120キロまでデブったやつが、たった1キロ減っただけで「死ぬ~!」って言ってるような少子化の話
「去年の出生率1.44 出生数初めて100万人下回る」というNHKのニュースをはじめ、今日はこの出生率の話題で。
1人の女性が産む子どもの数の指標となる去年の出生率は1.44となり、前の年よりわずかに低下したことが厚生労働省の調査でわかりました。また、出生数はおよそ97万7000人と初めて100万人を下回って、少子化が進んでいる現状が浮き彫りとなっています。
要するに、「子どもが生まれね~」って話です。
ですが、そんなことは、もう何十年も前からわかってたし、マスコミも報道してきたことで、「今更感満載」なわけですよ。1970年代から合計特殊出生率は2.0を切っていたんですから。
もっと言うと、国立社会保障・人口問題研究所が出している将来人口推計だって、ずっと前からそう推計してます。つなみに、人口予測は一番確度の高い予測です。まあ、はずれません。
こういうニュースが出ると、毎度のように「少子化は国難です。放置すれば国が滅びます」なんてことを、コピペのように言うガラパゴスな学者がいるが、あなたがどんなに叫んだって、少子化で人口減少という事実の流れは変わらない。嘆きや愚痴は、いたずらに皆の不安を煽るだけでそれこそ害でしかない。
同じように、こういうニュースが出るたびに、「国が悪い」「政府が悪い」「官僚が悪い」ととにかく他人のせいにしたくてしょうがない人たちもたくさんいる。
何度もいうけど、合計特殊出生率が2を切り続けるきっかけの年は、1975年です。その年生まれた人は今や42歳になっています。もう一巡以上しているんですよ。何も最近始まった異常事態じゃない。
それから、この合計特殊出生率ですが、何も今年最低値を出したわけじゃないですからね。最低値は2005年の1.26です。むしろ、そこから毎年のようにじわじわ上がって、昨年の1.45に次ぐ1.44という最近20年間では二番目に高い数字なわけです。
だから、ニュースの見出しとしてはこうも言えるわけです。
「出生率この20年間で2位の好成績!」
どうです?こう言われればイメージも違うでしょ?実数として100万人切ったのは、そもそも夫婦の人口が減っているからであって仕方ない。
いずれにしても、出生数が減るのは不可避だし、人口は減るんです。それを、ガタガタ言う時点でおかしい。
大体、人口減少の何が問題なわけ?
むしろ、戦後高度経済成長期の皆婚とベビーブーム自体が異常値なんです。下のグラフを見てください。
明治維新以降の人口増加のカーブ!
これこそ異常値ですよ。てか、これを体重のグラフだと思ってくださいよ。こんなに急激に太るなんて病気か力士でしょ?
むしろ今は、正常な状態に補正されているという見方をしたっていいんですよ。
これをね、「国が滅びる~!」とかうるさい爺さんは、体重で言ったら、こういうことです。120キロまでデブった自分の体重が、たった1キロ減っただけで「死ぬ~!」って言ってるようなもんです。
死なねえから!
その前に120キロにまでデブったこと自体を問題にしろ、と言いたい。
とにかく、誰が何と言ったって、日本の人口は7000万とか8000万まで減るんです。もうね、ジタバタしたって意味ないの。
よく考えてくだいよ。
少子化対策で「子育て支援するから今から制度作ります」とかいって、万一それが奏功したとして、子どもを産もうと決めて妊娠して、その子が成人するまで21年(妊娠期間込み)もかかるんです。2038年の話ですよ。
もっとおかしいのは、少子化の原因は未婚化だから婚活支援しようっていって、カップルを作る支援なんかしている。23億だかいくらか使って成約したカップルが7000組?それはいいでしょう。めでたいことです。でも、そのカップル全員が子どもを生むわけじゃないし(結婚しても子無夫婦が全体人口の10%いる)、それもまた最短で21年後の話なんですよ。
国の政策とは中長期的に見なければいけない、だぁ?
知ってます?1974年から政府は「子ども生むんじゃねー」政策をやっていたこと。そういうの知らない人、多すぎなんですよ。
やれ、フランスの施策に学べとかうるさいこと言う人いますが、フランスの税金は日本のほぼ2倍ですけど、払いますか?
少子化対策を一生懸命考えている人たちは頑張ってください。岡山県のどこかの村では出生率が2.8にもなったという話もあります。それは素晴らしいことです。しかし、一番出生率が低いのは日本の人口の1割以上占める東京なんです。地方がどんだけ頑張ってもそれは賄いきれない。
だけど、本当に今注目しなければいけないことは、出生率をあげることじゃない。
日本でもっとも出生率の高いのは沖縄です。いっぱい子ども産んでますよ。そんな沖縄で、今何が起きているのかご存知ですか?
離婚率とシングルマザーの増加と子ども貧困率の上昇です。
生めばいいなんて短絡的な話じゃありませんよ。
今いる子どもたちをちゃんと育てる。話はそこからだ。と、僕は思います。
そうでなくとも、児童虐待の件数はすごい上昇しています。
とても残念なことですが、産んだ子どもをちゃんと育てられない親が大勢いることも事実です。それはいろいろな要因があるでしょう。しかし、どんな理由があるにせよ、生まれてきた子どもには罪はありません。
産みの親が育てられないなら、育てられる経済基盤と人格を持つ、子どものない夫婦が親になるべきです。養子縁組や里親制度をちゃんと見直すべきです。
産んだらそれですべてハッピーエンドじゃないんだから。
産むことより、今生きている子どもたちをちゃんと育てること。もはや、そっちに舵を切るべきじゃないでしょうか?
話はそれからだ。
ちなみに、将来人口推計によると、2065年には14歳以下の子どもの人口は約800万人、15歳以上のいわゆる大人の人口が8000万人です。つまり、大人10人に対して子どもが一人という社会になるんです。
それは、逆に考えれば、大人10人が協力して1人の子どもを育てる社会にならなければいけないんです。これと同じような提言は、先日話題になった経産省若手のペーパーにも書いてありましたが、まったく同感です。
血縁だけが家族とか言ってる場合じゃないんです。誰の子であろうと、我々大人は子どもたちを育てる義務がある。家族だけに自己責任を負わせるような社会は破綻します。
つまり、もう「今までの家族」という概念に縛られてちゃいけないんです。
家族の概念を拡張しましょう。
独身だろうと子無夫婦だろうと、引退したおじいちゃんやおばあちゃんだろうと、大人はみんな子どもたちの親にならなきゃいけないんです。
少子化、人口減少の日本をどう考えるかについては、毎日新聞に出ていたこの人の話が参考になります。→<論点>人口減少、どう備える