絵を描く人たち
新国立美術館の3階から1階まで、二科展の作品たちを観て回った。100号からの絵画は観るだけで疲れる。途中で、会友の先輩やらお絵かきの生徒さんやら、たくさんの知りあいに呼び止められて、その都度のご挨拶。私の苦手分野だが、独り身の息子だから仕方が無い。
毎年の二科展で、実は私は彫刻を楽しみにしている。今年の一番ヒットは、彫刻の森美術鑑賞を取った奇妙な表情の白衣のドクター、タイトルは忘れたが、何やら臓物のようなものを手にし、いかにも難しい施術をやりました感を漂わせているが、よく見れば、赤い鯛、魚を手にこの表情、何をかいわんや、だ。こういう一癖も二癖もある彫刻が最近は多いから、実に面白い。
二科展の後は、新宿京王プラザホテルに回って、わが家の隣の隣のおひとりさまが出展しているグループ展を鑑賞した。美大出身の彼女、旦那も上手な絵を描く人で、夫婦で海外旅行をしては素敵な街並みを描いていた。10年ほど前、その旦那が亡くなってしばらくは筆を持つ気力もなかったらしいが、ここ5,6年、復活している。特にこの夏は、外に出られないから籠もって描いていたそうだ。恥ずかしいから見に来ないでなんて言っていた奥ゆかしい彼女だけれど、新作を4点もだしているではないか。
二科展の大作も素晴らしいけれど、20号中心の素人っぽい絵を見ると、なぜか心が落ち着く。どちらにしても、絵描きはほとんどが70歳以上の高齢者。損保美術館賞などの冠のついた受賞者は、80、90の大御所ばかりだったと、初めて受賞式に出た息子は言う。50年以上、毎年毎年大きな絵を描いては出展し続ける。絵画の世界って恐ろしい。