そら、そして
出逢ったのは、たわいもないオンライン講座。
薫は、ただただ愛想のよさそうな子でしかなかった。
僕が、薫のことを好きになるまでは。。。。
朝、海風と漁師の船の音が目覚めを誘い出す。
隣には、愛猫の猫たちがまだ丸まって寝ている。
ねこのひげをなでると、ちょっと嫌そうに、顔を自分で撫でなおしていた。
遮光カーテンの先から船のエンジン音が遠くで聞こえる。
反対を向けば、パートナーの信が寝ている。
僕と信は付き合って約10年にもなるが、紆余曲折で、
真反対の性格同士。
それでも一緒にやってこれたのは、愛とお互いの努力とあきらめと、そして折り合いをやってきたからだと思う。
信も、重たいまぶたを開けて、まだ眠そうにしている。
いつもアラームをかける癖に、アラームが3回スヌーズするまで起きない。
低血圧の彼には、アラームより無意識から帰ってくる方が難しいのだ。
僕たちは、仲の良いカップルに見えて、だれでもある、満たされない気持ちをそれぞれ抱えて生きている。
それは愛を誓って、生活を共にしてくるもの達には、共通することなのかもしれない。
物質的な世界で、物質的な体を持った僕たちは、この物質体をうまく扱うこともままならないまま、愛を貪っても、決して完全に交わることのできない、身体にさいなまれる。
魂が純粋に交じり合えるのは、やはり物質体の終焉を迎えるときだろうか。
慣れ親しんだ愛の中には、怠惰さが見え隠れする。
生活は、義務感を感じ始め、愛の味も、感覚も曖昧さを帯びてくる。
そんな彼を置き去りにして、僕は、朝の身支度をする。
紺の襟シャツとダークグレイのズボンを取り出し、着ていく。
洗面所に行き、朝の身支度をし、キッチンに向かった。
猫たちがまとわりついて、朝ごはんのおねだり。
きれいな水に変えてあげ、ご飯の用意をするのがルーティンだ。
猫たちが一通り満足すると、今度は外に行きたいとおねだり。
そして、そそくさとお散歩に出かけた。
朝のルーティンが終わって、タンブラーに熱いお茶を入れ、
車のカギをつかんで僕、家を出た。
好きな音楽と共に、車を走らせる。
朝の海はまだ、穏やかで、そよ風に潮の匂いが混じっていた。
薫のところまで、約二時間。
車をひたすら走らせていく。
街中に住む薫は、家でいつも仕事をしている。
知り合ってから、彼女の伝手で色々お世話になった。
生活も食事も合う僕たちは、すぐに仲良しな友人となった。
仕事で薫の家に泊まることも多かった。
そんな薫とも知り合って1年半が経とうとしていた。
僕「おはよう」
薫「着くの早かったね」
キッチンで振り向きながら一言いう薫。
ちょうどお茶を沸かしていたところだったらしい。
後ろ姿を見ながら、僕は薫を愛おしく感じた。
そっと後ろに立ち、後ろから彼女を抱きしめた。
薫「急になに。危ないじゃない」
そんな薫の言葉を僕は聞かなかったことにして、僕は薫のうなじに顔を埋めた。
彼女の匂いがさらに、僕の欲望を引き出していく。
本能的な感情と共に、理性が崩れていく。
抱きしてた身体は、柔らかくて、いつまでもいつまでもまどろんでいく。
愛する人
愛される人
ただそのすべてが愛おしい。
愛の蜜のかぐわしさは、そのお互いをひきつけあう。
崩れ行く関係に、欲望が絡み合う。
信と薫を愛し続けながら、僕はこの二人に憎まれていく。
愛の裏には、憎しみが待つ。
でも愛はそこにあり、そこにはやはり最終的に愛しかないのだ。
理性がだんまりしていく。
愛の形、それは当事者たちの花園。
いばらの棘が刺さり、愛はさらに深く刻まれていく。
それでも愛おしさはただそこに存在し続ける。
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