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最初の記憶 2歳

たぶん最初の記憶だと思うのが2歳のころ。家族で新しい家に引っ越す時、父が運転する車の助手席にわたしは一人で座っていた。後部座席に母と5歳と3歳の兄がいて、下の兄はぐずっていた。

私はぼーとしていて、父が喋りかけてくることに一生懸命宇宙語で答えていた。父が突然後ろの母に向かって「ヘチマ寂しそうやろ!お前はちゃんと子どもの面倒みろ!」的なことを言い、母は「なんでー!わたし今この子らの面倒みてるから無理やろ!ヘチマは今泣いてないし大丈夫やわ!」的なことを返して、両親はピリピリしていた。うしろで兄のぐずる声が聞こえ、母の少し苛立った寝かしつけの声が聞こえた。

わたしはその頃聞き分けがよく、自分がおとなしくしていればお母さんの負担にならないだろうからじっとしていようと思った。そしてすごく寂しくて兄がうらやましかった。

そのうち車が止まって、母が助手席に来て膝に抱っこされた状態で車が走り出した。すごくすごく嬉しくて。がんばってじっとしててよかったと心から思った。

その次の記憶は、引越し先に着き家族で玄関を開けた瞬間。兄たちは「わー!」と喜んでかけながら部屋に入っていった。わたしもついていこうとしたが、足がもつれてこけてしまった。兄が喜んでるのが伝染してすごくすごく楽しかった。部屋の中は陽の光で真っ白に見えた。母がコケたわたしを起こそうと立たせてくれ、それも嬉しくて「キャー☺」と叫びながら兄を追いかけた。母も兄も大好きだった。父に対する感情はよく覚えてない。

現在の母は一人ではなかなか決断できない人だ。なんでも「お父さんに聞いてみないと」という超依存体質なのだけど、あの頃の母は強くて優しくて偉大だったと思う。

末っ子でいられた時期、最終的に母は絶対自分の元に来てくれるという漠然とした自信があった。そんな特権は妹が生まれてすぐ消えた。

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