単なる独身男とソロ男は違う。
なんでソロ男なんて言葉使うの?独身男性でよくない?
そんなご指摘をよく受けます。
勘違いされている方が多いんですが、独身男性=ソロ男ではありません。
独身男性と一言で言ってもいろんな方がいます。例えば、「働いている人」と「働いていない人」とでは、経済的に生活レベルも意識も異なります。同様に、「一人暮らししている人」と「親元で暮らす人」も家賃を自分自身で払っているかどうかでいろいろ変わります。結婚観にしても、「結婚したいと思わない人」と「結婚したいと思っている人」の二種類が存在します。
よく言われる「9割以上が結婚したがっている」というデータは嘘だという話は以前にもここで書きましたが、どの年代にも一定数の「結婚しない/したくない」男というのは存在しています。
これら、「有業なのか無業なのか」、「自活しているのか親に依存しているのか」、「結婚意思があるのかないのか」、そういった部分の違いは、特に毎日の消費行動面で大きく異なります。むしろ白黒くらい違います。
一人暮らしなら日々の食費は自分で買わないといけませんよね。家賃も払わないといけない。そんなソロ男を、同じ独身だからといって、親元で家賃も食費も払わない独身男と同列に扱うのはどう考えてもおかしいわけです。そもそも親元に住む独身者の消費行動と一人暮らしのソロ男の消費行動は明らかに違うんですから。
独身男性の中で、ちゃんと働き、経済的に親に依存もせず、結婚する意思が現在ない男。それらすべてを満たしている男をソロ男と呼びます。よってソロ男にはニートや年金パラサイトのような人は含みません。
ソロ男とそれ以外の非ソロ男とを比較する調査を実施すると、その生活意識や買物意識が大きく差異があることがわかりました。簡単に言うと、ソロ男とは、一人の時間を大切にし、お金を自分の興味のために使いたい男のことです。さらに、ちょっと頑固であまのじゃくで面倒くさい性格でもありますが…。
一方、結婚したいという意思が強い人の場合、彼らは将来結婚して夫になり父になる素質の高い男なので、これもまたソロ男とは異なります。書籍では、彼らをエセ・ソロ男と呼んでいます。
逆に、既婚者であっても、ソロ男気質バリバリの男も存在します。ソロ男といっても結婚を完全否定しているわけではないですから(ここも誤解されがちなんですが、ソロ男は結婚という制度そのものに否定的なのではなく、結婚してしまうことで自分の時間や金が自由に使えなくなることを嫌がっているだけです。よって、それが担保されるならば別に結婚したり、子育てすることを厭わない)、ソロ男のまま夫や父になる人を「隠れソロ男」と言います。
彼らは結婚しても独身時代と同じように自分の趣味や興味関心事に精を出します。ちなみに、未婚のソロ男と隠れソロ男の価値観や行動もほぼ一致します。そういう意味でソロ男とは、実は未既婚の区別でもないんです。
要は、消費含めた行動価値観が、「個重視」か「群重視」かという違いです。
同様に、ソロ男=独身貴族でもありません。
もちろん、ソロ男の中には、年収も多く、自由で優雅な独身ライフを謳歌している人たちもいますが、例えば年収300万円台でも、自分の趣味に時間をかけて楽しんでいるソロ男たちが多くいます。お金があればいいっていうもんじゃありません。ソロ男は概して浪費しますが、自分の関心のないものに対しては、とことんドケチです。
ソロ男に共通して言えることは、普段の日常のちょっとした消費行動にさえ、幸せや喜びを見いだしているという点です。彼らの消費は、大きく承認欲求と達成欲求を満たすために行われます。スマホゲームやアイドル商法、アニメなどのエンタメ業界を支えているのは彼らソロ男だと言っても過言ではありません。
だからといって、ソロ男=オタクでもありません。
何かにこだわるオタク気質のソロ男もいますが、全体の10%ほどです(彼らは「ストイックソロ男」と呼びます)。
ソロ男のタイプは全5種類いて、上記のオタク気質の「ストイックソロ男」とは別に、潔癖症で真面目な型物系の「きっちりソロ男」、あと、全体的に世の中を達観している感のある「仙人ソロ男」がいます。これら3つのタイプを合計して約45%です。
では残り半分はどんなタイプなんでしょうか。
ソロ男で大きな構成を占めるのは「社交性ソロ男」と言われる人たちで全体のほぼ3割。
彼らは友達も多く、同性異性問わずわいわい集まって楽しむことが好きな人たちです。将来結婚する可能性も高いですが、今は結婚の意思はなく、楽しく毎日を過ごしていたいという人たち。パリピと呼ばれる人たちはここに含まれます。彼女いる率ももっとも高く、コミュ力も高い。
もう1タイプは、「ネット弁慶ソロ男」と言われる自己肯定感の低い人たちで、25%。
ネットに匿名でいろいろ書き込んだり、見ず知らずの人に議論をふっかけて論破したりすることを好みます。ですが、リアルに会ってみるとそんな攻撃性は感じられない人たちです。潜在意識的には自分に自信を持っているのですが、オレオレ的な自慢男を毛嫌いし、いわゆる意識高い系が骨の髄まで嫌いというタイプです。ややこじらせている感はありますが、ネット以外の日常生活においてはそんな変人だとは思われない振る舞いをしています。
上記ふたつのタイプでソロ男の約55%を占めています。
※ソロ男クラスターの詳細については是非拙著「結婚しない男たち」をお読みください。
ソロ男という行動価値観でクラスタリングして見えてくるものがあります。それは、20代のソロ男と50代のソロ男とが同じ価値観や行動基軸で動いている場合が多いということです。
従来、デモグラ論法で年代別に価値観や行動は変わるものとされてきました。世代論というのもそうです。でもよく考えてください。昔は、95%が結婚していた時代でした。皆が20代から30代で必ず結婚して、誰もが父になりました。でも、今はそんな時代ではない。年功序列もなくなり、男女雇用機会均等から働く女性も増えました。年齢とともに皆が同じようなライフステージを歩んだ時代ではないんです。
生き方が多様化しているのに、いつまでも年齢軸で人間を分けることの無意味さがわかりますでしょうか?男女の役割分担の境目があいまいになってきているのに、いつまでも仕事は男、家庭は女という役割分担に縛られている愚かさに気付かないのと同じです。
その証拠に、国民皆婚時代に栄えた主婦の店と呼ばれるスーパーは今やコンビニにとって代わられる時代となっています。コンビニの売上を支えているのは男性であるということはみなさんご存知の通りです。
いつまでもデモグラ論法で消費者を見ていると見誤ります。結婚していないかしているのか、個消費なのか群消費(子有含む)なのか、その軸の違いの方が重要で、それによって必要なモノも買う頻度も大きく変わります。同じ年収の40代男性だとして、既婚二人の子持ち、家のローンありの男と、独身のソロ男とではどう考えても消費行動や金の使い方は違いますよね。
結婚しているとかしていないとかは、ソロ男を語る上でのひとつの重要なファクターですが、それが全てではありません。何に関心を持ち、何にお金と時間を使おうとし、それによってどう幸せを感じて生きて行くのか、という「生きる価値観の問題」です。
ソロ男にとって消費は自己の幸せに直結しているものです。だからこそ、彼らの消費意欲は(自分が大事だと思った物に対してだけ)旺盛なんです。
独身とソロ男は違う。ご理解いだけましたでしょうか?
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。