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現代に蔓延る「面倒くさい病」

東洋経済オンライン連載「ソロモンの時代」更新しました! 

今回のテーマは「酒と結婚と男と女」です。昔、河島英五の曲で「酒と泪と男と女」っていうのがありました。古くてすみません。

最近「酒離れ」なんてことを言われてますが、実は酒の消費量そのものはそれほど減少しているわけではなく、大きく減ったのが酒を提供する料飲店の売上です。要するに「ソト飲み」の減少なんです。最後の皆婚時代だったバブル期と比較すると顕著です。

今回、自分としてもおもしろい発見ができたなと思うのは、地区別の飲酒量と生涯未婚率との間の相関です。特に女子。

酒を飲みすぎる女子は結婚できなくなるのか?結婚できなかった女子が酒を飲みすぎてしまうのか?

タイトルは気にせず、本文を読んでいただくと納得できると思います。ぜひご一読ください。


ところで、毎度、タイトルしか読まないで脊髄反射してくる奴が多いんですが、今回もそうで、「相関の読み間違い」とか批判してくる輩もいて閉口します。たとえばこんなの↓

また相関関係の読み間違い。昔から年齢の上昇とともに飲酒率があがり20代は低い。いまは未婚の30から40代が多くて飲酒率が高いだけじゃん。金持ちがベンツ乗ってるからベンツ乗れば金持ちになるわけない。

この人、全く本文読んでないのがバレバレ。僕も素人じゃないんでそんなことは承知しています。ちゃんと「こうした相関があるからといってそこに因果を求めてはいけません」と書いています。

また「人間は因果的推論の天才です。相関があると必ずそれを因果として結び付けてしまおうとしがちです」と釘も指しています。まさにこのコメントの人は、無意識に相関と因果を結び付けてしまっているわけですね。気を付けましょう。

かと思えば、ちゃんと本文読んで理解してくれる人もいます。ありがとうございます! 


内容的なことを言うと、個人レベルで飲酒するかしないかということよりも、バブル以降全体的に蔓延している「面倒くささ」というものが根っこにあるような気がしています。人との関係性を作ったり、継続させようとすることすら「面倒くさい」んです。

そもそも「生きるとは面倒くさい」ものなんですよ。面倒くさいけど、生きるためにはいろいろ面倒を引き受けることが必要なのであり、子どもの頃の勉強も部活も、就職も上司との付き合いも、すべては「面倒くさい」もの。結婚とか子育てに関しても、精神的充足感を度外視するならば、物理的な行動だけ見たら「面倒くさい」と判断されるようなもので満ちている。

人間って不思議なもので、同じ行動でも(たとえば買い物でも)面倒くさいセンサーが作動する場合と作動しない場合がある。かつては、外部の所属コミュニティとの関係性を保つことは、生きていく上で不可欠なものだったので、それに面倒くさいセンサーを作動させなかったんです。

ところが、いつしか、そうした面倒を回避しても生きていけるようになってくれば、行動しない正当化として「面倒くさい」が作動する。部屋から一切出ないような引きこもりなどは、まさにそうしていても生きていけたからですよね。

外に飲みに行かなくてもまあまあ部屋の中で楽しめるなら、面倒くさいから外出しなくなる。でも、本来外に飲みに行っていたとしたら、そこで偶然の出会いもあったかもしれない。異性との直接的な出会いじゃなくても、将来自分に何かをもたらす人とのきっかけが生まれたかもしれない。そうした可能性を「面倒くさい」の一言は、すべて無にしてしまうわけです。

今回のコメントでもこんなものがありました。

酒も飲まないしタバコも吸わない、ギャンブルもしない。
年収まあまあ高くて見た目も気を使ってるのに結婚できませーん!

別に飲酒を推奨したいわけじゃないので、これはこれで健康的な生活として良いことだと思います。しかし、この人がもし「結婚したいのにできない」んだとすれば、それは「面倒くさいからやらない病」のせいかもしれません。


同様に、面倒くさいとも関連しますが、「それメリットあるの?病」もあります。すべての行動にメリット・デメリットを天秤にかけて、「メリットがない」もしくは「デメリットが大きい」と判断したことを回避してしまうことです。

こんなコメントもきました。

やはり飲酒も結婚も結局は経済的要因に行き着いてしまう。世の中、損得勘定が先行してしまい、「この人とお酒を飲むことにメリットがない」とか「会社の飲み会は時間の無駄」とか「結婚にメリットは感じられない」とか、全てに於いて自分にとって得か損かの視点でまず考えるのでしょう。経済的余裕がなければ、自分視点の損得勘定での優先順位1位しか実行できない。

そもそも論を言えば、別に損得勘定は悪くないです。というより、損得勘定がない人間なら多分死に絶えています。そして、古くから結婚とは経済生活であり、生きていくための相互メリットとして機能していたものなんですけどね。いつしか「結婚はメリットがないからしない」という意見がかなり増加していることも事実です。


そしてこんなコメントもきました。なんかよくわかりませんが説教されています。

ふざけたこというなよ こんなんはなんの根拠もない迷信だ。あなたが単に酒を飲む人を嫌いなだけだがな。そんなこと言いだすからだめなんだ。

見ず知らずの方からいきなりいろいろ決めつけられてダメだしされました。

いやいや…僕は酒を飲む人が大好きですし、飲みに行くのも大好きです。酒が好きというより、酒を飲む場が好きですね。ひとりでは酒は飲まないので。まあ、酔っぱらって意識失うこともしばしばあります。財布やらスマホやらいろいろ失くします。まあ、そういう意味では、酒の前ではダメ人間かもしれませんね。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。