飯沼 鮎子『プラスチック・スクール』より
短歌新聞社, 1994.
トラックの荷台に笑める少年兵オレンジひとつわれに抛りぬ
言い訳の代わりにいたく咳き込んでだんだん芝居じみて来るらし
そんなにも大事なものがあるのかと問われてわれは潮風のなか
始まらぬ恋というのも楽しくてスコールみたいなジャズ聞かせてよ
恋人にあらざる背中雑踏に紛れゆくまで見て引き返す
干涸らびたフランスパンを噛みながら昨夜の夢をゆっくり語る
傷もたぬプラスチックの青春を楽しみながら蹴飛ばしながら
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