検証結果を安易な思い込みで済まさずに、その場で踏ん張ってちゃんと向き合う
しかし心理学的実験となると、どうもこの良心的なあり方からずれてきているようです。
例えばネズミを迷路に入れて走らせるさまざまな実験が行なわれましたが、はっきりした結果はほとんど出ていませんでした。ところが一九三七年にヤングという人が、ちょっと面白い実験をやったのです。彼は長い通路の片側にネズミどもの入ってくるドアをたくさん設け、その反対側には食物の入っているドアをずらりと設けて、どのドアから入れても入ってきたドアから数えて三つめのドアに必ず行くよう、ネズミを訓練することができないものかと考えたのです。ところがネズミともは必ず前に食物のおいてあったドアへ、迷わず直行するのです。
通路はまったくみごとに同一に作られているというのに、いったいどうしてネズミどもは前回と同じドアがわかるのか、というのが問題なのですが、このドアは他のドアとどこか違うところがあるに違いない。そこでヤングはドアの表面の質や感触に違うところが全然ないよう、細心の注意を払ってペンキを塗ってみました。それでもなもネズミにはちゃんと違いがわかるのです。
ヤングはこれは前においた食物のにおいがするからに違いないと思い、実験一回ごとに薬品を使ってにおいを変えるようにしてみました。それでもなおかつネズミをだますことはできないのです。ここでヤングは常識のある者なら誰にでもわかるように、ネズミどももまた実験室の中の物の配置や光の位置でわかるのではないかと気がつき、すぐさま通路におおいをしたのですが、やっぱりネズミは前に食物のあったドアアがちゃんとわかる。
さんざんいろいろやってみたあげく、とうとうネズミは床を走るとき、その響きの具合でドアの場所を覚えているのだということを発見しました。床が響かないようにするのには、通路の部分を砂の中に置くしか方法はありません。このようにしてヤングは、ネズミが感づきそうな可能性を一つ一つ取り除いていった結果、はじめてネズミをだますことができたのです。そしてネズミどもが第三のドアを記憶せざるを得ないように訓練する条件を作ったわけです。この条件を少しでもゆるめると、ネズミはちゃんとドアの違いがわかってしまうのです。
さてこの実験を純粋な科学的立場から見るなら、これこそ第一級の実験です。なぜならドアの違いがわかるのは、こういう理由からだろうという憶測によらず、実際にこれを示すことができたからで、これでこそ迷路にネズミを走らせる実験に意味が出てくるのです。
そしてこの実験結果は、この種の実験において、細心の注意を払ってすべてをコントロールするためには、どのような条件を作らなくてはならないかを、はっきりと示しているのです。
そしてちゃんと改善する。
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