正岡 豊『四月の魚』より

書肆侃侃房, 2020. (まろうど社, 1990の原本に「風色合衆国」を加えて復刊)

ヘッドホンしたままぼくの話から海鳥がとびたつのをみてる

きみがこの世でなしとげられぬことのためやさしくもえさかる舟がある

冥王星みつけた天文学者からすこしさみしさをわけてもらおう

きっときみがぼくのまぶたであったのだ 海外線に降りだす小雨

つきなみな恋に旗ふるぼくがいる真昼の塔がきみであります

生きてなすことの水辺におしよせてざわめきやまぬ海蛍の群れ

海に羽根ふるかに見えてわずかなるわがやさしさの冬とおぼえよ

この世の外へ光はあふれたることを夢にて告げし夏の白鳥

ラストワルツ いまバスが出たところだから花束をつつみなおしています


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