昔のまま?
「すぐそこにある喫茶店“花泥棒”、昔のままですよ」
「下北沢はすっかり変わってしまった」と話していたら、この地で生まれ育ったというギャラリーのオーナーが教えてくれた耳寄り情報。すぐそこ、というから行ってみたけれど、確かに⒉階にあがる階段は面影があるし、新しい店とは言えないけれど、“花泥棒”の名前はなく、すっかりおしゃれな店名に名前になっていた。
オーナーは息子と同じような年齢、その彼が言う昔は、私から言えばそんなに昔のことではない。例えば小田急線の南口はなくなったという話をしていたとき、「peacocという看板はあったけど、外観はずいぶん変わっていた」と私が言ったら、「“オオゼキ”はそのままですよ」と彼は言うけれど、私がこの地に出没していたころには、今言うスーパーの“オオゼキ”だって、まだなかった。
後期高齢者の私からすると、息子世代の彼たちが生まれたころが、まさに全盛期、ちょっと前という感じなのだ。そして、そのもっと前の、私たちの青春時代こそが昔になる。そういう意味では「昔のまま」と言える場所を探すのはもう難しいのだろう。
ずいぶん長い年月生きてきたのだなあと、今更ながら驚いている。私が普通のことだと思っていることが、普通ではない。ま、あまり深く考えず、昔も求めるのはよそう。