二十歳に還りたい 感想
気ままに鑑賞しようと思っていたので、ポップコーンとコーラを買って最後尾の座席をとった。
指定の席に向かうと、座席を取った時には居なかったはずなのに、真隣に女性二人がすわっていた。
「あれっ」と私が小さく声を上げると
「すみません、ガラガラだったので真ん中にうつらせてもらって・・・」
と、何個か席を移動し始めた。
すると女性のうち1人が
「以前お会いしましたよね?」と。
私はあまり人の顔を覚えないようで、誰だかピンとこず困惑。
しかし、小綺麗な中年女性2人組という出で立ちからして、信者の可能性は濃厚。
ということは、以前幸福の科学の支部で話した女性か?
「幸福の科学に来てくださいましたよね?」と女性。
やはりか笑笑笑
「そうでしたか!奇遇ですね!
私は今日が1回目なんですよ」
信者は複数回鑑賞する前提での話し方しちゃった笑
幸福の科学信者が、興行成績をあげるために映画館をハシゴすることを「ぐるぐる回転菩薩」と呼ぶときいたときの衝撃たるや。
とにかく同じ列に顔見知りの信者がいるという気まずい状況下でも、鬼のメンタルでポップコーンを広げむしゃむしゃ食べ始める私。
今作はあらすじを見た感じ、今までのオカルトまがいやSF要素の濃い作品とは毛色が違うのは分かっていた。
地縛霊が出てきたり赤鬼が出てきたりは無さそうだ。
大まかなあらすじとしては、地位は築いてきたものの家族や愛に恵まれなかった孤独な老人がタイムリープして若かった頃に戻り人生をやり直す、といったもの。
以下、ネタバレあり
状況を解説しすぎな歌詞つめつめの暗い昭和歌謡は毎度のことなので割愛。
もう慣れたよね。
主人公の老人は経営の神様と尊敬されるが、結婚に失敗し、子供からも懐かれず皆散り散りになって、入所している老人介護施設には訪ねては来ない。
そんな中赤の他人ながら主人公を訪ねてくれる大学生の女の子がいた。
これがどこでどうやって知り合ったかが描かれていなかったので関係性が不明。
女の子は主人公の経営の才能を尊敬しているようなセリフがあったが、個人的に甲斐甲斐しく世話をするにいたった経緯が知りたい。
とにかく女の子は主人公の車椅子を押し見晴らしのよい丘に行き、主人公の孤独な生い立ちを聞きひどく同情する。
女の子は手を合わせ、主人公の願いを叶えてあげてほしいと神様にお願いする。
そこで主人公が「二十歳の頃にかえりたい」と願ったことでタイムリープ発動。
容姿端麗、健康で活発な大学生の頃に戻った主人公。
大学生活に部活と充実した毎日。
車椅子を押してくれていた女の子がサッカー部マネージャー、同級生として現れ親しくなる。
現実世界?ではミュージシャンになると家を飛び出した息子を軽蔑したが、色んな世界を見てみようと、芸能の世界に飛び込んでみようと思い芝居を始め頭角を現す主人公。
まぁ何をやっても上手くいく器用な人なんですな。
今作の驚くべきポイントは、エル・カンターレが出てこないこと。
そればかりか非現実的な存在が現れるシーンはほぼ無い。
夢の中で光から声が聞こえたところくらい。
今までの宗教観ゴリ押しの作品とは違うぞ!
ところでその声なのだが、若返って人生をやり直す為に守らなければならぬことを告げてきた。
それが「30歳まで結婚を申し込んでも、受けてもならぬ」
「無償の愛に生きよ」だった。
無償の愛は抽象的だからなんとなくわかるよ。
奥さんとの関係がうまくいかなかったことや、子供より仕事を優先してしまったことを悔いよということなのかな?と思える。
しかし30まで結婚するなというのはどこからきたルールなのかよく分からなかった。
30歳で結婚なんて今どき普通だし、厳しいルールでもないのに。
主人公はスマートフォンをもっていたし、時代は現代のままらしいので、お見合いもあるわけでもないだろう。
実に不思議なルールである。
まあとにかく主人公は俳優業に精を出しトップスターに躍り出る。
マネージャーだった彼女は二十歳の頃から主人公に恋心をもったまま29歳になる。
えー長い。
私だったら耐えられない。
主人公は彼女の両親とも仲が良く、ぜひ嫁に貰ってやってくれ、娘の気持ちに気づいているだろう?と畳み掛けられる。
余計なお世話である。
そもそも付き合っていないのに。
そんな折、共演女優が売名のために主人公とのスキャンダルを捏造しワイドショーの的になる。
マネージャーの彼女はそれにショックを受け飛び降り自殺をはかる。
屋上での押し問答のとき彼女が「私と結婚してくれないの?」とか「結婚したかった」みたいなことを何度も言っていたが、お前そもそも付き合ってもいないだろう?と思う。
主人公も彼女が好きなら「30歳までは仕事を頑張りたいから30歳をすぎたら結婚しよう」と言って付き合えばいいのに。
全ての基準を結婚で考えて白か黒かしかない謎の世界。
現代の恋愛の形は様々である。
必ずしも結婚という形式をとる必要は無い。
結婚しなければ「無償の愛」とは違うの?
結婚にこだわるほうが打算的ではないか?
時代錯誤な恋愛観に少し違和感があったものの、ついに主人公は結婚しよう!と口にする。
29歳のこと。
魔法は解け、主人公は老人に戻る。
えーーーー。
付き合えばよかったやん。
なんで結婚・・・(エンドレス)
元いた丘の上で主人公は車椅子に乗り、彼女は車椅子を押している。
主人公は彼女の手を取ろうとするがやめる。
そりゃそうだ。やめておこ。
ラストシーンは初代「高校教師」のラストシーンとほぼ同じ。
眠ったの?死んだの?というカクンッ・・・というやつ。
さて、まとめとしては、時代錯誤な恋愛観が目立つ。
時代背景を昭和初期とかにしておけば結婚を急かされるのにもそこまで違和感なかったかも。
そして宗教色がない!
今までの金ぴかな神様や祭壇、壮大なCGがない!
地縛霊も出てこないし赤鬼も出てこない!
とても静かで穏やかな映画でした。
まさか幸福の科学の映画とは誰も思わないんじゃないんかな?
なんだこの映画?ふーん。
みたいな感覚で見ることが出来てしまう。
私が見た中では初めてだ!
劇場が明るくなった。
私は至近距離の信者さんを気にせずポップコーンとコーラをたいらげ容器は空っぽだ。
一応声をかけた。
「これが最後の作品かもしれないと思うと感慨深いものがありますねぇ」
これは本心。
こんなに落ち着いたヒューマン映画が遺作とは、なかなか思わせるものがある。
バカバカしい壮大なSF心霊ものが遺作だったら笑えたのにな。
面白いかと言われたら肯定できないが、今までの幸福の科学の映画の中では間違いなく普通の映画であり、観られるものだったのは確か。
今後の組織の動向に、要注目である。