Infinity 第二部 wildflower40
季節は春を過ぎて初夏へと移り変わっている。強い日差しに刺されながら、一言も文句言わず礼は馬を進めている。旅を始めてひと月が経った。男装束にも慣れて堂に入ったものだ。
予想通り、山犬を避けるために泊めてもらった集落を発って三日目の昼間に若田城に着いた。夷との闘いを支える最前線の地は、都からの役人たちの町があり、その周りに農民たちの暮らしがあった。
耳丸と礼は馬を下りて、引きながら小さな町の往来の中を歩いた。
北の戦場はとても寂しいところと想像していたが、後方支援の若田城は国府の