BF1の思い出(絶望する瞬間編)
第一次世界大戦を題材にしているゲームなのだから、このゲームにはもちろん絶望はそこかしこに存在する。
毒ガスが猛威を振るったカポレットなど正にそのままだろう。
しかし、このゲームでは第一次世界大戦とかに関係なく発生する絶望的シーンが多い。
これは私がプレイ中に経験した絶望である。
飛び出し注意!!
アミアン。
フランス北部の街は今作で最も評価の高いフィールドでは無いだろうか?
飛行機こそ搭乗しないが、代わりに戦車や装甲列車が走り、火炎放射器兵と警戒兵が闊歩する。
狭い室内と長細い路上では突発的な戦闘が起こりやすく、しかし長距離射程のライフルも活躍は可能だ。
無料コンテンツマップに収録されており、誰でも参戦できるのも人気の理由の一つだろう。
一方この古いフランスの街は、市街戦を重視しているだけあって、かなり見通しが悪い場所が多い。
路上をチンタラ歩く兵士は格好のカモにされ、かといって建物に引き篭もっていては爆弾が玉入れみたいに飛んでくる。
そんなアミアンで私は敵の拠点の裏取りに向かうべく、単身ひっそりと路地を走っていた。
「あの角を曲がれば拠点だ!」
そう思って飛び出した建物の角に、丁度向こうからも何かがニョキッと飛び出してきた。
長く太い主砲、鈍く煌めく機銃、アンバランスな重心の装甲、尖った車体。
サン・シャモン突撃戦車である(トップ絵)。
「あっ…(察し)」
向こうもこんな敵のいない場所で、まさか飛び出してくるヤツがいるとも思っていなかったと思う。
その銃口は明らかに慌てていた。
私はもっと慌てていた。
なにせ当方は看護兵である。何一つ戦車に対抗する手段がない。
この距離では何をどうしたって近くに弾が当たる。破片で死ぬ。120%死ぬ。
相手が致命的に下手くそで、空にでも空撃ちしてくれる事をただ祈る数瞬。
無情ながら、相手の突撃戦車さんは、なかなか珍しい色のスキンをつけたかなりの強者。
やってきたカモをみすみす見逃すアマチュアでは無かった。
迸るマズルフラッシュ。吐き出された砲弾は、砲塔から50cmと離れていない私の胴体に着弾した。
普通なら見るも無惨な断片になっていたであろう私のキャラクターは愉快なポーズで吹き飛んで瓦礫の山に落下した。
お相手の突撃戦車は咄嗟に打った様で、その後視線が泳ぐかの如く、砲塔があっちこっちに蠢いていた。
「びっくりしたー、何今の」
そんな運転手の独り言が聞こえてきた気がした。
こちらが偵察兵を覗く時、偵察兵もまたこちらを覗いている
私はこのゲームを何年もやっているが、いまだに下手くそのままである。
特に遠距離のエイムに関しては絶望的に下手で、何なら棍棒を持って近づいて行って殴った方がまだキルは取れる。そんな私でもたまにはライフル銃を握りたくなる日もある。
シナイ砂漠は広大な砂丘と岩山、そして建物からなるマップ。
その広さと平坦さから少なからず偵察兵が猛威を振るう。
そんな戦いでライフルを用いて、人気のない岩山に向かった。
やはり最初のうちは敵がそうそう見ないが、徐々に混戦模様に陥ると敵がチラホラ見えてくる。
撃っても当たらないが、撃たないと始まらないので頑張って狙撃していると、たまに相手をキル出来たりする。そんな時には自分の自慢のレジェンダリースキンが相手のキルカメラに表示されているのだと思うと、優越感があるのだ。
と、その時近くで弾が跳弾する音が聞こえた。
誰か撃ってきているのか!
慌てて周りを見渡すと、遥か遠くの砂丘に、チラッと『後光』が見えた。
後光とはライフルのレンズが太陽光に反射して光って見える現象だ。
私が勝手に呼んでいるだけで、ただの反射光である。そもそも前にある銃が光っているのだから後光ではない。前光である。
ただそれはこちらに敵の銃口が向いているという意味であり…。
「あ、これ死んだわ」
自分は今、伏せた状態で、全く動かず狙撃している。
頭を前にして銃を撃っているのだ。正面から飛んでくる弾は、当然、投影面積の大きい頭に飛んでくる確率が高い訳で。
つまり、この状態で相手の後光が見えているという時点で、撃てばほぼ確実にヘッドショットされる位置関係にあるという事だ。
もう目と目が合った気すらした。
確定演出みたいなものだ。
パシュン!
船長は沈みゆく船を見捨てない
このゲームにおいてビークル兵器というのは戦力という他に強みがある。
分隊ではない味方もリスポーンできる事だ。そこに一台いてくれれば、何度でも味方の復活地点として使えるのである。
ビークルに座席が空いていればその席にリスポーンして即座に戦える。そこから降りて戦うもよし、そのビークルの装備を使うもよしである。
しかも大抵は装甲が強固で、爆発物でもなければ壊される心配はない。リスキルなどにも会いにくいという事だ。
で、意気揚々と前線にいる戦車から出撃しようとすると。
なんと車体が真っ赤っか!!
しかも戦車に誰も乗っていない!
おまけに物凄く火を吹いている!
残り体力は!?
「…3?」
バゴォーーン!!
…隊長!なんで戦車捨てて真っ先に降りてるんですか!!
体力3て!ツールのトンカチで殴ったら壊せるレベルですけど!
仕方がない。流石にビークル兵も命は惜しいのだろう。
気を取り直して再出撃だ。
じゃあ、敵の手が届かないこの爆撃機から降下すれば安全だろうか?
よしリスポーンだ。
あれ?機体が赤い!!
っていうか運転席に人いない!!
高度低い!地面近い!
「すぐ降りr…」
ボカーーーン!!
…機長!なんで飛行機真っ先に降りてるんですか!!地上5m位でリスポーンでしたけど!降り損なった後部の機銃の人と一緒に心中しましたけど!!
という事でちゃんとリスポーン先が爆発とかしていないかよく見ましょう。悪いのはタイミングを見誤った私だ。
船長が沈みゆく船を見捨てないのはシーマンシップだから戦車と飛行機は対象外。
特に戦闘中は事故席人、いや自己責任で。
ナイスコントロール!
何もない平原で前線が膠着した時、最も頼りになるのは、銃などではなく、弾除けである。
建物の焼け跡でもいいし、塹壕でもいい。戦車の残骸でもいいし、最悪倒木でもいいのだ。
しかし本当に何もない平原が広がるヨーロッパでは、もう迫撃砲の砲弾跡のクレーター位しか身を隠すものがない場合も多い。
実際には雨でぬかるんだ砲弾跡は液状化が起こって蟻地獄の底なし沼になる事もある、非常に恐ろしいものであったそうな。
そんなリアルな事情はさておき、この砲弾跡はゲームでは即席で身を隠すのに丁度良い窪みだ。
伏せて銃を構え、迫る敵を薙ぎ倒す。中々戦いやすい状況を作ることが出来る。
そんな中、ふと視界の隅から何かが飛んでくるのだ。
乗り出した自分の真横で転がったそれは、対戦車グレネードである。
「わぁ…」
でっかいなぁ。近くで見るとこんなんだったんだ。
なんてちいかわみたいな声で関心出来る位置にいるという事は、もう何をどうしても回避が間に合わないという事である。
ピカッ!!
ズドーーン!!
にしても重い対戦車グレネードをあんなに綺麗に投げ込めるとは、野球選手なのかと見紛う程に凄まじいコントロールである。
いい外野手になれるだろう。
このゲームをやっていれば「あ、死んだわ」なんて事はしょっちゅうだが、それすら楽しめるのが良い点かも知らない。
あんまり続くと発狂ものだが。