[書評] 巨大投資銀行~金融業界で獅子乱闘する男たち~
最近読んだ本をnoteに書きませんか?
とnoteが煽ってくるので、今年のクリスマスはいない彼女との貴重な時間をないがしろにしてある本を読み上げた←
一応書評とはあるが、自分のために書いているのでネタバレ注意です。あと包括的にまとめているわけではない点も了承ください。
主人公は桂木英一。あと竜神宗一。で、脇役かもしれんが、たまに藤崎清治。桂木はいわゆるIBD業務でM&Aやカバレッジ業務を生業としていて、竜神がトレーダー、そして藤崎がセールスかな?この小説は、3人が外資系投資銀行で突っ走っていくという物語である
フィクションのようなノンフィクションのような。調べてみると竜神宗一はモデルとなる人物がいるっぽい。実際この小説は史実と共にすすんでいく物語で、1980年~2000年くらいまでの長いスパンで物語が進行していく。まるで時代小説を読んでいるような重厚な読み応えだった。
以下感想!
日米証券会社の違い
1980年と言えば日本はバブル。ジャパンマネーがじゃんじゃん世界各国に流れ行く中、米系投資銀行はこの流れに乗り遅れまいと、NYC本店等にジャパンデスクたるものを設置する。東都銀行から転職してこのジャパンデスクでバイスプレジデントとして働き始める桂木英一は物語を通して内資・外資の雰囲気や使う技術、知識、ノウハウの差異の大きさに驚き、嘆く。直接金融が主流である日本経済で、そのニーズにこたえるべく奮闘する日系金融機関では到底得ることのできないM&Aの手法。もっと細かいところだと情報システムのような点で、外資系はいち早くEメールを取り入れていて、一方同時点で、日系は紙・電話ベースのコミュニケーション。雰囲気の違いという点では、日系金融機関の腐りきった人事や人事評価、具体的には年功序列とかたすき掛け人事とか。一方で外資系だと売り上げ至上主義で、ノルマが達成できないのであればすぐにクビをきられる、経済の調子が悪いとすぐリストラ。華やかで報酬もいっぱいもらえる外資金融だが、厳しい面もあるのだなと。
トレーディング部門では、外資系金融の裁量取引のノウハウに日系金融や日本政府はたじろぐ光景。大蔵省がソロモンのトレーディング部門の調査をしても何が起こっているか検討もついていないところは爽快そのものであった。
インベストメントバンキングという総合格闘技
いや正直に言うわ、トレーディングとか債券のセールスあんまわかんねえええええええ!!!じっくり読んだら頭のブドウ糖が彼方へ高速瞬間移動してしまうのでさらーっと読んでました。
いっぽうで桂木英一担当部署IBD!
これはわりと事前知識もありわかりやすかった(つもり)。ただ、実際にどういった感じ(雰囲気とか)でディールが進んでいくのかとか、実務書だけでは絶対にわからないディテールがこの小説にはあって、M&AをはじめとしたIBD業務が総合格闘技といわれる所以を理解できた気がする。
まずオリジネーションの部分!すんごい接待よ。金を湯水のようにつかって、接待のゴルフに通い詰めて案件を発掘していく。ヒューマンスキルというものか、相手に気に入ってもらわないとそもそも始まりすらしない。
そして、デカい案件になればなるほど政治とか国際問題に左右される案件たち。船のファイナンスのところは、ある勢力の指導者が処刑されることで投資家が弱気になり、株価が動き、ファイナンス案がおしゃんになる(あってるか?)。神のみぞしる明日のニュース、明後日のニュース。これらに敏感に反応するディールというものは、まさに生き物なのだろう。
また敵は身内にもいる。クライアントからもらったフィーを部署間でどのようにスプリットするか等。社内政治もすごく重要なんですね。
会社の売買、株式の発行といえど結局は人がドライブしていく投資銀行業務。様々な利害関係が存在する中で、落としどころを見つけ、そして金を抜く。日本経済を、日系企業を陰で動かす男たちの、案件を成就させるために文字通り人生をかけるその姿勢。眩しすぎるんだよな。
主人公桂木英一の生き様、信念
僕の中ではこれが一番感じたことかな。
かつては東都銀行という日系の銀行で働いていた桂木英一だが、やる気のない行員、そしてなにより正当に評価されない人事制度ー成果を上げるためにリスクを犯すよりも、ミスをせずに自らの保身に走ることが出世の近道である減点主義に辟易としてモルガンスペンサーに転職する桂木。50代になり日本産業銀行で常務として働いたり、モルガンスペンサーのヴァイスチェアマンという有り余るほどのお金と名誉を手に入れることができる地位を捨てて、りずむ銀行のCEOとして当行の再建に貢献する決意。これらの合理的とは言えない桂木の意思決定の裏には彼自身の、破綻した(バブル崩壊後)日本経済を救済したい、もっと言えば一度はじぶんを傷つけた日系銀行に変革を起こしたいという熱情があった。”社会に対して何をどれだけ還元できるかで、自分の歩んできた人生の価値が決まる”。りずむ銀行のCEO職に就くことで彼の今まで成してきたことすべてがつながり形となった。
彼の生き様、りずむ銀行に行くという英断、その後ろにある信念は僕の金科玉条にだ。僕も彼と同じくらいの年の瀬になったとき、日本という故郷に何かしらの形で貢献できるような、そして僕が今まで歩んできた人生がすべて肯定されるような人生の選択を最後の最後にできれば、この上なく有意義な人生だったと、死ぬときに思えるかな。
いそぎで書きました。乱文ごめんなさい。