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リスキリングの成功の鍵は「社員の納得」!そのための対話のポイントとは?

30代の頃、所属企業の中堅社員向けの研修に参加しリーダーシップを学んだのを記憶しています。当時、全社的にリーダーシップスタイルの変容が求められており、研修では、部下を側面から支援するサーバント型のリーダーシップをとるべきと教えられます。一方でこんな疑問も残りました。
「我々中堅がいくら勉強しても、上司がその必要性を理解しなければ、浸透しないのでは?」と。

NHK「リーダーシップ白熱教室」で有名なハーバード・ケネディスクール上級講師、ロナルド・A・ハイフェッツは、著書『最難関のリーダーシップ』の中で、企業の課題を「技術的課題」と「適応課題」に分けて整理しています。「技術的課題」とは、技術や経験で解決できる問題。一方「適応課題」は、技術や経験だけでは解決できず、当の本人が従来の価値観や仕事の進め方を変えなければ解決しない問題です。

ハイフェッツ氏は、著書の中で、問題に適切に対処するには、どちらの課題なのか、または、その両方が内在しているのか、正確に見極めていく必要があると言います。


前述の私が所属した企業の話で言えば、一部の層への研修(「技術的課題」)だけでなく、「適応課題」としても対応すべきでした。つまり、管理職以上に、サーバントリーダーシップの必要性とその効果を納得してもらい従来の考え方を変えてもらう必要があったのです。

昨今、DX化に向けたリスキリング(※1)が注目されています。多くの会社では、リスキリングを「技術課題」としか捉えておらず、スキル研修中心(※2)の施策展開になっているようです。しかしリスキリングにも「適応課題」が内在しています。

中堅社員以上には、これまでに培った知識・スキルとそれに対する矜持があります。闇雲にリスキリングを推進すれば、自己を否定されたような気持ちなり、前向きになれないこともあるでしょう。実際にリスキリングを推進している人事担当者が 一番頭を悩ましているのは、「社員のモチベーションの維持」です。(※3)

リスキリングを効果的に進めるには、スキル研修に参加してもらう前に、一人ひとりと1on1や人事面談で十分に対話しておく必要があります。具体的には、下記三点を話し合うべきでしょう。

1)所属組織でのリスキリングの必要性
2)将来のキャリアプランの中で習得すべきスキルとその習得方法
3)これまでの知識・経験と新たなスキルの効果的な融合の可能性

その対話によって、会社組織の将来戦略と個人のキャリアが重なり、一人ひとりのリスキリングに対する当事者意識が少なからず高まると考えます。そして、それが全体機運となり企業のさらなる成長に繋がっていくでしょう。

※1)企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)などで必要になる仕 
事上の新たなスキルを従業員が習得すること。
※2)2023年にHR総研が「社員のリスキリングに関するアンケート」を実施、その中の社員のリスキリング推進のために実施している施策ついて「社内での研修の実施」が74%で1位となった。
※3)2023年ZaPASS JAPAN (株)が「人事総務担当者に聞くリスキリングの課題」と題するアンケートを実施。その中のリスキリング実施時の課題について「社員のモチベーションの維持」が62.6%と最も多かった。             

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