見出し画像

パケ買いした本を読み終わった

処方箋と書かれているべき箇所に「処方猫」と書かれた袋から、2匹の猫がこちらに顔を覗かせている。そんなイラストに少し戸惑って、二度見しながら手に取った。それが石田祥さんの『猫を処方いたします。』だった。
裏表紙にあらすじが書いてあり、猫が処方される「中京こころのびょういん」が軸に話が展開されることが分かった。大学院で勉強していることが故に、どうもこういった「こころの」やら「メンタル」には弱い。とりあえず中身が気になってしまう。好奇心というよりはえせじゃないか?という批判的な感覚なのであまりいい意味ではない。
パラパラとめくって、京都が舞台なことにも気づいた。大丸やら四条通など足を運んだことのある名前が並んでいる。このあたりで買うことを決めた。猫がそんなに好きなわけではないが、それ以外の軸に据えられているものに身近さを感じられたからだった。

購入して3日後、電車に揺られているときに読み終わった。文庫本サイズで300ページくらいなので、決して早くはない。ただ、移動時間にしか読んでいなかった割には早く読み終えられた方だとは思う。
読み終えた上でいくつか思ったことがある。できる限りネタバレをしないように書いてみることにする。
1つ目は、心の問題の区切りというのは難しいのだな、ということ。オムニバス形式で5つ話が入っているのだが、個人的にはどの終わりも「もっと続きが読みたい」と思うものだった。話が意図的に尻切れトンボにされているというわけではない。ただ、今後がどうなるのだろうとは考えずにはいられなかった。
多分この感想になるのには、上でも少し挙げた勉強のことが関わっているのだと思う。どうも「見立て」というのを考えてしまうのだ。今こういう状況にあってこれからはあんな問題が起こるかもしれない、そうなったらこうした方がいいかも、、といった具合。こんなことを考えるということは、私の中ではまだ登場人物が抱える問題は解決しきっていないのかもしれない。お節介というか野次馬根性というか。本にまで発揮しなくていいだろう。
2つ目は、猫を飼いたいとは思わせないのが素敵だなあということ。命を預かることの重たさが散りばめられており、「処方」という言葉から連想される消費という印象はかなり弱い。猫によって幸せになりました!という単純な話ではないところに作者の注意深さを感じる。もしかしたら、上で書いた続きを読みたい感はここから来ているのかもしれない。物語としてスッキリはするけど、生命の重たさがきちんと尾を引いているのだ。
3つ目、自分の猫の解像度が低すぎて描写されても想像できなかった。スコティッシュフォールドと言われて、頭の中にアメリカンショートヘアを思い浮かべていたことに気づいたときには苦笑してしまった。素直に反省。読み返すときには調べながら読もうと思う。

こんなところだろうか。久しぶりに小説を読むという体験をしてとても楽しかった。おかげさまで電車の乗り換えに失敗しかけたが。
そういえば、この本の他にもう1冊パケ買いしてしまった本がある。来週はその本を読んで電車の時間を有意義に過ごしたい。気が向いたらその本の感想も書くかもしれない。


いいなと思ったら応援しよう!