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日本代表の戦い方についての賛否の前に、大事なこと忘れてない?

昨日のサッカーW杯日本vsポーランド戦は、関東地区の平均視聴率はが44.2%、瞬間最高視聴率は54.0%と50%を超えたらしいです。なんだかんだやっぱり日本代表のサッカーへの関心は高い。

そんな中、日本の戦い方についてはいろいろと賛否があるようでして…

まあ、それぞれ思い思いに感じればいいとは思いますが、今回はこれに関して「日本人とは?」といろいろ考えたことを書きます。

最初に断っておきますが、サッカーの話をしているのではないです。この試合に対するいろんな人のリアクションの中に日本人的なものを見たので、それを書いているだけです。サッカーの話と結びつけないでください。


"結果がすべて"

今回の試合でもこういう言い方で、日本代表を称賛する人も多いです。特に経営者とか。どんな戦い方をしようが勝負の世界では結果がすべて。なんだかんだ決勝トーナメントに進んだのだから正解なのだ、と。

今回の試合は置いておいて、日常生活(特に仕事面で)この「結果がすべて」を多用する人もいますね。でも結局こういう人って、今回セネガルが同点に追いついていたら日本は3位になっていたわけで、そうなったら鬼の形相で非難するんでしょうね。

だって結果がすべてなんだから。結果がよければ努力も何もしなくても評価するんでしょうし、結果が悪ければ、血反吐吐くほど頑張っても足蹴にするのですよね?

それって、利用価値があるうちは登用するけど利用価値がないとわかったら即座にモノのように人間を切り捨てる「織田信長的思考」ですね。すばらしいもんです。

きっと、こういう「結果がすべて」という考え方の人が上司の会社では、結果を出せない人間をほどんどん追い込んで、うつ病にし、自主的な依願退職に追い込むような「可視化されないパワハラ」をたくさんされているのでしょう。知らんけど。

できないのはお前のせいだし、実績出せないのもお前のせいだし、それでうつ病とか発症する弱さもお前の問題だ。自殺?知らねえよ。勝手に死ねば?みたいなことですよね?

こういう自己責任論というのはまさにこうした「結果がすべて教」に内包されているなあ、と思ったもんです。


"汚く勝つくらいなら美しく負けろ"

あんな戦い方は恥だ。最後まであきらめずにやらないくらいなら負ければいいよ、という思想。これもまた、ネット上ではきわめて日本人的な考えだとという声もありました。

まあ、それで「結果を出せなかった」のがドーハの悲劇なんでしょうけど。

結構、みなさん、この思想を割と日本人的と勘違いされている人多いですけど、それってどっちかというと明治維新以降の刷り込みによるものです。太平戦争における玉砕攻撃などもね。

いやいや、日本人はもともと切腹の文化があったじゃないか?

それ人口の1割にも満たない武士の世界だけね。しかも、武士に至っても、江戸時代以降の切腹なんて結局死刑の様式美にすぎないわけで、「潔く死ぬ」というものが日本人の本質かというと違う。

むしろ逆。

"美しく死ぬくらいなら無様に生きる"

これこそが日本人の本質だったわけです。農民にとって自ら死を選ぶなんて選択肢はないし、戦国時代までの武士ですら、「絶対に助からない状態まで生きることを選ぶ」ことが美徳だったんです。

潔い死なんて武士にとっては邪道。「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉で有名な葉隠は、江戸時代に入って戦もなくなり、武士は死ぬことを禁じられた時代に生まれたもの。あれちゃんと読めばわかりますが、死を推奨するどころか、処世術を書いたものです。そもそも書いた本人が武士なのに主君の殉死も許されず、畳の上で病死しているくらい。

新渡戸稲造の「武士道」もあれは外国人に対して書かれたものであり、本人も武士がなんたるかはいまいち理解していません。ルース・ベネディクトの「菊と刀」に書かれた武士道や恥の意識に至っては、本人が後世「あれは間違いだった」と言っているくらいです。

本来の武士道とは、「生き抜く力」を指しているのであり、潔い死とは真逆の発想だし、武士以外の日本人にとってもそうです。

何が言いたいかというと、"汚く勝つくらいなら美しく負けろ"という声があがるということは、日本人が随分と日本人じゃない偽りの規範に縛られているもんだなあということ。


最後に、こういうのも多かった。特に芸能人とか好感度が自己の人生に大きく影響する人たちに多かったのがこれ。


"日本代表が決めたこと。すべて信じて応援するのみ"

一見、なんかよさげですけど。これ、まあ本心ではなくて、こういうことを言っておけば、少なくとも炎上はしないだろうということからなんですよ。好感度大事だから。

これって、いわゆる「空気を読む」という日本人の独特な行動思考だと思うんだけど。


まあ、いろいろなリアクションがあって面白かった。

でも、日本人のみなさん、忘れちゃいけないのは、今回の予選突破は自力じゃないってことです。そうです、コロンビアがいなければできなかったことなんですよ。日本代表を非難したり称賛する前に、コロンビアに感謝することを忘れないでください。

とにかく、みんな、コロンビアに感謝しましょう! 

ありがとう! コロンビア! 共に決勝T頑張りましょう! 

コロンビア大使館にて 

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。