた。
私は山梨県出身で、小学生の私も「富士山の生態」を調べたことがある。そしてそれを模造紙にまとめて、小学校の廊下にこうして掲示されたことを思い出す。
懐かしい。
投票所の教室につくと、滞りなく進む川のように流れ作業だった。
入場券(?)を渡して1枚目の投票用紙をもらう。「鉛筆はこちらから」と書かれたトレーに大量の鉛筆が。どれも先がきれいにとんがっていた。
名前を書くブースに入ると、正面に候補者の名前が並んだ紙が貼られていた。
あ、なんだ、と思った。小学校に入る前、投票しようと思っていた候補者、党名を間違えないように調べていたのだった。
そういえば、高校生のときの生徒会長を決める選挙でも、こんなふうに候補者の名前がプリントには書かれていた。選挙における間違いを防ぐための工夫は、あの頃から当たり前のようにされていたのだ。
銀色の大きな投票箱に1枚目の投票用紙をいれる。流れで、2枚目の投票用紙をもらう。
もう一度、個室ブースで名前を書く。銀色大きな投票箱にいれる。
これで、私の2回目の選挙は幕を閉じた。
わかったのは、私の筆圧はけっこう強いということ。かっかっかっかっ、と私が名前を書く音だけがはっきりと教室内に響いていた気がする。気がするだけだけど、今思い出しても気になる強さだったと思う。
25歳なのにどうして2回目なのかというと、正直、めんどくさかったからだ。1回目は20歳、初めて投票権を得たときに両親に連れられて行ったのだった。
それ以来、大学生の頃は住民票を移していなかったから実家に帰ってまで投票するのがめんどうくさかった。社会人になってからは、選挙カーを見て、「選挙かあ」と思っていたのに気づけば投票日を過ぎていた。
怠惰だ。申し訳ないくらい社会に対して無関心な私だった。
選挙を終えて小学校を出ると、大人としての義務と権利を果たしような気持ちが湧いた。私はようやく社会の一員としての大人になれたのだ。
帰り道は、海開きと山開きについて考えていた。このあいだニュースで海開きが取り上げられていた。
じゃあ、海閉まりと山閉まりは?
調べてみると、まさかの地元で行われていたお祭りが山閉まりだったことを知った。
正確には「お山じまい」だったのだけれど。
今日、投票に行った。25歳、人生で2回目の社会への決意表明だ。なんだか照れてしまうな。
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