小学生ギャルとコスメの記憶

私がまだ女児と呼ばれて過言ではなかった頃、
世の中はコギャルブーム、アムラー全盛期であった。
この世界で広告代理店より強く流行が大好きなのは小学生女子であることは
プルタコスにも詳しい。
個人的には「ギャルか…楽しそうだな」位の認識であったが
友達に1人魂までちゃんとギャルの女の子がいた。
「学業の成績さえ良ければ、少々の校則違反をしても許される傾向がある」
という強い理念を持ち、学業に精を出し、休日に校区外に遊びに行く
ストロングスタイルの彼女となぜか仲良くなり、
何度か校区外の大都会「梅田」に行ったものである。

ちょうどその頃、爆発的に流行していたコスメは肌水と鼻パックであった。
どう考えても女児に鼻パックは必要ないが何度か使ってみたことがある。
毛穴のつまりと言われるものがニョキニョキとれるのは面白いもので
このパックの後に肌水をつけていたように思う。
おそらく母が「そういうのをした後は保湿をせなエライことなる」と教えてくれたのだろう。
肌水にも鼻パックにも何種類かフレーバーがあったように思う。
肌水のときめいたところは、なんだかドリンクのような見た目をしているところ、
そしてお小遣いで買えるところ。
ただ、この肌水の後、乳液も何もしていなかったのだから効果は何もなかったのではないかとも思う。
今でこそ保湿至上主義者だが、この当時は本当に「何も分かっていなかった」。

上記のギャルと行った校区外は梅田の他に
家らほど近い、なんでそこが校区外と言われ行ってはならないとされていたのか
さっぱりよくわからない立地のイズミヤという古い商業施設があった。
10歳だった私たちは自転車でたびたびこの校則違反をした。

イズミヤでは実に様々なものを買った。
うっすら色づく香り付きのリップクリーム、
まつ毛がキラキラになる透明のマスカラ、
流行ってた白い口紅のパチモン、
透明で保湿力はさっぱりなさそうな香りだけのハンドクリーム。

その中でとても印象深いのが「唇用パック」である。
ご存知だろうか?
ファンシーなジップロック様のパッケージに5枚ほど入った唇型の半透明のパックで
貼るとアイヌのおばあちゃんのようになる。
いちごやローズの香りがついていたように思う。
私は今も昔も唇が乾いて割れやすく、また湿疹もよく起こす三重苦なのだが、
このパックは肌にも合い、救世主かと思うほどよかった。
しかし、そのイズミヤの雑貨屋で1度買ったきりどこにも売らなくなってしまった。
唇三重苦の私は冬になるたび、「あのパックのほしいことよ」と嘆き、
唇は乾き続け、
目は唇パックを探し続けていた。

そして、再会の日は来る。

先日、時間潰しで行った新大久保に、それはあった。
ずいぶん大人びたパッケージに入った唇パックがほぼ全部の化粧品を取り扱う店舗に並んでいたのだ。
長い旅であった。
25年、探していた。
愛おしの唇パックは湿潤な日本ではなく、冬は乾燥著しい隣国で発展を遂げていた。
嬉々としてローズの香りと桜の香りをひとパックづつ買い、その夜に試した。
ローズの香りは本当にあの時のまま、面白いほどアイヌのおばあちゃんになる。
黒も売っていたので今度買って、友達とみんなで試したい。
アイヌのおばあちゃん大集合になりたい。
懐かしさに咽び泣きそうになりながら、パックを外すと、唇はふっくりツヤツヤであった。
好きだぞ、また買ってこよう。

女児の頃、試し倒したものといえば、リップクリームであろうと思う。
上記の唇パックと涙の別れののち、私はとにかく唇が割れないように本当に様々のリップクリームを試した。
試すリップ試すリップ、皮向け、腫れなどと戦い続けた。
乾燥肌の上、敏感肌なのだ。
当時はアムラー全盛期、リップグロスというものも登場する。
正直、ぼんやりした小学生にリップクリームとリップグロスの差などわからない。
確かギャル子はヴァセリンから出ていたものすごいバニラの香りのコンテナにはったリップクリームを愛用していた。
私も一瞬使っていたような気がする。
「キャンパス ほそみ」や「ウォーターインリップ」のチューブタイプ、
メンソレータムのスタンダード、
だいぶん後になるがマジョリカマジョルカのリップクリームも全種類試したと思う。
今調べたところ、ウォーターインリップはリップグロスだったらしい。
使用感などは全然覚えていない。
リップクリームと日焼け止めはトライアンドエラーをひたすら繰り返してきたように思う。

兎にも角にも、薬局で運命の出会いをする以前のコスメの思い出は以上になる。

いいなと思ったら応援しよう!